【速報9】ウクライナ危機:日本赤十字社より国際赤十字に14億円の追加資金援助を実施

 日本赤十字社は、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)、赤十字国際委員会(ICRC)、各国赤十字社が実施するウクライナでの人道危機対応及びウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するため、2022年3月2日から「ウクライナ人道危機救援金」の受付を開始いたしました。 

 救援金の受付開始から1か月、これまで多くの皆さまからあたたかなご支援とご協力をお寄せいただき、心より感謝申し上げます。 

 ウクライナにおける人道危機に対して皆さまから寄せられた思いを迅速に現地の救援活動に活かすために、日本赤十字社は、連盟とICRCの緊急救援アピール(資金援助要請)に対して、「ウクライナ人道危機救援金」から追加で14億円(連盟あて7億円、ICRCあて7億円)の追加資金援助を実施しました。

 なお、これまでに日赤から連盟とICRCへそれぞれ3億6,000万円ずつ支援を行い、現地での赤十字の人道支援活動に使用されています。この1か月間の国際赤十字の活動について一部ご報告いたします。

■国際赤十字・赤新月社連盟の緊急救援アピール支援概要

 国際赤十字・赤新月社連盟は、3月1日に総額1億スイスフラン(約125億円相当)の緊急救援アピールを発出しました。

 本緊急救援アピールでは、現在、ウクライナ、ポーランド、ハンガリー、スロバキア、モルドバ、ルーマニア、ベラルーシ、ロシアにある赤十字社が実施する人道支援活動を支援しています。さらに今後、支援対象となる各国赤十字社が増える可能性もあります。

 これまでに影響を受けた人びと約100万人に対して、2,179トンの支援を届けることができました。

 4月5日時点で、以下のような活動が実施されています:

60,000人以上への保健衛生・医療支援

・ウクライナ赤十字社は、医薬品や医療物資を提供し、国内で避難している人びとや医療施設の支援を行いました。これまで42,000人に応急手当の研修を実施し、900人に対してオンラインでの心理社会的支援(こころのケア)研修を実施しました。研修は動画配信もされ、さらに2,000人が視聴しています。

・ポーランド赤十字社の19の保健医療チームが、ウクライナ国境で医療支援やこころのケアを提供しました。

・ハンガリー赤十字社は国境近くの3か所でヘルスケアセンターを運営し、医療支援を提供しています。

・ルーマニア赤十字社、スロバキア赤十字社は国境沿いでのこころのケアや応急手当の提供を行っています。

・ベラルーシ赤十字社はホットラインで41人に対してこころのケアを提供しました。

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ウクライナから避難してきた人に保健医療を提供するハンガリーの赤十字ボランティア(C)Tamara Vukov

■一時避難所における物資支援・住居に関する支援

・現在各社は、避難してきた人が一時的に過ごす場所において、より快適に過ごすために必要な物資(洋服、毛布、マットレス、ベッドシーツなど)の支援に重きを置いています。物資に加えて、温かな食事を提供している社もあります。

・今後、避難が長期間にわたる場合など、中長期的な住居支援の可能性があることも想定しています。

・ウクライナ赤十字社は、地元当局と連携を取りながら、学校やコミュニティビルの中に避難所を設置しています。

・ロシア赤十字社は、365トンの人道支援物資(洋服、衛生セット、マスク、靴、毛布、赤ちゃん用の衛生物資など)を配付しました。

・ポーランド赤十字社は、これまで169,000人に対してトラック27台分の物資支援を実施しました。

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支援物資を配付する赤十字ボランティア(C)ウクライナ赤十字社

■現金などの給付支援

・連盟は、カード会社と協定を締結し、ウクライナ国外に出た人が自由に物を購入できるように、デビットカードを作成しました。3月27日までに100,000枚が使用できる状態となり、随時避難者の方に配付されます。

