アフリカの角:過去40年で最悪の干ばつ被害

 ウクライナ人道危機の最中で、世界のあらゆる場所では自然災害や紛争による人道危機が日々起こっています。

 その中のひとつ、「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ大陸東部の地域(エチオピア、ソマリア、ケニア、ジブチ、エリトリア)では、202010月から続く雨不足により3期連続の干ばつに見舞われ、過去40年で最悪の事態になると言われています。

 干ばつ被害に加えて、一部の地域では例外的な雨季に見舞われ洪水や避難民が発生したり、バッタの大量発生が起こったり、度重なる連続災害が農業や水資源に壊滅的な被害を与え、深刻な貧困・食料危機を引き起こしています

 米国国際開発庁(USAID)の飢餓早期警報システムネットワーク(FEWSNET)の発表によると、現在1400万人以上への緊急の食料支援が必要で、このあとの危機を防ぐためには、今年中に2000万人以上への食料支援が必要とされています。

 東京都の人口が約1400万人とほとんど同じ数にあたるので、いかに深刻な食料危機であるかがわかります。

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干ばつ被害を受けるケニア(C)IFRC・Rita Nyaga

栄養失調に苦しむ550万人以上の子どもたち

 エチオピアのオロミア州に住むアシャくんは生後9ヶ月の赤ん坊で体重は5kg、上腕周囲径測定帯 (栄養失調の状態を測るための二の腕の太さ計測)はたった10cmでした(11cm以下は極度の栄養失調で命にかかわるとされる)。ハイハイもできず、自力で立つこともできないほど弱っていて、直ちに処置が必要な状態にありました。

 このような子どもはアシャくんだけではありません。「アフリカの角」に住む550万人以上の子どもたちが栄養失調状態に陥っていると言われています。

 現地の職員は「今までの人生で、今回のような極限状態にある子どもたちを見たことがありません。飲むための安全な水もありません。すでに栄養失調状態にある子どもたちは、水を媒介とする病気にかかりやすくなる危険もあります。」と述べています。

 栄養失調の子どもたちは今後も増え続けることが懸念されます。エチオピア赤十字社は地元当局と話し合い、この地域で生活支援のための現金給付プログラムを実施することにしました。

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栄養失調のアシャくんを抱える母親(C)ERCS

 このような「アフリカの角」における食料危機や干ばつの被害に対し、国際赤十字・赤新月社連盟は昨年から緊急救援アピールを発出。日本赤十字社はこの1年間でソマリア・ケニア・エチオピアに対し、計1500万円の緊急資金援助を行いました。

 その使途は脆弱な立場にいる人々への食料支援、現金・物資給付による総合的な生計支援、医療サービスの提供や給水・衛生及び衛生促進、こころのケアのほか、小規模農家に対して種苗や農具、技術支援を行うなど多岐にわたります。例えば、水の汚染・不足が著しいケニアでは給水システムの復旧や給水タンクの提供に加え、ケニア北東州の町ワジールでは1,116世帯に対して食料配付にあわせて浄水剤なども配り、その使用法の指導を行うなど衛生促進の支援が実施されました。

目を向けなければいけない「隠れた」人道危機

 ウクライナ人道危機が世界の注目を集める中、このような「隠れた」人道危機は世界各地で起きています。赤十字は引き続き、アフリカの角で急速に悪化する飢餓の危機について広く呼びかけを続けています。

 日本赤十字社は幅広い地域の人道支援のニーズに応えられるように、世界各地の赤十字と連携をとって、支援活動を行います。

画像 ソマリア・アイナバ地区の難民キャンプにて(C)SRCS

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5月8日は世界赤十字デー

 赤十字の創始者アンリー・デュナンの誕生の日である5月8日は「世界赤十字デー」です。赤十字では、誰かを救うために行動を呼びかける日としています。

 また、5月1日は日本赤十字社の前身である「博愛社」が創設された日であり、こうした歴史的な日のある5月を毎年「赤十字運動月間」として皆さまに赤十字活動の報告や継続的な協力をお願いしています。

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