盛岡の夏を彩る七夕まつり。毎年旧暦の七夕頃=8月上旬に開催され、アーケードには七夕飾りと共に、たくさんの屋台が立ち並びます。このお祭り、岩手乳児院の子どもたちにとっては、とある社会経験ができる貴重な機会となっています。
「このゲームならあと2回できるけれど、あっちの食べ物も買えるよ? どうする?」乳児院の職員が、“おこづかい”から何を買うか聞くと、子どもたちは迷いながらも決断し、小さな手に握りしめたお金を、お店の人に渡します。
「乳児院には0歳から5歳の子がいますが、この子たちはお金を知らずに育ちます。家庭では当たり前の“お買い物”は、乳児院で育つ子どもにとっては特別な経験。買いたいものを自分で選び、好きなものを食べて、楽しい思い出にもなっています」
そう話すのは、日赤岩手乳児院 保育士・里親支援専門相談員の山口瞳さん。一人あたり“おこづかい”は1000円~1500円、これは乳児院の予算から捻出していますが、家庭のおこづかいと違い、多くの大人たちが手続きと調整に関わっています。


このような社会経験はもちろん、普通の家庭で味わえる幸せな日常を経験できるのが「里親制度」です。乳児院では、子どもたちの日々の養育とともに、里親委託に向けた支援にも力を入れています。しかし、血のつながった家族・親族が里親委託に踏み切れず、施設で生活を続ける子どもも少なくありません。
「自分では育てられないけれど、孫を手放したくないと里親委託に反対していたおじいさんがいました。その方はできる限り、その子に会いに乳児院に来ていて。でも、里親は養子縁組とは異なり、子どもの戸籍は変わらないこと、家族同然に育ててくれて温かい家庭を経験できることなど、丁寧に説明を重ねる中で、里親委託を受け入れる決断をしてくださいました」
複雑な事情を抱える乳児院の子どもたち。一人一人の幸せを願い、今日も職員たちは力を尽くしています。

