コロナ禍の新たな支援のカタチ:「リモート派遣」とは?

日本赤十字社は2019年から、パレスチナ暫定自治区ガザにあるパレスチナ赤新月社病院を対象に、医療サービスの質を向上させるための活動を行なってきました。当初は現地に医療スタッフを派遣して事業を実施してきましたが、コロナ禍で現地への派遣が難しくなったことをきっかけに、医療スタッフがメールやウェブ会議ツールを利用して、日本から遠隔で支援を続ける「リモート派遣」を開始しました。

今年の2月からこのリモート派遣に参加している大阪赤十字病院の藤原真由看護師は、2020年初頭に現地(ガザ)でも活動を行なっていました。遠隔支援に従事しておよそ半年が経った今、現在の様子や現地での活動との違い、自身の思いを聞いてみました。

活動内容を教えてください

私が担当している看護部門では主に、現地の担当看護師さんと一緒に看護ケアの技術別に手順書を作成しています。出来上がった手順書はほかの看護師さんたちにも理解を深めて活用してもらえるように、実際に手順を実演しながら解説するワークショップを開催しています。

「リモート派遣」で気付いたことは?

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 たしかに、現地にいたら毎日顔をあわせているので細やかなサポートができます。空爆があった場合など、対応状況や忙しさが分かるので業務を調整することができるのです。しかし、遠隔だと直接現場にいない分、「どれくらい業務をプッシュし続けていいのか、手を緩めたほうがいいのか」といった塩梅が分かりにくいこともあります。また、コロナ禍に合わせた事業運営のために作業が増えることもあります。例えば、ワークショップを開催する際には、通常であれば1回の開催で終えるところ、1回あたりの人数が多くならないように、数回に分けて開催するなどです。

現地の看護師に活動の説明をしている様子

一方で、これまで日赤がしっかりと現地で築いてきたローカルスタッフとの信頼関係のおかげで、遠隔でも意外とスムーズに事業を進められていると感じることもあるんです。私自身も現地で一緒に活動してきたのでローカルスタッフのことをよく知っています。例えば、ワークショップの準備について注意点をウェブ会議で指摘したら、「日赤やったらこう思うんやろ?」みたいに先回りして、もう実践してくれていたりするんです。勉強熱心な皆さんにはいつも、とても感謝しています。現場で一緒に活動するなかで、事業の方針をこんこんと伝えたり、話し合うことで築けた関係があるからこそ、「リモート派遣」が成り立っていることを実感しています。

「リモート派遣」での新たなやりがい

画像 現地の看護師とワークショップを実施した時の様子

コロナ禍や遠隔支援での事業管理はとても地道なものです。でも、その分、ローカルスタッフの方がたも、私ら日赤スタッフがいないながらにも頑張ってくださって、こつこつ一緒に準備をしてワークショップを開催できた時、そしてその成果が現地での医療サービスの向上に現れてきた時は、一緒に成し遂げた達成感で喜びもひとしおです。

「今からガザ行ってきます!」

日本の職場の皆さんが理解してくださるからこそ活動に従事できているので、普段からしっかり病棟に貢献するようお仕事をしながら、現地への医療支援活動でどんなことをしているかも職場に紹介するよう意識しています。私がこれまで活動してきた中東地域は、日本ではなんとなくまだ「こわい」というイメージがあると思うんですが、まずはそんなイメージを取り払ってもらえるよう、向こうの日常生活や人間模様など、私たちが生活しているのと同じように現地の人たちも生活しているということが分かるようなエピソードをお話しするようにしています。普通に生活しているうえでいろんな困難があるということを伝えられるといいかなと。やっぱり、「戦争や紛争が起きているところ」というイメージだと、向こうで起きたことが身近に感じてもらえないんですよね。病棟業務の合間にリモート派遣が入るので、そんなふうにお話ししながら「じゃあ、今からガザ行ってきます!」という感じでやっています。今ではガザで空爆があったりすると、同僚や上司の方から様子を気にかける声をもらったり、興味をもってもらえるようになりました。

今後の目標

リモート派遣で携わらせていただいている今の活動をこつこつと続けていくことで、ゆくゆくは現地にいるパレスチナ赤新月社の医療スタッフでこの事業を運営していっていただけるよう、その仕組みづくりに貢献したいです。

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