海や川の危険から命を守る 水辺の事故を防ぐ基礎知識

海水浴や川遊びなど、水辺でのレジャーが楽しいこの季節。しかし、海や川にはたくさんの危険が潜んでいます。今回は、水の事故から大切な命を守る「赤十字水上安全法」講習のポイントをご紹介します。

危険なのは「大人の注意力低下」と「流された物を追いかける行為」

大人の注意力低下
流された物を追いかける行為

飲酒やバーベキュー、携帯電話の操作などに気を取られ、子どもから目を離した隙に事故が起こりがち。また、川ではビーチサンダルなどが流され、それらを追いかけることが事故につながるケースも多いので注意

穏やかに見える海でも「離岸流」に注意

離岸流

離岸流とは、海岸に打ち寄せた波が沖に戻る強い海水の流れ。「白波が立たない場所がある」などが見分けるポイントだが、一般人には判断が難しいので、監視員などの見守りがある海水浴場を選ぶのが原則

安全な水遊びのカギは「体調管理」と「ライフジャケットの正しい着用」

「近年は、キャンプやマリンスポーツなど、水辺のレジャーが人気ですが、川や海の危険に関する知識が不十分で、思わぬ事故に遭うケースが後を絶ちません」と語るのは、赤十字水上安全法指導員の佐藤藍さん。これらの遊びを安全に楽しむための第一歩は、まずは体調管理から、と佐藤さんは言います。

「非日常のイベントに気分が高揚していますが、体調にいつもと違う感じはないか、冷静に見極めることが大切です。特に子どもは、多少調子が悪くても楽しみが勝って、『大丈夫!』と答えがち。頭やおなかが痛くないか、ダルさや熱っぽさはないかなど、具体的に尋ね、しっかり観察しましょう。また、水に触れていると油断しがちですが、熱中症対策も忘れずに。こまめな水分補給と休憩を心掛けましょう」

そして、水遊びをする上で積極的に着用してほしいのが、ライフジャケット。

ライフジャケットは、水遊びのシートベルト。体に合ったサイズを選び、サイドベルトと股ベルトを正しく締めることが大切です。子どもが大人用を着ると、水中で体が抜けてしまうことも。また、小型船舶に乗るときや磯遊び、川遊びなどの用途や使用場所に応じて、安全基準を満たした物を選びましょう」

前日の雨、上流の天候でも安全は左右される

前日の雨、上流の天候でも安全は左右される

川のレジャーは、急な増水や水流の変化が発生する危険も。自分たちが遊んでいる場所・時間の空模様だけでなく、広い視点で危険を予測することが重要

救助は水に入らず、相手の呼吸を確保する

佐藤 藍さん

広島県支部/看護師
佐藤 藍(さとう あい)さん

学生時代に競泳で鍛えた泳力を生かすべく、ライフセービングと水上安全法指導員の資格を取得。病院から日赤広島県支部に異動し、講習担当として水難事故防止の技術の啓発を行う。

海のレジャーでは、『遊泳禁止』と書いてある場所では絶対に遊ばない。その上で、たとえ監視員や地域の人の見守りがある海水浴場でも、「過信しない」ことが重要なのだとか。

「例えば、浮き輪を使って泳いでいても、穴が開くなど、何かの拍子に空気が抜けてしまうことがあります。予想していなかったことが起こりうるという危機感を常に持ち、家族や同行者と互いに目の届く距離にいて、異変があったらすぐに気づけるようにしましょう」

また、子どもの事故は海よりも川で多く発生する傾向にあるので、川遊びは特に注意が必要です、と佐藤さん。

「川は、海に比べて浮力がなく沈みやすいです。また、川底が急に深くなったり、流れの速さが川の中央・外側・曲がり角で変化したりと、さまざまな危険がある上に、倒木や岩などの障害物もあります。川でも海でも、水に落ちたり、流されたりした場合には、落ち着いて浮き身の姿勢をとり、無理に泳がず浮いて救助を待ちましょう」

この時、ライフジャケットを着ていれば、浮き身=仰向けの姿勢も無理なくできます。川であれば両足を下流に向け(岩などに頭がぶつかるのを防ぐため)、海であれば両足を岩場の方に向けて膝を曲げ、足を水面近くにあげて、けがを防ぐようにします。

では、水辺で溺れている人を見つけた場合の救助で気をつけることは?

