「KAG」&「 ひなんじょ たいけん」で防災・減災を考える 赤十字防災セミナーに新カリキュラム登場!

災害時に身を守るための家具の安全対策を学ぶ「家具安全対策ゲーム(KAG)」と、避難所を仮想体験する「ひなんじょ たいけん」。今年度からスタートした二つの防災シミュレーションカリキュラムをご紹介します。

「KAG」とは?


日本人の平均在宅時間は1日約16時間(※1)、また平均睡眠時間は、7時間12分(※2)というデータがあります。家で過ごす多くの時間が就寝時間と考えると、その一番無防備な状態で大きな災害が起こったら…と、想像したことはあるでしょうか? 実際、朝方5時46分に発生した阪神淡路大震災では、家具の下敷きやガラスの落下によるけがが全体の約7割以上を占めました。就寝中の家具による事故を防ぎ、家の中にけがの原因が潜んでいるという危機感を高めて、日常から備えるために、今年度から日赤の防災教育事業の一環として登場したのが「KAG」。家具の転倒や落下、移動による地震被害を最小限に食い止めるためのもので、ゲームは実際に自宅の平面図を描き起こすことからスタートします。家具の配置で危険な箇所を把握して、地震が発生したときに、自分はもちろん、家族の命を守るためにはどういった対策が必要か、ゲーム形式で学んでいくプログラムです。


※1 NHK放送文化研究所「国民生活時間調査(2015)」より
※2 NHK放送文化研究所「国民生活時間調査(2020)」より

赤十字防災セミナー
新カリキュラム①

「KAG」体験リポート

 日赤山口県支部の赤十字防災セミナーの一環で実施された「KAG」。冒頭、日赤職員によって、家の中の危険な場所や安全なスペースを確保するための対策法についてレクチャーがありました。その後、用意されたワークシートに自宅の家具の配置を描く時間が設けられ、危険なポイントを自ら考える機会に。そして、他の参加者とディスカッションすることで、さらに安全対策の理解を深めました。

「その時」、家の中はモンスターだらけに!? 日赤オリジナルの啓発動画
「おうちの中のモンスター」

私も「KAG」に参加しました!

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有識者メッセージ

「南海トラフ巨大地震がもたらす
 被害とその備え」

今回、日赤山口県支部の防災・減災セミナーは2部構成で開催されました。
第1部では、山口大学名誉教授 三浦房紀 氏が講師となり「南海トラフ巨大地震がもたらす被害とその備え」を、第2部で、「家具安全対策ゲーム(KAG)」を行いました。

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地震工学の専門家で、個人としてもYouTubeなどで地震被害の解説や災害への備えを呼び掛けている三浦教授にお話を伺いました。

★230726yamaguchi_028.jpg「さまざまなデータから、私は”南海トラフ巨大地震は間もなく起こる“と確信しています。過去の地震記録から、西日本は地震が多く起こる『活動期』とあまり起こらない『静穏期』が100年~150年の周期で繰り返され、阪神・淡路大震災以降、西日本は『活動期』に入ったと考えられます。私の住んでいる山口県は南海トラフ巨大地震の震源域から少し離れた地域になりますが、それでも県東部の瀬戸内海側の地域は震度5強~6弱程度が予想され、地震発生から数時間後には津波も到達します。山口県は “予想されている震源域から離れているから心配はない”という考えは危ない、と警鐘を鳴らしたい。南海トラフの巨大地震では強い揺れが数分間続きます。地震時どこにいてもケガをしないようにしておくことが大切です。ケガさえしなければ、何とかなります。特に寝室にはできるだけ落ちたり、倒れたり、飛んでくる物を置かないようにしましょう。

 防災展などで、地震を体験する起震車を見たり、実際に乗ったりした人もいらっしゃると思います。震度6程度は立っていられないほどの激しい揺れですが、起震車の揺れと本当の地震の揺れは質が違うんです。起震車の地震の変位(動く範囲)は数センチメートルですが、実際の地震のそれは数十センチメートル、強い地震では1メートルを超えることもあります。実際の震度6では、大きな家具も倒れたり、飛んできたりして襲い掛かってきます。背の高い家具は、倒れないように天井との間に突っ張り棒を入れたり、物を詰め込んで、倒れることを防ぐことが大切です。そして揺れがおさまったら、急いで安全な場所に逃げましょう。日頃から、どこに、どのようなルートで逃げるか調べておきましょう。地域の防災活動では、『災害図上訓練(DIG)』を取り入れることもお勧めします。普段使っている道でも、災害時に通れなくなったり、危険になるルートもあり、『災害図上訓練(DIG)』によって、それをある程度予想したり把握したりすることができます。

 南海トラフの巨大地震が起こると緊急地震速報は必ず出されると思います。緊急地震速報は地震を感知して発表されるまでは5~10秒かかります。大きな揺れをもたらす『S波』の伝播速度を毎秒4km程度とすると、震源地からどれくらいで自分の住む地域に大きな揺れが来るか予測できます。例えば震源地から160kmの地域では、160㎞÷4㎞/秒=40秒。この40秒から5~10秒を引くと30~35秒となりますので、この約30秒を無事にやり過ごせるように、日頃から備えておきましょう。(注:震源が近いと緊急地震速報の前に強い揺れが来るところもあります。)

 まずは自分や家族がケガをすることなく、そして無事だった人が近隣の人々や地域の人々を助ける、そのためにどんな備えをしておかなければならないか。かならず起こる巨大地震の被害を最小限にとどめるために、全ての人に考えておいていただきたいと思います」

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赤十字防災セミナー
新カリキュラム②

「ひなんじょ たいけん」とは?

 いつ起こるかわからない大規模災害を想定して、「避難者の目線」で避難所における「自助」と「共助」の力の向上を目的としたカリキュラム。今秋、日赤オリジナルのアレンジでリリースされました。

RCN1000_06.png 用意されるのは、避難所に見立てた平面図と、世帯ごとに避難者の年齢や健康状態、被災状況が書かれたカード。5~7人のグループになって、避難者に見立てたカードを引きながら考えていきます。「病気の家族がいる場合」「避難所のトイレが使えなくなった」など、さまざまな出来事、課題にどう対応していくか、意見交換しながら気づきを深めることで「避難者」を疑似体験できるカリキュラムです。

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