100年以上の歴史をもつ世界最古の国際人道基金 「昭憲皇太后基金」の配分決定 ~約8,616万円を15カ国に~

赤十字国際委員会と国際赤十字・赤新月社連盟(以下、「連盟」)で構成される昭憲皇太后基金合同管理委員会により、世界最古の国際人道基金※1である「昭憲皇太后基金」の105回目となる配分先が発表されました。 

1 昭憲皇太后基金は平時の国際支援を目的とした世界初の国際人道基金であり、現在も当時と同様の形で支援が継続している最古のものである(日本赤十字社調べ) 

■昭憲皇太后基金 (The Empress Shôken Fund)とは?

画像 ©日本赤十字社

昭憲皇太后(明治天皇の皇后)が、1912年(明治45年)の赤十字国際会議に際し、各国赤十字社の平時事業にと、ご寄付された10万円(現在の3億5,000万円相当)を基に創設されました。

当時、戦時救護を主に行っていた赤十字において、自然災害における救護活動や疾病予防などの平時活動を奨励するための基金設立は画期的なことであり、世界における国際開発援助の先駆けとなりました。現在では、平時における人道支援活動を対象とした、100年以上継続している世界最古の国際人道基金として世界で広く知られています。

同基金は、国際赤十字の中に設けられた合同管理委員会によって運営され、日本の皇室をはじめとする日本からの寄付金によって支えられており、原資を取り崩すことなく、そこから得られる運用益が世界の赤十字社の活動に配分されます。

毎年、昭憲皇太后のご命日にあたる411日ごろに配分先が発表され、今年は、105回目の配分となります。

■105回目の配分について

画像 基金定款の校正段階の原稿。戦時救護が主であった当時、平時の感染症対策などに言及した画期的なものだった。 (赤十字WEBミュージアムより)

今回は、15カ国の赤十字社、赤新月社に対して総額8,616万円相当(43万884スイスフラン2)が配分されます。 

同基金の配分額は、第1回の1921年(大正10年)から105年間で、累計34億円相当(1,735万8,594スイスフラン)に換算され、配分先は175の国と地域にのぼります。 

2 1スイスフラン=199.96円(令和8年4月7日レート)  

 

◆◇◆◇ 第105回 昭憲皇太后基金支援事業 ◆◇◆◇

1.  防災と早期警戒

 

(1) コスタリカ赤十字社:約600万円(3万スイスフラン)

   先住民族ボランティア主導のレジリエンス(回復力)強化

   先住民族のボランティアを育成し、伝統的な知恵と現代的な手法を生かすことで、地域の防災力を高め、先住民族の住む遠隔地にも応用可能な災害対応の仕組みを整えます。

 

(2) サントメ・プリンシペ赤十字社:約600万円(3万スイスフラン)

   水害に対する警戒システム

   洪水や侵食、気候変動による災害リスクが高まる地域のために警戒システムを導入し、コミュニティの人びとが集めた情報を誰でも使いやすい通信手段で共有できる仕組みを整え、災害への備えと対応力を高めます。

 

(3) インドネシア赤十字社:約600万円(3万スイスフラン)

   若者主導の防災システムの構築

   AIプラットフォームと地域に根差した若者主導の支援を組み合わせ、災害リスクの高い地域が最新の防災情報を即時に入手できる環境を整え、持続可能な若者主導の防災システムを構築します。

 

(4) ボツワナ赤十字社:約593万円(2万9,680スイスフラン)

   廃棄物リサイクルによる環境負荷の低減

   不十分な廃棄物管理による環境悪化や洪水リスク増大を防ぐため、自動車廃棄物を他製品へリサイクルする拠点を整備し、環境負荷を低減しつつ収入機会を創出する循環型経済の構築を促進します。

 

2.  救急法と救助

 

(1)  エジプト赤新月社:約563万円(約2万8,160スイスフラン)

   子どもの年齢層別救急法訓練

   緊急時の救急法について、しばしば十分な習得機会のない子どもたちに対し、年齢別の救急法訓練を実施します。これにより、救急法の早期修得や地域の長期的なレジリエンス向上を促します。