・ポーランド赤十字社は、8月までに10,000世帯に対して現金給付を行うための計画とアセスメントを行いました。

■女性や子どもなど、特に支援を必要とする人びとへの支援

・避難している人びとの多くが女性や子ども、高齢者などであり、緊急時に特に保護すべき対象であるということを強く訴えています。

・避難している人の多くが子どもであり、子どもに対する性的搾取や虐待などの危険性について各社で職員・ボランティアに研修をしています。

・モルドバ、ルーマニア、ハンガリー、スロバキアでは「チャイルド・フレンドリー・スペース」を設置し、子どもたちが安心して遊びながら安心感を得ることができる場を提供しています。

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チャイルドフレンドリースペースで遊ぶ子どもたちとスロバキア赤十字ボランティア(C)IFRC Marco Kokik

 連盟は、引き続き、今回の危機で影響を受けたウクライナ国内の人びと、避難するために移動を余儀なくされている人びと、避難先の国に到着し滞在している人びと(隣接国や第三国)を対象に、ニーズに応じた支援を提供します。

■赤十字国際委員会の緊急救援アピール支援概要

 ICRCは、2014年からウクライナで活動をしており、紛争下で暮らす人びとを支援してきました。ウクライナ人道危機に対してICRCは、総額1.5億スイスフラン(約188億円相当)の緊急救援アピール(2022年当初に発出した年間計画の予算を拡大)を発出しており、ウクライナ赤十字社と協働で、主にウクライナ国内での支援活動を中心に実施しています。

 ICRCは現在ウクライナに10の拠点を持ち、これまで700トンの救援物資(医療物資、食料等)をウクライナ国内に届けました。

 4月5日現在、以下のような活動が実施されています:

■医療支援

・ポルタバ、キーウ(キエフ)、オデーサ(オデッサ)、ドニプロ、ジトーミルにおいて、戦傷外科キットの配付による既存の病院の支援や救急搬送の支援、医薬品の支援を行っています。

・ウクライナ国内への医療者の派遣も行っています。例えばポルタバでは現在中央病院に医療スタッフが入っており、25人の現地医療スタッフに研修をし、戦傷外科等を支援しています。

・こころのケアにも注力しており、24時間のホットラインを設けてウクライナ赤十字社を支援しています。

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イルピンで負傷した人びとに応急的な医療を施すICRCスタッフ©ICRC

■物資支援

・ウクライナ全土の必要な地域において、食料、水や毛布などの救援物資の配付を行っています。

・ドニプロ、リシチャンシク、セベロドネツク等の避難所、電車の駅などで食料や水を配付しました。セベロドネツクでは2,000人以上に衛生キットを配付しました。

・ドネツクで、1,200人以上の人々にビニールシートを配付しました。屋根を修復するための応急処置として用いられました。

■安全な経路(いわゆる「人道回廊」)へのアクセス確保

・ICRCは4月5日までに3回、安全な経路での避難の支援に携わっています。

・3月15日と18日に、スムイから数千人もの人びとをルブヌィまで先導しました。

4月5日に、1,000人以上の人びとをベルジャンシクからザポリージャに先導しました。避難した人の中には自力でマリウポリから脱出した人も含まれます。

・引き続き、人びとの避難と人道支援物資を確実に届けるため、安全な経路の確保について紛争当事者との対話を続けていきます。

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スムイで避難誘導をするICRCスタッフ©ICRC

 また、ICRCは中立で公平な人道団体として、引き続き紛争当事者との対話を継続し、一般市民と公共インフラの保護、人道支援が展開できるような経路や安全な避難経路を確保すること、拘束されている人びとを尊厳を持って扱うことなど、国際人道法の遵守を強く訴えています。

 連盟とICRCは、活動を拡大、充実させていくため、アピールを増額改訂する予定です。

 日本赤十字社も国際赤十字への資金援助に加えて現地への人員派遣の貢献を行っており、今後も支援の拡大を予定しています。引き続き、速報でお伝えいたします。

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「ウクライナ人道危機救援金」

受付期間: 2022年3月2日(水)~2022年5月31日(火)

使  途: 国際赤十字・赤新月社連盟、赤十字国際委員会、および各国赤十字・赤新月社が実施する、ウクライナでの人道危機対応及びウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するために使われます。