【速報4】イラン及び周辺国人道危機:戦闘の激化から1カ月、最前線で続く赤十字の支援
2026年2月28日に中東地域で戦闘が拡大・激化してから、まもなく1カ月が経過します。イランへの軍事攻撃は30州以上、130を超える市や郡に広がり、現地当局(保健・医療・医科教育省)によれば、これまでに1,200人以上が死亡、数千人が負傷したと報告されています。住宅や医療施設、学校、水や電気といった人びとの生活に欠かせないインフラも各地で被害を受けています。紛争の影響は中東地域全体へと広がり、深刻な人道危機が生じています。
イラン:暮らしとこころを直撃する人道危機
イラン国内では、現在約190万~320万人が住まいを追われ、避難生活を余儀なくされています(3月16日時点、UNHCR)。医療現場では、外傷患者の急増に加え、医療施設の被害や停電、医薬品不足が重なり、対応能力は限界に近づいています。すでに戦闘激化以前から制裁の影響による医薬品や医療機器の供給制約が続いており、現在は物流の混乱によって、状況は一層深刻化しています。
水や衛生をめぐる状況も厳しさを増しています。一部の地域では断水が数日間続き、避難民を受け入れている地域や低所得地域を中心に、感染症など公衆衛生上のリスクが高まっています。食料市場も打撃を受け、物価の上昇や物流の停滞が、人びとの日々の暮らしを直撃しています。さらに、通信インフラの被害によりインターネット接続が大きく制限され、正確な情報の入手や、支援を必要とする人びとの状況把握も難しくなっています。
不安を抱える避難中の女性に寄り添うイラン赤新月社のボランティア©IRCS
こうした厳しい状況は、人びとのこころにも深刻な影響を及ぼしています。空爆や突然の爆発、繰り返される警報音、避難と不安定な生活が続く中で、強い不安や恐怖を抱える人が増えています。実際に、イラン赤新月社のホットラインにも心理的な苦痛を訴える相談が各地で相次ぎ、こころのケアへのニーズは急激に高まっています。特に子どもたちは、爆発や学校の被害、家族との離別といった体験を通じて、強いストレスにさらされています。また、大人たちも、家族を守れない不安や生活再建への重圧を抱えながら日々を過ごしています。
このため、医療や食料、水といった支援に加え、人びとの心に寄り添う心理社会的支援が、いま不可欠な支援の一つとなっています。
イランで戦闘が激化する中、イラン赤新月社の救助隊員に抱きかかえられる少女©IRCS
中東地域全体へ広がる影響、最前線で続く赤十字の支援
この危機の影響は、イラン国内にとどまらず、中東地域全体へと広がっています。影響を受けている地域には、これまでもすでに2,430万人もの難民や国内避難民、帰還民が暮らしており、人道ニーズは深刻さを増しています。
レバノンでも戦闘激化の影響を受け、3月に入りわずか2週間ばかりの間に100万人を超える人びとが国内避難民となっています。さらに、レバノンからシリアへの帰還者の増加など、イラン周辺国でも情勢の悪化を受けた人口移動への警戒が強まっています。
こうした状況を受け、各国赤十字・赤新月社は、緊急対応と対策を強化しています。イランやレバノン、イスラエルでは、負傷者などの捜索・救助や救急搬送、心理社会的支援が全国規模で行われ、24時間態勢で地元の赤十字・赤新月社スタッフとボランティアによる人命救助が続けられています。
また周辺国でも、国内避難や国境を越える大規模な人口移動の可能性を見据え、避難所の準備や救援物資の事前配備、住民への安全注意喚起が進められています。イエメンやイラク、エジプト、クウェート、サウジアラビア、パレスチナ、ヨルダンでは、必要に応じて迅速に対応できる態勢を整え、緊急対応の準備を進めています。
さらに、アゼルバイジャンやアルメニア、トルクメニスタン、トルコでは、国境地域での受け入れ態勢を強化しています。アフガニスタンやパキスタンでも、帰還民や国内避難民への支援を続けています。
各国赤十字・赤新月社は、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)や赤十字国際委員会(ICRC)、各国当局などと連携しながら、拡大する人道危機の中で、人びとのいのちと尊厳を守るための支援を続けています。ICRCのミリアナ・スポリアリッチ総裁は、「民間インフラへの攻撃は、民間人を攻撃するのと同じ。今すぐやめて、事態の鎮静化に全力を投じることが極めて重要です」と紛争当事者に改めて訴えました。
「イラン及び周辺国人道危機救援金」を募集中
戦闘の激化から1カ月が経過しますが、現地では今も厳しい状況が続いています。赤十字は引き続き、紛争の影響を受けた人びとのいのちを守る緊急救援に取り組むとともに、医療や水・衛生など、生活に欠かせない基本的なサービスを回復する支援を行っています。
また、将来に予測されるさらなる困難に備え、地域社会のレジリエンス(回復力)を高める取り組みも進めていく計画です。支援にあたっては、女性や子ども、高齢者、障がいのある人、難民・移民、低所得世帯など、特に困難な状況に置かれている人びとへの配慮を重視しています。
日本赤十字社では、こうした状況を受けて、「イラン及び周辺国人道危機救援金」を募集しています。引き続き、皆さまからのあたたかいご支援とご協力をよろしくお願いいたします。
「イラン及び周辺国人道危機救援金」
受付期間:令和8年3月16日(月)~令和8年5月29日(金)
使途:連盟、ICRC、各国赤十字社・赤新月社および日本赤十字社が中立・公平・独立の立場を堅持しながら行う、イランおよび紛争の影響を受ける周辺国その他の国々における被災された方への救援・復興支援活動などに充てられます。