認知症の方を温かく見守る地域を!~日赤高齢者福祉施設と地域の取り組み

日本赤十字社(以下、日赤)は健康生活支援講習や認知症サポーター養成講座(※)などを通じて、支援を必要とする高齢者が健やかに生活するために必要な知識をお伝えしています。

認知症の高齢者がなじみのある地域で暮らし続けるためには、知識の普及以外にも、住民が高齢者を温かく見守って支える環境を皆でつくることが大切です。

このような地域を目指す取り組みの一環として、日赤が運営する特別養護老人ホーム豊寿園(福岡県北九州市)は2月20日、地元の松ヶ江北校区自治会とともに、「認知症の方が行方不明になった」という想定の下、地域全体で行方不明者を捜索する実地体験プログラムを開催しました。

  • ※認知症について正しく理解し、認知症の方やその家族を温かく見守り、支援できる認知症サポーターを育む研修。この研修は、全国の自治体や企業・団体などで養成された認知症キャラバン・メイトが講師を担当します。豊寿園には現在、4人のキャラバン・メイト(職員)が在籍しています

多くの地域関係者が、協力して捜索活動に関わりました!

地図を見ながら全員で捜索ルートを確認しました

捜索活動の訓練には、自治会の皆さまや子どもたちをはじめとする、北九州市認知症対策室や門司区社会福祉協議会、門司警察署などの関係機関、近隣の社会福祉施設職員ら、総勢80人が参加しました。

捜索活動は「地域で生活する認知症の方と豊寿園で生活する認知症の方が行方不明になった」という想定で実施。

まず、自治会と関係機関の方による混成班を六個つくりました。それぞれの班はあらかじめ割り当てられたエリアの地図を見ながら、捜索ルートを確認。実際に地域に出向き、行方不明者を探しにいきました。

地域の皆さまや子どもたちが優しく道案内

各班が出発してから30分ほどで、無事に二人の行方不明者を見つけることができました。

また、発見した方がたは、不安な思いでいっぱいの行方不明者に対して、その気持ちに配慮した声がけを意識。

班の本部がある市民センターに連れて行く道中も優しく声がけをしながら、行方不明者の不安な思いを受け止めました。

さらに、地域の大人だけでなく子どもたちも、行方不明者の不安な思いを受け止めて、ともに優しく帰路を道案内してくれました。

行方不明になった方の気持ちに配慮した優しい声かけ

地域の巡回を担当した門司警察署生活安全課の浅田防犯係長が捜索終了後、門司区内での高齢者の行方不明者に関する通報件数の実態や、行政・地域との連携強化の取り組みの重要性について講演。

また、捜索活動に参加した地域の皆さまからは、「地域内の幅広い年齢層が一つになることができました」「地域内を実際に歩くことで、知らなかった場所や危険な箇所を意識することができました」などの意見が上がりました。

捜索活動の成功は、日ごろの地域の皆さまとの交流の賜物

行方不明者に扮した豊寿園職員も皆さまの温かな接し方に感動しました

今回の捜索活動の成功は、豊寿園と松ヶ江北校区自治会が「認知症の方やその家族が、安心して生活できる地域をつくりたい」という思いを共有し、訓練当日までに行ってきたさまざまな交流によるものです。

また、捜索活動の事前研修で、認知症・草の根ネットワーク(北九州市で活動する団体)から、各自治体のさまざまな取り組みについて、自治会をはじめとする地域の多くの方がたと聴講できたことも、今回の成功につながったと考えられます。

今回の訓練のように日赤は、地域の皆さまとともに認知症の方を優しく温かく見守れる地域、誰もが安心して生活できる地域の実現を目指して、これからもさまざまな取り組みを行っていきます。

同園の日々の様子や地域福祉活動などは随時、以下に掲載していますので、ぜひご覧ください。