【速報8】イラン及び周辺国人道危機:不透明な未来と向き合い支え合う人びと

 「鮮やかな色の風船が群衆の上に浮かび、それを一人の少女がしっかりと握りしめていた。まるで世界で最も大切な宝物であるかのように。」

画像 避難生活を送る仮設テントの近くの海辺で、サッカーをして過ごす少年©Toufic Rmeiti/ICRC

 レバノンの首都ベイルートでは、紛争の影響により多くの人びとが家を離れ、海辺や公共の場で生活しています。停戦状態にあるものの、空爆や武力衝突の緊張は続き、医療体制のひっ迫や生活環境の悪化など、人びとの暮らしは大きく揺らいでいます。
 
 夜明けの海辺では、避難してきた人びとが身を寄せ合い、テントや車の中で寒さをしのいでいます。毛布にくるまり、次に何が起こるのかを不安な気持ちで見つめる日々です。そんな光景の中、一人の幼い少女が風船を握り、笑顔で走っていました。家を失い、日常を奪われた人びとの中で見られた、何げないワンシーンです。
 子どもたちは大人になったとき、今置かれている現状をどのように思い出すのでしょうか。紛争の影響を最も大きく受けるのは、いつも民間人です。単なる数字や統計の中の存在にしないように、その声を聞き、目を向け、思いをはせてください。

*赤十字国際委員会(ICRC)レバノン代表部人道問題担当による手記より(原文はこちら

拡大する人道危機-イランとレバノンの現状

 現在、中東地域では緊張が続き、イランとレバノンで多くの人びとが厳しい状況に置かれています。
 イランでは、武力衝突の激化により、3,400人以上が死亡し、そのうち約1,400人が民間人とされています(4月30日時点)。さらに、3万4,000人以上が負傷し、約320万人が国内で避難生活を余儀なくされています。病院や学校を含む多くの施設が被害を受けました。
 一方、レバノンでも状況は依然として不安定です。停戦状態にあるものの、武力衝突は続き、2,600人以上が死亡、8,000人以上が負傷しました。そのうち約2割は女性や子どもです(5月4日時点)。さらに、国民全体の5人に1人にあたる約120万人が避難を余儀なくされ、約124万人が深刻な食料不足に直面すると見込まれています。医療体制も大きな打撃を受け、多くの人びとが必要な支援を十分に受けられない状況が続いています。こうした現実の中で、日々の暮らしや将来への希望は、大きく揺らいでいます。

厳しい状況の中で続く支援

 このような厳しい状況の中でも、赤十字・赤新月のボランティアやスタッフは活動を続けています。イランでは、イラン赤新月社が全国650の拠点と約550万人のボランティアのネットワークを生かし、これまでに1,500件以上の捜索・救助を行い、数多くの負傷者への対応や医療支援を続けています。また、心理社会的支援(こころのケア)のホットラインには、19万件以上の相談が寄せられるなど、人びとの目に見えにくい苦しみにも寄り添っています。
 レバノンでも、レバノン赤十字社が国内の救急搬送の約8割を担い、これまでに6,700件を超える救急対応や、3万人以上の搬送を行ってきました。さらに、7万人以上に医療サービスを提供し、約40万点の食料や約4万点の生活物資を届けるなど、避難を続ける人びとの生活を支えています。
 紛争の影響を受けながらも、地域の人びと自身が支援の担い手となり、いのちと尊厳を守る活動が続けられています。

画像 ベイルートの集団避難所で、避難生活を送る子どもたちと手を取り合い、寄り添うレバノン赤十字社のボランティア©LRC/IFRC

United in Humanity ~人間を救うのは、人間だ。~

 こうした状況の中で迎えた、202658日の世界赤十字・赤新月デー。今年のテーマは、United in Humanity ~人間を救うのは、人間だ。~」です。
 近年、世界では人びとを分断する言葉や、人道支援に携わる人が戦火に巻き込まれ死傷するケースが相次いでいます。その結果、支援を必要とする人びとに助けが届きにくくなっているだけでなく、人と人との信頼やつながりも揺らいでいます。
 私たちが今年のスローガン「United in Humanity」に託した思いは、「支援する側」と「される側」という一方的な関係ではなく、同じ人類としてともに困難に取り組む姿勢です。苦しいときこそ、立場や国境を超えて、人と人とが思いやり、支え合うことが大切です。
 危機の中で活動するボランティアやスタッフは、どこか遠い存在ではなく、地域の一員であり、隣人であり、家族でもあります。また、支援を受ける人びとも、単なる被害者という「数字」ではなく、それぞれの人生を生きる一人一人の人間です。分断が広がる時代の中でも、私たちは人としてつながっています。そのつながりこそが、困難な状況の中で人びとを支える力になります。
 避難生活を送る人びとには、数字では見えない一人一人の物語があります。風船を握りしめる少女も、その一人です。彼女がどのような未来を歩むのか―その問いは、私たち一人一人に投げかけられています。
 赤十字はこれからも、人と人のつながりを大切にしながら、苦しんでいる人びとに寄り添い続けます。

画像 戦闘の激化により、突然の避難を強いられ、車の中や路上で身を寄せ合いながら生活を送る人びと©Mohammad Yassine/ICRC

 この「United in Humanity」の思いを皆さんと共有し、団結して、被害を受けた方々や現場で支援に尽力する人道支援の仲間たちにエールを送れればと思います。引き続き、皆さんの温かいご支援をお願いいたします。

「イラン及び周辺国人道危機救援金」
受付期間:令和8(2026)年3月16日(月)~令和8(2026)年5月29日(金)
使途:国際赤十字・赤新月社連盟、ICRC、各国赤十字社・赤新月社および日本赤十字社が中立・公平・独立の立場を堅持しながら行う、イランおよび紛争の影響を受ける周辺国その他の国々における被災された方への救援・復興支援活動などに充てられます。

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