【WORLD NEWS】 インドネシア防災強化事業 インドネシア赤×日赤

スマトラ島 現地派遣の日赤看護師が見た、
甚大で深刻な洪水被害と防災・減災の課題

何が起こったの?

インドネシア赤は発災直後から救援活動を行い、きれいな水の供給や保健医療、生活再建支援など、さまざまな支援を続ける

日赤がインドネシア赤十字社(以下、インドネシア赤)と協力してジャワ島における防災事業を進める中で、海峡を挟んで隣り合うスマトラ島で発生した洪水被害。2025年11月から2026年3月までインドネシア現地代表部(ジャワ島/ジャカルタ)に派遣されていた大阪赤十字病院の新井暢(あらい のどか)助産師・看護師は、発災直後に急きょアセスメント(現地調査)のために被災地のスマトラ島を訪れたときの状況をこう振り返ります。

「孤立する集落もあり、車両移動が困難な場合には、支援者たちは徒歩や船で現地入りしました。家屋や農地は流失・埋没し、避難所もプライバシーや衛生環境が十分とはいえない状況。住民からは、『雨が降ると恐怖で眠れない』『家を失って何も残っていない』など悲痛な声も聞かれました」

2004年にスマトラ島沖で発生した大地震とその津波を経験した人々は、この被害を「第二の津波」と語ったそう。「人々が支え合いながら懸命に生活を立て直そうとする姿が強く印象に残りましたが、一方で、『災害が起きてからの支援だけでは足りない』ということも痛感しました」と新井さん。

被災地で得た気づき

  • 防災・減災の知識や備えがあれば、防げたかもしれない被害があった。(任地の)隣の島の凄惨な被災地に立ち、平時からの防災教育や備えの積み重ねの大切さを改めて実感した。

大阪赤十字病院 助産師・看護師

新井 暢

洪水後、水が引かず泥水が残る地域では、長靴を持たない住民がはだしで歩く姿も(スマトラ島 アチェ州ピディジャヤ)

ジャワ島 未来の命を守る、
「自分ごと」の防災へ

インドネシアの地図

2020年から続く、2国間防災事業

日赤は、インドネシア赤と共に、2020年から学校と地域のレジリエンス強化のための防災事業を実施。災害大国である同国の中でも巨大地震リスクが指摘されるジャワ島において、2020〜2023年にはケブメン県(中部ジャワ州)とマラン県(東部ジャワ州)を対象に、2024年11月からは、スカブミ県(西部ジャワ州)とジャンバル県(東部ジャワ州)を対象にこれまでに396人の教員が赤十字の防災教育研修で指導法を習得し、延べ730人の生徒に防災授業が実施されています。

日赤とインドネシア赤は、「備える力」を高めるためのアプローチを進めています。今年1月には、事業地において大きな防災・減災イベントが行われ、スカブミ県とジャンバル県から合わせて20校、約1万人の生徒と教員が参加しました。災害に関する授業、防災大使の選出、啓発ポスターや動画制作などの防災・減災キャンペーン、避難訓練の4要素で構成されたこのイベントでは、学校では先生たちが、地域ではボランティアが準備・運営の主体になっています。

避難訓練に参加する学生
避難訓練に参加する学生

現地支援にあたった新井さんは「支援する人が前に立つのではなく、現場の人たちが前に出る姿を見たとき、私の中の『支える/支えられる』という固定概念が揺さぶられました。学校では教室中に活気があふれ、『地震はなぜ起きるのか』『そのとき自分はどう動くべきか』という問いに、生徒たちが次々と考えを書き出します。それはまさに、命に関わる“真剣な学び”。私の胸に、小さくても確かな希望が灯りました」と語ります。学校や地域が主体となって取り組むことで、“形式的だった訓練”が“日常的な確認”へ変わりつつあります。これからも、地域のレジリエンス向上を目指して支援は続きます。

防災を啓発するポスターを制作中の生徒(右から2人目が新井さん)

©インドネシア赤十字社

防災を啓発するポスターを制作中の生徒(右から2人目が新井さん)

防災力を高める取り組み強化へ

  • 教員向けの防災教育研修など
    学校防災の推進
  • 地域の防災ボランティアチーム結成による
    村落防災強化
  • 学校・村落・自治体が一体となった
    防災力の底上げ

VOICE

考え、動き、見直す。生徒たちに芽生えた防災意識

赤十字スタッフと打ち合せをするスチ先生

©インドネシア赤十字社

赤十字スタッフと打ち合せをするスチ先生(右から2番目)

スカブミ県 学校教師

スチ さん

以前は、防災訓練は「形式的なもの」として受け止められることが多かったように思いますが、今では生徒たち自ら友人を誘って参加したり、非常用持ち出し袋について質問したり、主体的に動く姿が見られます。学校全体でも、役割分担が明確になり、避難経路や集合場所の確認も日常的に行われています。知識が行動に移り、改善点を洗い出して解決していくーその循環が出来つつあります。

「いまも続く支援」

この取り組みは、いまも現地で続いています。
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