国際人道支援を担う次世代要員

研修の様子

日本赤十字社(以下「日赤」)では、世界各地の人道支援ニーズに的確に応えるために、国際赤十字が定める基準に準拠した海外派遣要員の育成を行っています。「国際救援・開発協力要員研修(International Mobilization and Preparation for Action (IMPACT)研修)」は、海外で救援活動に携わりたいという熱い思いを持つ人々が新たに登録要員になるための登竜門であり、日赤では毎年同研修を開催しています。

今年も、2019年6月26日から6日間、神奈川県の研修施設にて開催され、日本各地、ネパール、フィジー、インドネシア、フィリピン、バングラデシュなどから集まった34人が、経験豊かな講師陣とともに、熱い議論を通じて知見を深めました。

研修の様子2

6日間の研修では、人道ニーズの潮流、各国赤十字・赤新月社と国際赤十字本部との連携、国際人道法、赤十字の7原則、メディア対応、受益者の参画と説明責任、ジェンダーと多様性、ボランティア活動、ITコミュニケーションといった、国際救援・開発協力の現場で求められる知識・技術や、チームワーク、安全管理、赤十字の原則に基づいた行動規範といった、全ての要員に求められる基本事項を学びます。参加者はこの研修を通じて、海外の現場に派遣される前に必要な知識と心構えを身に付けることを目指します。

研修の様子3

研修後半では、架空の国で発生した災害と紛争のシナリオが与えられ、参加者は講義やグループワークで習得したばかりの知識をフル活用しながら、めまぐるしく変わる状況にチームで対応していきました。
理想通りには事が運ばない現場でのジレンマや、交渉・調整の困難さを実感する参加者に対し、現実とセオリーのギャップを埋めるよう、国際赤十字・赤新月連盟と赤十字国際委員会から派遣された講師が自身の経験に基づき助言しました。また、時には、既にいくつかの救援プロジェクトを経験している参加者からも積極的な体験の共有がなされました。 

研修の様子4

最初は手探り状態であった参加者も、研修最終日を迎えるころには、与えられた条件の中で自発的に状況を打開すること、言語文化の異なる状況下で正確なコミュニケーションを心がけること等、要員としての自覚が芽生える様子がうかがえました。

参加者は、「研修を通じて、自分が何を目指していて、今の自分に足りないものは何であるのかがより明確になりました。」「全ての参加者が多彩なバックグラウンドを持っていて、研修を通じて多くのことを共有することが出来ました。赤十字の派遣要員として、苦しんでいる人のために働きたいという思いが強まりました。」と語ってくれました。

また、海外からの参加者からは「この研修を通じて素晴らしい経験を得ることができました。日本人参加者の、礼儀正しさ、親しみと情熱のこもった言動から多くを学びました。」「将来日赤の要員と現場で会った時には、力になりたいです」と話してくれました。

各国の赤十字・赤新月社から国際的な救援・開発協力現場に派遣される人材はすべてこのIMPACT研修を受けており、世界各地で過去30年以上にわたって開催されてきました。今回IMPACT研修を修了した34人は、今後「海外派遣要員」として登録され、突発的な災害に対応する医療チームや、復興支援・開発協力事業に携わる要員として現場で活躍することが期待されます。

* IMPACT研修を受けるに当たって必須となるオンラインでの事前研修「World of Red Cross (WORC)」及び「Stay Safe(危機管理研修I)」は誰もが受講可能です。赤十字の活動や基本原則、要員として知っておくべき基本的な危機管理意識を学ぶことができます。(www.ifrc.org/learning-platform)

本ニュースの印刷用PDF版はこちら(634KB)