第40回NHK海外たすけあい募金キャンペーン実施報告

日本赤十字社が毎年12月にNHKと協働して実施するNHK海外たすけあい募金キャンペーン。
1983年から始まり第40回目を迎えた2022年度は83,816件計7億8,708万8,711円のご寄付をいただきました。皆様からのあたたかいご支援に感謝申し上げます。

2022年度の支援概要 ~誰も取り残さない。紛争からも飢餓からも。~

現在、世界各地では、相次ぐ紛争や暴力行為、激甚化する自然災害、深刻な食料危機、感染症の蔓延などにより、多くの人々が命をつなぐための支援を必要としています。
被害が甚大なウクライナ人道危機への継続的な支援が必要であるとともに、この危機の影響を受けて深刻化する人道危機に対して、報道の差や世間の関心の差によって格差が生じることがないよう支援を届ける必要があります。干ばつなどの気候変動の影響やコロナ禍で悪化した社会経済状況に加えて、ウクライナ人道危機による食料供給の不安定化がアフリカをはじめとする食料危機に拍車をかけています。
世界各地に広がる赤十字の草の根のネットワークというユニークな強みを活かし「救うことを託される」存在として世界各地の人道危機から誰も取り残さないよう、支援を届け続けています。

紛争に伴う難民・避難民などへの対応

ウクライナ

2022年2月に武力紛争が激化し、この1年、多くの人びとが愛する人や故郷を失い、心身の傷を負いました。また、エネルギーやインフラ、食料においては、ヨーロッパから遠く離れた地域にまで深刻な打撃を与え、世界各地で混乱が生じました。
危機が始まって以来、国際赤十字・赤新月社連盟(以下「IFRC」)や赤十字国際委員会(以下「ICRC」)をはじめ各国の赤十字・赤新月社が、世界中の皆様からの支援をもとに救援活動を拡大してきました。変化するニーズに対し、避難、住居、水、食料、医療、捕虜訪問など、さまざまな側面から支援を行い、多くの命を救い続けています。

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攻撃を受けた地域で緊急対応チームが活動(C)ウクライナ赤十字社

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リハビリ中の患者の様子を確認する理学療法士(C)日本赤十字社

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ヤナさん(ウクライナ)
「当時2歳と6か月だった2人の子どもを連れてポーランド北部に避難しました。地元の赤十字から、おむつ、離乳食、新しい服の支援を受けました。ここでは、食料や生活必需品を得ることがいかに難しいか実感しています。そんな時にも、赤十字には助けてもらっています。」

バングラデシュ

2017年8月にミャンマーのラカイン州で発生した暴力行為の結果、バングラデシュに逃れた人びとが避難民キャンプでの生活を送っています。5年以上が経過した今も解決の兆しはなく、90万人の避難民を取り巻く社会及び生活環境に大きな改善は見られません。
日本赤十字社では、2017年9月から緊急医療救援を行い、2018年5月からはバングラデシュ赤新月社とともに切れ目なく保健医療支援事業を実施しています。

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避難民キャンプでの医療支援(C)Ibrahim Mollik

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現地スタッフへの研修(C)日本赤十字社

中東地域(レバノン、シリア、イラク、パレスチナ、イエメンほか)

2011年にシリア紛争が始まって以来、隣国レバノンでは現在も150万人とも言われるシリア難民が避難生活を送っています。多くは収入不足のため住居を確保できず、非公認居住区で暮らしています。
日本赤十字社はレバノン赤十字社と協力し、2015年から2020年にわたって、各戸へのトイレ設置など、シリア難民の水・衛生環境の改善に取り組んできました。これまでの支援を継続する一方、子どもや女性など、より脆弱な立場に置かれやすい人びとにへの支援を強化していきます。
また、2018年4月からは、70 年以上の難民生活を送るレバノンのパレスチナ難民がよりよい医療サービスを受けられることを目的に、パレスチナ赤新月社レバノン支部の運営する5つの病院で働く医療スタッフへの医療技術支援を開始しました。

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トイレと手洗い場を設置した学校を視察(C)日本赤十字社

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手術室内を調査する日本赤十字社の医師と看護師(C)日本赤十字社

主な支援活動

・ウクライナ人道危機救援
・バングラデシュ南部避難民支援
・中東地域の紛争犠牲者救援(レバノン、シリア、イラク、パレスチナ、イエメンほか)
・各地域で紛争に苦しむ人々への支援(南スーダン、アフガニスタン、ソマリア、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、マリ、中央アフリカ、ミャンマー、リビア、エチオピアほか)
・その他突発的な武力紛争の犠牲者救援のため