自ら水に入って助けに行くことはしないでください。救助者自身の安全を確保し、二次事故を防ぐことが原則です。それを踏まえた上で、最初に行うのは、周囲の人に知らせ、人を集めること。そして、川なら119番、海で沖に流されたなら118番に通報して助けを呼びましょう。救急隊が来るまでに、ペットボトルなど、浮き具の代わりになる物を使って救助を必要としている人の呼吸を確保することが重要です」

救助者は、溺れた人に声を掛け、落ち着かせることも大切。慌てずに浮いて待つよう、呼びかけましょう。

*118番:海上保安庁の緊急通報用電話番号

プールや海での講習とは?

ライフジャケット

水上安全法 Web講習

水辺で、命を守るために

いざというとき、自分とまわりの人の命を守るためにできることとは?
京都府支部で行われた水上安全法講習の事例から、その行動のポイントをご紹介します。

水に浮かぶ技術、
ライフジャケットについて

Q1

溺れている人がどこにいるか分かりますか?

ゾーンA・B・Cに分けたプールの写真

(正解はB。左から縦のライン3本目の付近に子どもの人形が沈んでいます)

選択肢

  • A:ゾーン🅐の中央
  • B:ゾーン🅑の上部
  • C:ゾーン🅒の中央

解説

「助けてー!」の声が聞こえないことも

「溺れる」というと、水面で両手をバシャバシャとしながら大声で助けを呼ぶ人をイメージするかもしれません。しかし、実際は声も出せずに短時間で水没するケースが多いのです。さらには、上の写真のように、どこに人が沈んでいるのか、ひと目では判断しづらいもの。「溺れる人を出さないこと」を大前提に、水遊びでは2人1組の「バディ」を意識し、常にお互いの安全を確認しましょう。

Q2

自分が溺れてしまったら、まずどうする?

溺れそう、もうダメだ!!

選択肢

  • A:浮いて呼吸を確保する
  • B:全力で泳ぐ
  • C:浮く物を使う

解説

(正解はAとC)

泳がず、まずは呼吸を確保する

溺れてしまったとき、体力を消耗すると、水没につながります。無理に泳がず、自然に体が水に浮く「浮き身」を取って救助を待ちましょう。口と鼻さえ水面に出ていれば、呼吸が確保できます。川や海で流されたなら、両足は流される方向に向けて。靴や服を身につけている場合は、脱がずにそのまま浮く姿勢をとります。スニーカーなどは浮力がありますし、服は空気を溜めることができる上に、体の保温とケガ防止にも効果を発揮します。

Q3

溺れている人を見つけたら、どうする?

助けないと! どうしよう!?

選択肢

  • A:すぐに水に入り、浮くように支える
  • B:長い棒や浮く物を探す
  • C:周囲に大声で知らせる

解説

(正解はBとC)

水に入らず、助ける方法を考える

溺れた人を泳いで助けに行くことは、大きな危険を伴います。必ず自分の安全は確保し、二次被害(事故)を起こさないことが大切です。いち早く周囲の人に知らせて協力を求め、沖に流されていたら118番に通報しましょう。浮力のある物や棒、ロープなどを使って、水に入らないで助ける方法を考え、溺れている人が早くそれらをつかめるようにします。溺れて気が動転していると救助が難しくなるので、陸から声をかけて落ち着かせましょう。

コメント

長尾 一美さん

京都府支部
水上安全法指導員(ボランティア)
長尾 一美(ながお かずみ)さん

水上安全法講習では、溺れている人を救助する方法だけでなく、衣服を着た状態で水に落ちたときに救助を待つ「着衣泳」を行っています。流れのないプールの水でも、ただ浮いて待つことは難しいものですが、川や海では水面が動くので、口や鼻から水が入り、より一層、呼吸を確保することが困難です。その場合に有効な「エレメンタリーバックストローク」も練習します。これは浮き身の状態でゆっくりと手足を広げる・閉じるを繰り返すことで推進力が得られ、何もしないよりも浮くことができる技法です。泳げない方でも溺れない方法を学べる講習なので、泳げなくても参加が可能です。

着衣泳の様子
水上安全法講習の様子