7月31日、日本赤十字社名誉総裁の皇后陛下、名誉副総裁の秋篠宮皇嗣妃殿下、常陸宮妃華子殿下、寬仁親王妃信子殿下、高円宮妃久子殿下ご臨席の下、第50回フローレンス・ナイチンゲール記章の授与式が、東京・港区の東京プリンスホテルにて行われました。
フローレンス・ナイチンゲール記章とは、世界中の看護師などの中から顕著な功績を果たした方に贈られるもの。近代看護を確立したフローレンス・ナイチンゲール氏の生誕100周年を記念して、1920年に創設された同記章は、2年に一度、スイスにある赤十字国際委員会の選考により、紛争や災害時の看護活動、公衆衛生や看護教育などに貢献をした方の中から受章者を決定します。
記念すべき50回目となる今回は、世界17カ国、35人が受章し、日本からも春山典子さん、紙屋克子さん、河野順子さんの3人が選出されました。授与式では、恒例となった赤十字の看護学生によるキャンドルサービスも行われ、暗くなった会場の中を、灯をともしたろうそくを手にした看護学生が回ると、場内は厳粛な雰囲気に包まれました。
今回の受章者・春山さんは、前橋赤十字高等看護学院を卒業後、前橋赤十字病院勤務を経て日赤群馬県支部へ。1985年に群馬県で発生し、520人もの命が犠牲になった日航機墜落事故において、生存者2人の救護に加え、看護の責任者として延べ1008人の看護師・保健師の先頭に立ち、1カ月半にも及ぶ遺体の検案活動を指揮・統率しました。中でも、墜落によってひどく損壊した遺体を遺族が対面する前にできるだけ修復する活動は、後に「整体」と呼ばれ、現在も日赤の救護活動として受け継がれています。
紙屋さんは、植物状態の患者の意識、ならびに身体機能の改善・回復を目的に、患者の身体・認知面に応じて目標を設定し、評価しながら支援する看護方法を確立した看護実践の第一人者。五感で患者の反応をとらえ、“その人として生き直す瞬間”の実現を目指す看護を広めるため、現在は、日本ヒューマン・ナーシング研究学会を立ち上げ、活動を続けています。
河野さんは、春山さんと同期で前橋赤十字高等看護学院を卒業。現在の那須赤十字病院に入職し、患者が退院した後も住み慣れた地域で必要な医療を受けられ、最期まで尊厳を持って生活できるように、現在の地域包括ケアにつながる「退院計画」のための、多職種連携、在宅医療推進に向けた地域の受け入れ体制の構築に取り組みました。今もなお、全国各地での講演などを通じて、同体制の普及と後進の育成に努めています。
受章者の3人を代表して答辞を述べた春山さんは、「戦後史に残る墜落事故から40年。この章は、私1人ではなく、共に頑張ってきた仲間の代表としていただいたと思っています。皇后陛下から『一生懸命、よく頑張りましたね』という言葉をいただいたときは、今まで抱えてきたものが報われた思いでした。この先も、あの事故が風化されることのないよう、後世に伝えていきたいです」と感想を語りました。