離れ離れになるウクライナの家族...命と心を支える、赤十字の活動 ウクライナの周辺国に逃れた難民と国内避難民は合わせて約1500万人に上ると言われています。ウクライナ国内に派遣されている日赤職員が現地の避難民支援をリポートします。

子どもの日にウクライナ赤十字社が実施したお絵かきイベント

国内避難民の
心身の健康を守るために…
仮設診療所も、ついにオープン!

 紛争が激化して4カ月、国際赤十字のサポートを受けてウクライナ赤十字社は438万人以上の人々を支援してきました(6月2日時点)。ウクライナでは、先の見えない情勢の中、さまざまな事情で家族と離れての避難を余儀なくされる人々がたくさんいます。

 ウクライナ西部の国境沿いの町・ウジュホロドには日赤職員の矢田結さんが、ウクライナ危機対応の連絡調整員として派遣されています。

「6月1日はウクライナの『子どもの日』。赤十字ボランティアも、食料など救援物資を配布する傍らで子どもたち向けの救急車乗車体験やお絵かきイベントを実施しました。ここに避難している女性や子どもたちが、毎年お祝いしているイベントを避難先でも楽しめたことは前向きな一歩につながったのではないかと、皆さんの笑顔を見て感じました。赤十字は救援物資の配布場所の近くに子どもが自由に遊べるスペースを常設しているので、引き続き母子の憩いの場になるといいです」と矢田さん。

 そして6月15日、フィンランド赤十字社と日赤のスタッフ(大阪赤十字病院の薬剤師・仲里泰太郎さん)が設営を進めてきた仮設診療所が、ついにオープンしました。多くの国内避難民の保健医療ニーズに対応していくためです。

「ウクライナ赤十字社は、このような緊急時の仮設診療所を初めて運営します。州政府との協定の締結や医療者の雇用などを着実に進めて、ようやく実現しました。保健医療分野に強みを持つ日赤として、今後もどのような支援が提供できるか考えていきたいと思います」(矢田さん)

国内避難民でもあるディーマさん(左)と矢田さん

赤十字の仲間となった避難民、
平和への願い

 ウジュホロドの赤十字ボランティアの中には、激戦地からの避難民もいます。首都・キーウから避難し、診療所設営の技術ボランティアとして働くディーマさん(36歳・男性)は妻や高齢の両親をポーランドに避難させ、知人を頼って1人でウジュホロドに来ました。

「避難して来たこの地で、たまたま赤十字を見かけました。避難民となり困っている人々のために力になりたい、赤十字の仲間になればそれができるのではないかと考えてボランティアになりました。妻もポーランドでウクライナのためのチャリティー活動をしています。その姿を励みに自分もこの地でしばらく頑張ろうと思います」(ディーマさん)

 キーウでは銀行や貿易関係で働いていたディーマさんにとって建設や整地などは慣れない仕事ですが、「友だちも多いこの町で、今自分ができることをしたい」と語ります。

 ウクライナでも比較的安全とされるウジュホロドですが、毎日のように空襲警報が鳴るなど紛争下であることに変わりはありません。職員やボランティアの安全などにも十分に配慮しながら、日赤は現地で必要とされる支援を実施していきます。

ウクライナ人道危機救援金

皆さまからお寄せいただいた「ウクライナ人道危機救援金」などから国際赤十字に対して以下のとおり緊急資金援助を実施しています。
合計支援金額47.2億円 ※2022年6月30日時点
(内訳:IFRC 23.6億円/ICRC 23.6億円)

仮設診療所の受付前でフィンランドとウクライナの赤十字社スタッフと(右端・矢田さん、右から2人目・仲里さん)