血液型の種類は、よく知られている「ABO」や「Rhプラス/マイナス」の他にも数多くあり、現在は40種類以上の血液型が認定されています。血液型は、血液中の赤血球の表面にある、抗原(さまざまなタンパク質や糖)の種類や組合せによって決定されます。輸血を受ける前には、血液型の判定検査が行われますが、安全な輸血のために、もう一つ欠かせない事前検査があります。それが、「不規則抗体検査」です。これは、輸血を受ける人の血液に、特殊な抗体(不規則抗体)が含まれていないかを調べる検査です。
もし、不規則抗体が患者の血中にあり、輸血された血球の抗原と反応すると、赤血球が破壊される「溶血」が起こることがあります。これを防ぐため、患者から血液を少し取り、さまざまな血液型の赤血球と反応させる検査をします。この検査には、入手が難しい、まれな血液の血球が必要になることも。そこで日赤中央血液研究所の船戸興自さんが取り組んだのが、「血液細胞の遺伝子を書き換えて“まれな型の血球”を作り出す」研究でした。
船戸さんは、「現在は、実際にその血球(血液型)を持つ方の血液を確保して検査を行っています。でも、非常に珍しい血液型の血球は入手自体が難しい。そこで、不規則抗体検査に使いやすいように、血球の細胞が最終的な状態になる前に成長を止め(不死化させ)、血球の表面の遺伝子を書き換え、まれな血液型の細胞を作製しました。しかも、無限に細胞を増やすことができるので、血球の試薬として広く活用できる可能性が見えてきました」と話します。
この研究の成功、実は世界中の研究者を驚かせるものでした。成果をまとめた論文は国際的な学術専門誌『haematologica』に掲載され、表紙も飾りました。国際学会で発表した際には、座長から「こういう(血液型改変)細胞が作れたことは、非常に素晴らしい!」と声をかけられたといいます。
船戸さんの研究成果が専門誌の表紙に!
船戸さんは、「単なる検査というだけではなく、自分たちで血球をデザインできる可能性を示せました。輸血医療に貢献する成果が出てきた、と感じます」と振り返ります。
輸血の安全を支えるため、日赤の研究室では今日も、小さな細胞と向き合う研究が続いています。
