赤十字が災害に強い村づくりを支援、その3つの秘訣とは?

赤十字って災害がない時はどんなことをしているか、ご存知でしょうか?台風や地震など災害が起きたときに被災者を助けに行く緊急救援活動のイメージが強いかもしれません。しかし、それは私たちの活動のひとつに過ぎません。赤十字は災害が起きる前から、3年~5年という年月をかけて災害や病気に強い村づくり(レジリエンス強化)を支援しています。

そこで、本号では、赤十字がこれまでの支援活動から培ったノウハウの中から、災害などに強い村づくりの秘訣を3つご紹介します。

秘訣1 誰もが声をあげられる場づくり!

村で話し合っている様子

地域に埋もれた声を掘り起こし、村で解決すべき問題を明らかにする(ルワンダ)©RRCS

赤十字の村づくり支援の目的は、個人や地域が災害や病気などの脅威に対応する力を強くすること、そして誰もが助け合って健康で安全な暮らしを実現していくことを支えることです。

一方で、特に、経済開発の恩恵から取り残された地域や、人々の利害が絡み合う地域では、特に弱い立場に置かれる人々の存在が忘れられ、地域の助け合いについて話し合ったり、考えたりする余裕すらない場合もあります。

そのため、日赤の村づくり支援では、まず外部からその地域の取り組みに参加する私たち自身や、地域の人々が話し合いの場をつくり、住民が抱えている困りごとや不安、苦しみについてそれらをどうしていきたいかという考えや思いなどを理解し合うことから始めます。実際の暮らしの中では、困りごとや不安の多くは、人々の心の中だけに留まり、誰にも相談できず、相談しても相手にされなかったり、自ら言い出せず周囲の人から気づかれないことすら多いのです。そこで、この集まりには地域の意思決定を担う住民リーダーや行政の職員などにも参加してもらうことが大切です。

秘訣2 赤十字ボランティアが話し合いの調整役!

赤十字ボランティアが報告している様子

調査結果を村に報告する赤十字ボランティア(インドネシア)©PMI

赤十字は、人々の埋もれた声から地域の課題を見つけ出すためのノウハウを積み上げてきました。私たちはこれを脆弱性と能力調査(VCA)と呼び、村づくり支援の初期段階で用いています。これは、地域の人々が中心となって、村で起きた過去の災害記録から危険な場所を特定したり、伝統行事などの中で防災の大切さを伝える時間があるかなど、村の中の強みや弱みをひとつひとつ明らかにしていく調査です。

そして、この技法を支援先の村と同じ地域で生まれ育った赤十字ボランティアやスタッフに身に付けてもらいます。誰よりも地域のことを理解している赤十字ボランティアだからこそ、地域から信頼され、調査の協力や話し合いを進めていくことができると私達たちは考えています。

場づくりによって育まれた村の共通理解を土台に、次は、地域で抱える問題や解決すべき問題の優先順位をつけます。そして課題を村づくりの計画に落とし込む作業を行います。ここでは、村の利害関係が不一致になることや、話し合いが纏まらないことも多いため、赤十字ボランティアやスタッフが中心となって皆が理解し合い、納得できる計画を作るまで寄り添って支援します。また、村の意思決定を担う人物らと調整を重ね、計画を最終化していくこととなります。

秘訣3 行政や町内会との橋渡しが災害に強い村づくり継続の鍵!

苗を前に話している様子

活動について説明する赤十字ボランティアのペニーさん(中央)とセルマ県知事(左)(インドネシア)©PMI

時に、村の中で話し合われた問題の解決方法が赤十字社の支援の範囲を超えることもあります。例えば、避難所までの道路舗装工事や病院建設などです。その場合は、赤十字が支援する村づくり活動と、地方行政の防災予算や政策の中で行う取り組みを切り分け、行政や町内会への働きかけなどの調整を赤十字ボランティアや支部職員が担います。

こうして纏まった村づくりの計画が、作って終わりとなってはいけません。ここからは、住民一人ひとりが中心となって村づくりの計画を実行に移します。その活動のサポートを赤十字ボランティアが担います。具体的には、村の中で行う避難訓練の準備や防災集会を催す習慣づくり、各家庭への見回りスケジュールの調整、村の意思決定ができる人への働きかけなど地域住民との関わりや地域を強くする支援などです。村づくりの活動が持続するためには、村の予算により今後も継続される決まりごとを作ることも大切です。赤十字はこの決まりごとづくりを舞台裏から支えます。

日赤の支援が終わっても災害に強い村づくりは終わらない

村の人に囲まれて話をする青木主事

それぞれの地域で活動を支える赤十字ボランティアが村づくり支援成功の最大の要素と語る日赤の青木主事©PMI

日赤からの支援は、いつか終わりを迎えます。しかし、現地での村づくり活動に終わりはありません。活動に携わってきた日赤の青木主事は、「3つの秘訣の共通点は、舞台裏で活動を支える赤十字ボランティアの存在です。日赤の支援を終えて現地を去っても、現地には必ずその国の赤十字社と赤十字ボランティアが残り、それぞれの地域で村づくりを支えていくことになります。これこそが赤十字による村づくり支援が地域に根付く大切な要素です。」と言います。

赤十字ボランティアは、世界中で、村における新たな計画の実施災害時の緊急対応を今日も支えています。村づくりの秘訣、いかがでしたでしょうか?赤十字活動へのご支援に心より御礼申し上げます。

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