「昭憲皇太后基金」の支援先が決定 ~100年以上経った今も受け継がれる思い~

"平時に備える"という発想が広く普及していなかった明治時代、世界各地で赤十字が実施する人道支援活動に今なお大きく貢献している「昭憲皇太后基金」が創設されました。これまでの配分は1921年(大正10年)の第1回から今回(第101回)までで、累計20億円相当(15,572,353スイスフラン※1)に換算され、配分先は170の国と地域にのぼります。

支援事業の様子

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女性のリプロダクティブ・ヘルスと自主性の支援
(ベナン赤十字社、2021年配分)

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ボランティア活動の強化
(モンテネグロ赤十字社、2020年配分)

昭憲皇太后基金とは?

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昭憲皇太后(明治天皇の皇后)が、1912年(明治45年)の赤十字国際会議に際し、各国赤十字社の平時事業にとご寄付された10万円(現在の3億5千万円相当)を基に創設されました。

世界で武力衝突が起こり、のちに第一次世界大戦が起こるこの時代において、多くの赤十字社は戦時救護の対応に追われていました。そんな中、保健衛生の改善や、地震、台風、火災、噴火等の災害への備えといった平時の活動を行うための国際基金の創設は画期的なことであり、世界の国際開発援助の先駆けとなりました。また、100年以上継続している平時における人道活動を対象とした世界最古の人道援助基金※2として世界で広く知られています。

同基金は、国際赤十字の中に設けられた合同管理委員会によって運営され、日本の皇室をはじめとする日本からの寄付金によって支えられており、原資を切り崩すことなく、そこから得られる利子が世界の赤十字社の活動に配分されます。

毎年、昭憲皇太后のご命日にあたる4月11日頃に配分先が発表され、今年は、101回目の配分となります。

第101回 昭憲皇太后基金支援事業

1. ブルキナファソ赤十字社(アフリカ):約398万円(29,965スイスフラン)
治安悪化の影響を受ける地域におけるボランティア育成、応急手当、心理社会的支援
深刻な治安上の問題に直面している地域において、武装勢力による攻撃の被害を受た人々を支援し、国内避難民に心理社会的支援を提供します。

2. ニジェール赤十字社(アフリカ):約418万円(31,500スイスフラン)
緊急対応支援
緊急時の効果的な対応のため、「緊急通報」の有益な情報を記録するよう人々に普及・教育します。

3. タンザニア赤十字社(アフリカ):約398万円(30,000スイスフラン)
新型コロナウイルスのワクチン接種率を高めるための新たな取り組み
アプリケーションを開発することで大勢の人々への情報共有を強化し、ワクチン接種率の向上を図ります。

4. コートジボワール赤十字社(アフリカ):約398万円(29,991スイスフラン)
保健教育
学校に通っていない若い女性の教育と自立支援に貢献します。

5. ドミニカ国赤十字社(中部・南アメリカ):約398万円(30,000スイスフラン)
農業支援者の育成
農家に対して地域社会における農業支援者としての研修を実施し、気候変動やリスクへの対策・農業技術支援を行います。

6. エクアドル赤十字社(中部・南アメリカ):約398万円(30,000スイスフラン)
若年層への心理社会的支援
首都キトにおいて、新型コロナウイルスのパンデミックによりニーズが高まる若年層(15歳~30歳)への心理社会的支援を行います。

7. ドミニカ共和国赤十字社(中央・南アメリカ):約353万円(26,600スイスフラン)
地域社会活動における若年層の能力強化
若年層に対して地域社会のニーズに対応するための技術やツールを学ぶオンライン研修を実施します。

8. モンゴル赤十字社(アジア大洋州):約398万円(30,000スイスフラン)
地域社会への参画促進と説明責任の制度化
デジタルコミュニケーションツールを取り入れることにより広報活動を改善し、地域社会に対する説明責任と透明性を強化します。

9. スリランカ赤十字社(アジア大洋州):約398万円(29,965スイスフラン)
災害対策のための地下水涵養
集水域等に地下水涵養法を導入し、災害に備えます。

10. 大韓民国赤十字社(アジア大洋州):約458万円(34,500スイスフラン)
バーチャルリアリティ(VR)を用いた防災教育
防災教育の研修コンテンツやプログラムの作成、指導者養成、VRデバイスの提供等を通じて、アジア大洋州災害レジリエンスセンターによる革新的なデジタルツールの開発を支援します。

11. クロアチア赤十字社(ヨーロッパ・中央アジア):約398万円(30,000スイスフラン)
子どもへの人道教育
子どもたちへ人道主義の理念を普及・教育します。

12. ポルトガル赤十字社(ヨーロッパ・中央アジア):約328万円(24,691スイスフラン)
変革のプラットフォーム
企業や大学と協力し、若年層の社会的排除や必要な技術・デジタルリテラシーを身に付ける機会を創出します。

13. セルビア赤十字社(ヨーロッパ・中央アジア):約325万円(24,500スイスフラン)
デジタルマーケティングによる応急手当の普及
心肺蘇生やAEDの使い方を学ぶことへの意識を高めるため、応急手当のデジタルマーケティングキャンペーンを実施します。

14. リビア赤新月社(中東・北アフリカ):約398万円(30,000スイスフラン)
気候変動リスクに対する地域社会の意識向上
気候変動に関連するリスクへの認識を高め、これらのリスクを軽減するのに役立つ行動を普及します。

15. イエメン赤新月社(中東・北アフリカ):約398万円(30,000スイスフラン)
落石リスクの軽減
予防措置を講ずることで、落石による被害を減らすことに貢献します。

16. ヨルダン赤新月社(中東・北アフリカ):約398万円(30,000スイスフラン)
ボランティアの支援活動の推進
ヨルダン赤新月社による人道支援活動のため、ボランティアの募集、育成、確保にかかる体制を強化します。

創設110年記念シンポジウムを開催しました

2022年4月2日、昭憲皇太后基金の創設110年を記念したシンポジウムを開催しました。

第1部では、国際赤十字の合同管理委員会と、昨年に基金の配分先となった南スーダン赤十字社から届いた2つの動画レポートをもとに、支援の現場に詳しいパネリストたちと「世界の現状」を語り合いました。

第2部では、昭憲皇太后基金の志を発展させ、日本にいる私たちができることとは何か。支援依存にならずに、持続した社会の構築に求められる取り組みや、日本のポテンシャルについて、多様なスピーカーの方々から自由にご提言いただきました。

近日、録画動画を配信予定です。

※1 CHF=132.699円(令和4年4月6日レート)
※2 昭憲皇太后基金は平時の国際支援を目的とした世界初の国際人道基金であり、現在も当時と同様の形で支援が継続している最古のものである(日本赤十字社調べ)