利用者が安心して暮らせる環境をつくる社会福祉施設の職員の姿
日本赤十字社(以下、日赤)が運営する全国28の社会福祉施設では、利用者の方々が安心して元気に生活を送れるよう、保育や介護、看護などのさまざまな社会福祉サービスを提供しています。
利用者のニーズに応え、より過ごしやすい環境をつくるために、各施設では職員の研修や利用者からの意見を大切にしています。
■子どもが健やかに成長できる環境をつくる「赤十字子供の家」
【子どもの体と心を支える食育研修】
さまざまな事情により家庭で生活ができない子どもたちを受け入れる児童養護施設である赤十字子供の家(以下、子供の家)では、より家庭的で柔軟な支援を目指し、居室ごとに子どもたちの希望を取り入れながら献立を決める「自由献立」を導入しています。自由献立には、子どもの主体性が育ち、食事への意欲が高まる効果があります。一方で、希望が偏ることで栄養バランスが乱れたり、苦手な食材を食べる機会が減ってしまうという新たな課題も明らかになりました。そこで、子どもの成長を支える食の大切さについて、職員の共通理解を深める食育研修を実施しました。
研修では、「どうしたら偏食や好き嫌いがなくなるか」をテーマにグループワークを行いました。栄養士から、過去のトラウマが食材への抵抗につながることもあると説明があり、職員からは「無理に食べさせるのではなく、代替食材で栄養を補いながら安心できる食事場面を大切にする」「時間をかけて焦らず見守る」といった、子どもの気持ちに寄り添った支援の意見が多く出されました。
また、苦手な食材を克服しようとすることで、困難を乗り越える力が養われることや、食べられるようになった成功体験から自己肯定感が育まれることなど、職員のかかわり方によって食事が前向きな経験を積むきっかけになることも学びました。
受講した職員からは「食育は栄養管理にとどまらず、子どもの心の成長を支える大切な支援であり、子どものペースに応じた食事支援をしたい」などの感想が聞かれ、子どもにとって安心できる食環境を整える重要性について、共通理解を深めることができました。
園内研修で職員一人一人が日々の支援を振り返り、施設の課題を共有することで、子供の家では子どもの自立と健やかな成長を支えるより良い環境づくりを目指しています。
子どもに寄り添った食支援について話し合う職員の様子。職員の大切な役割を再認識できる良い機会になりました。
【みんなで暮らしをつくる子ども会】
職員のスキル向上だけでなく、子どもたちが家庭のように安心して暮らすためには、子どもが自由に発言でき、その声に大人が誠実に向き合う環境も欠かせません。
子供の家では、子どもたちが自分の権利や集団生活でのルールを意識して生活することが必要であるという職員の意識から、施設での暮らしについて意見を聞く「子ども会」を年に3回、実施しています。
子ども会では、「サッカーシューズのお金を出してほしい」「4年生だけで旅行に行きたい」「夕方もボール遊びがしたい」など、子どもたちから挙がる日々の暮らしに関わる思い思いの意見に、園長が向き合い、みんなが安心して生活できる環境づくりの視点なども盛り込みながら子どもたちに丁寧に回答します。
中でも、「夏休みにみんなでかき氷を食べたい」という意見については、園内で映画鑑賞をしながらかき氷を食べる企画を実現しました。みんなで楽しい時間を過ごし、「夏休みのいい思い出になった」と輝く笑顔で喜ぶ子どもたちの姿を見ることができました。
子ども会は、子どもと職員が一緒に子供の家での生活を作り上げていっていることを意識する大事なきっかけとなっています。
子どもたちが自分の思いを表現することで、自立する力を育んでいけるように、子供の家では今後も子どもたちの権利を守り尊重し、共に暮らしをつくるという姿勢を大切にしていきます。

子どもたちの意見がどのように検討され、結論がでたのか、互いに納得できるように話し合います。
■学びと工夫で利用者の安全を支える「特別養護老人ホーム豊寿園」
福岡県にある特別養護老人ホーム豊寿園(以下、豊寿園)では、利用者の急変にいつでも誰でも迅速かつ適切に対応できるよう、職種にかかわらず、全職員を対象とした赤十字救急法講習を毎年実施しています。
講習は救急法指導員の資格を持つ豊寿園の職員が指導者になり、心肺蘇生やAEDの使用方法のほか、高齢者に多い誤えん・窒息に対する気道異物除去などを重点的に行うだけでなく、ベッド上で急変したときの対応など、施設での傷病者の発生を想定した練習を取り入れています。受講した職員からは、「実際の場面で手が出せるか不安だったが、繰り返し練習することでイメージできるようになり、勇気が持てた」「窒息の対応は現場でも起こり得るので、学んだことを生かしたい」などの声があり、初めての職員にも経験者にも、緊急時への対応に自信をつける機会となっています。
令和6年には施設内で救命処置を行う事案が発生しました。このときには、ベッド上で心肺蘇生を行うとマットレスが衝撃を吸収して胸骨圧迫の力が伝わりにくいという課題が明らかになりました。この課題を改善するため、背面に敷ける「手作り蘇生板」を製作し、各所に設置しているAEDの至近に配備したことで、現在はベッド上でも胸骨圧迫を行うことができるようになりました。
このように、救急法の技術習得だけでなく、日頃から安全に目を向け、現場で気づいた課題を改善することで利用者や家族が一層安心して過ごせる施設を目指しています。
また、豊寿園では施設職員対象の講習だけでなく、地域住民を対象にした救急法講習も定期的に実施しており、地域の安全・安心の向上にも貢献しています。

気道異物除去の方法の一つである背部叩打法(はいぶこうだほう)を練習。体をしっかり支えながら安全に対応するポイントを確認しています。

施設内の事案から生まれた手作りの蘇生板。利用者のことを考え、営繕担当職員が丁寧に製作しました。
■その人らしさを大事にする赤十字の施設を目指して
日赤の社会福祉施設では、「人を尊重し思いやる」という赤十字の理念を、日々の支援の中で大切にしています。
利用者の声に耳を傾け、寄り添い、安全管理に日々努める職員の姿勢は、単にサービスを提供するだけでなく、利用者一人一人を思いやり、その人らしく暮らせる環境づくりにつながっています。
今後も各社会福祉施設では職員が学びを重ねながら、利用者が安心して過ごせる施設運営を続けていきます。
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