 

(2) ラトビア赤十字社:約594万円(2万9,700スイスフラン)

   若者参画を促す体験型防災

   次世代を担う若者の防災活動への参画を促すため、クリエイティブな体験型の学習手法を導入し、防災を若者にとって魅力的かつ実践的なものにし、知識定着と行動変容を高める教育を実施します。

 

3.  こころと身体の健康

 

(1) デンマーク赤十字社:約595万円(2万9,750スイスフラン)

   若者のメンタルヘルス強化

   若者主体のピア・ツー・ピア学習(教師を介さずに、学習者同士で学習すること)とメンタリング(メンターとメンティーが1対1で対話を重ねること)を通じ、ストーリーテリングや「こころのケア」を組み合わせることで、若者が心身ともに健やかに、つながりを感じながら暮らせる力を育てます。

 

(2) チリ赤十字社:約555万円(2万7,740スイスフラン)

   ボランティアに対するこころのケアシステムの強化

   ボランティアはしばしば、さまざまなプレッシャーを抱えながら地域の人びとのために献身的に活動を続けています。そうしたボランティアを支えるために、「こころのケア」を取り入れ、安心して活動を続けられる体制を整えます。

 

4.  社会福祉とインクルージョン(包摂)

 

(1) アイスランド赤十字社:約600万円(3万スイスフラン)

   難民女性の参画とエンパワーメントの促進

   地域で孤立し、社会活動への参加が難しい難民の女性に対して、日常生活の支援やスキル習得などをサポートし、一人ひとりの自立と社会参加を後押しします。

 

(2) 北マケドニア赤十字社:約600万円(3万スイスフラン)

   支援サービスの集約による包括的支援の提供

   ホームレスや重度の貧困に陥る人びとの課題である支援システムの断片化に対し、さまざまな支援をワンストップで受けられる拠点を整備し、実践的で持続可能な包括的支援を提供します。

 

5.  若者の参画、気候変動・環境対策

 

(1) パキスタン赤新月社:約599万円(約2万9,966スイスフラン)

   気候変動対策を担う若者の育成

   気候変動への適応・レジリエンス活動に十分参加できていない都市部の若者に対し、研修・メンタリング・小規模助成金を提供し、地域に合った気候対策アイデアを企画して試行できるよう支援します。

 

(2) ラオス赤十字社:約328万円(1万6,388スイスフラン)

   持続可能なユースボランティアの育成

   若者のボランティアへの継続的な参画を促すため、研修・メンタリング・小規模助成金を提供し、地域に合った募集からリーダーシップ育成までの道筋を明らかにし、持続可能なボランティア育成モデルを構築します。

 

(3) タンザニア赤十字社:約594万円(2万9,700スイスフラン)

   若者主導の気候変動イノベーション・ラボ

   若者が地域社会と連携し、実践的かつ低コストな気候変動対策を共同で考案・検証するイノベーション・ラボを設立し、地域のレジリエンスと若者のリーダーシップを強化します。

 

(4) グアテマラ赤十字社:約600万円(3万スイスフラン)

   若者主導の水生態系保護活動

   水生態系への深刻な影響が懸念される中、若者主導の水域モニタリングや清掃・森林再生・啓発活動を支援し、多様な手法を比較して最適なモデルを模索します。

 

(5) コンゴ赤十字社:約596万円(2万9,800スイスフラン)

   ものづくりを通じたレジリエンス強化

   危機が繰り返し起きる地域では、安価で修理可能な道具が不足しています。そこで、ものづくり拠点を設けて若者を育成し、地域で実現できる解決策を生み出します。あわせて小さな事業化も支援し、地域が自分たちの力で継続できる仕組みをつくります。

 

                                                 

昭憲皇太后基金は、世界の赤十字社、赤新月社そして赤十字運動全体に良い影響力をもたらす新鮮かつ革新的なプロジェクトを促進するため、これからも活用されます。

画像 2025年(第104回)同基金配分先のひとつ、ガーナ赤十字社において、女性が主体となり、気候変動に強い持続可能な農業促進に取り組む様子。©ガーナ赤十字社

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