頻発、激甚化する災害への対応

アフリカ:食料危機

IFRCの報告(2022年10月)によると、サハラ以南のアフリカ(サブサハラアフリカ)では日本の全人口を超える1億4,600万人もの人びとが深刻な食料不足に陥って緊急の人道支援を必要としていると言われています。
IFRC及びアフリカの被災国赤十字社は、食料危機への対応を強化するために、総額2億スイスフラン(約300億円)の緊急救援要請を発出しました。最も危機的な状況に置かれている14か国(ソマリア、ケニア、エチオピア、スーダン、南スーダン、ナイジェリア、ニジェール、ブルキナファソ、マリ、コンゴ民主共和国、カメルーン、アンゴラ、ジンバブエ、マダガスカル)の最貧困世帯等を対象に、現金の給付や緊急時の食料生産の道具の提供、子どもの栄養失調調査と食事の提供、栄養に関する啓発活動等を実施します。

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干ばつの被害を受ける親子(C)Amanuel Sileshi_IFRC

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ナイジェリアでの現地視察(C)IFRC

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ハッサナさん(ナイジェリア)

「以前は食料を買うことができず、一日に三度の食事もままならない状況でした。赤十字の支援を受けて私たちの生活は良くなりました。食事をとることができるようになったのです。支援を受けることができ、とても嬉しく、感謝しています。」

トルコ・シリア:地震

2月6日、トルコ南東部のシリア国境付近を震源とするマグニチュード7.8の地震が発生しました。死者数は、トルコとシリアで合わせて、5万人を超えています(2023年2月25日時点)。数百万人が住む場所を失い、避難生活を送っています。家屋が残っても、余震による倒壊を恐れ、屋外で生活している人々もいます。
シリア北西部の被災地は、長期に渡る紛争や経済制裁の影響で、社会インフラが特に脆弱な地域であり、今回の地震被害と相まって、多くの人道支援ニーズが発生しています。被災国のトルコ赤新月社とシリア赤新月社は、それぞれの国の救援活動の中心的役割として、地震発生直後から懸命な救援活動を24時間体制で続けています。具体的には、トルコ赤新月社は、避難所の支援、食事の提供、水と救援物資の配付等、シリア赤新月社は、救援活動、負傷者の搬送と救援物資の配付、巡回診療サービス等の役割を担っています。

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被災者に暖かい飲み物を配布するボランティア(C)トルコ赤新月社

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倒壊したビルの現場で救護活動にあたるスタッフ(C)シリア赤新月社

主な支援活動

・突発的な洪水や干ばつなど自然災害の被災者救援のため(トルコ・シリア地震救援を含む)
・アフリカ等における食料危機への対応のため
・アジア・大洋州地域での給水・衛生災害対応キット整備のため
・緊急時の救援物資、資器材備蓄のため

人々のレジリエンスを強化するための取り組み

アフガニスタン

アフガニスタンは、1970年代から続く紛争によって政治・経済・インフラが壊滅的な被害を受けたことに加え、近年は、気候変動がもたらす自然災害や政変により状況が深刻化しています。
日本赤十字社は2020年7月から支援事業を開始し、干ばつや洪水の被害を強く受ける地域において、「防災・減災活動」と「生計支援活動」のを通じ、対象地域の各村落とそこに暮らす人びとのレジリエンス強化を目指しています。

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食料配付の様子(C)アフガニスタン赤新月社

ルワンダ

ルワンダは人口の8割が暮らす農村部では、高い貧困率、社会インフラの未整備による安全な飲料水やトイレの不足、感染症、そして気候変動の影響による自然災害といった複合的な社会課題に直面しており、首都キガリとの著しい経済格差が生じています。
日本赤十字社は2019年、災害や貧困に苦しむ人びとへの支援事業を開始しました。住民が主体となって地域の様々な課題に取り組む「モデルビレッジアプローチ」という手法を用い、「レジリエンス=自ら立ち上がる力」を高めます。

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赤十字から配布された牛の飼育(C)日本赤十字社

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ルワンダと日本の小学生の交流会(C)ルワンダ赤十字社

主な支援活動

・ルワンダやアフガニスタンの気候変動に対するレジリエンス強化のため
・インドネシアなどでの防災活動のため
・大洋州地域、カリブ海地域の災害対応能力強化のため
・ラオスなどでの応急手当等普及のため
・東アフリカ地域(ブルンジ、タンザニア、ウガンダほか)の地域保健強化のため
・南部アフリカ地域(ナミビア、マラウイ、エスワティニ、ザンビアほか)の感染症対策のため

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