海外派遣の現場から パプアニューギニア篇

世界の現場で出会った人々とのふれあい、その土地でしか感じられない息づかい。赤十字の国際要員たちが見た、笑顔や驚き、そして心に残る瞬間をお届けします。

日赤 国際要員の派遣先と人数

世界191の国と地域に広がる赤十字ネットワークを基盤に、スペシャリストを各地へ派遣しています

🅐
スイス
6人

🅑
ウクライナ
19人

🅒
トルコ
1人

🅓
パレスチナ
5人

🅔
エジプト
4人

🅕
シエラレオネ
13人

🅖
シリア
3人

🅗
レバノン
18人

🅘
ルワンダ
6人

🅙
アフガニスタン
1人

🅚
パキスタン
1人

🅛
バングラデシュ
21人

🅜
インドネシア
4人

🅝
モンゴル
4人

🅞
ミャンマー
7人

🅟
タイ
4人

🅠
マレーシア
7人

🅡
パプアニューギニア
3人

🅢
バヌアツ
1人

🅣
フィジー
1人

算出期間

2023年4月1日~
2025年10月31日

延べ派遣人数

129人
(リモート派遣含む)

派遣形態

二国間・連盟・
JICA派遣含む

日赤は、世界191の国と地域に広がる赤十字のネットワークを生かし、資金や物資の支援にとどまらず、医師・看護師・プロジェクト管理担当などを現地へ派遣、地域に根差した人道支援活動を展開しています。

世界各地に派遣される「国際救援・開発協力要員(国際要員)」は、赤十字独自の研修を修了し登録された専門人材。活動の領域は、自然災害や感染症流行時の医療支援、衛生教育の普及、地域の防災力向上など、多岐にわたります。

今回から始まる新連載 『海外派遣の現場から』では、世界各地で活動している日赤の国際要員が、現地の食や文化、人々との交流を通じて感じたことなど、活動の舞台裏を紹介

第1回目は、太平洋の島国・パプアニューギニアから。生命力あふれる文化と豊かな自然、そして人々のあたたかな笑顔に包まれた国での活動を、北原一希さんが振り返ります。

北原一希さん
北原一希さん

北海道から南下したところ、オーストラリアの北東に位置する島国、パプアニューギニア(以下、PNG)。日本の国土の約1.25倍の広さを持ち、大小600以上の島々から成る自然豊かな国です。熱帯雨林には、国旗にも描かれている極楽鳥をはじめ、ヒクイドリや木登りカンガルー、羽を広げると30センチを超えるアレクサンドラトリバネアゲハなど、多様な生き物が暮らしています。

機内から見たPNGの国土
機内から見たPNGの国土。見渡す限りどこまでも、肥沃な緑の大地が広がっていました!
極楽鳥
極楽鳥

一方で、首都ポートモレスビーの生活は決して楽ではありません。道路には穴が多く、渋滞もしばしば。停電も一日に何度も起こります。治安の面でも注意が必要で、私が暮らしていたアパートでは一人で敷地外に出ることが禁じられていました。安全上の理由から、通勤も買い物も送迎車での移動です。それでも、街ですれ違う人々はいつも笑顔で、手を振ってくれる。その明るさに、何度も救われました。

私は、パプアニューギニア赤十字社、そして同じ敷地内にあるIFRC(国際赤十字・赤新月社連盟)パプアニューギニア国事務所で、現地スタッフとともに事業や財務、総務のサポートを担当しました。英語の資料やメールに苦戦しながらも、少しずつ理解が深まり、彼らとの距離が近づいていくのを感じました。

印象に残っているのは、独立記念日にスタッフたちが準備してくれた伝統料理「ムームー」です。前夜から事務所裏で穴を掘り、早朝に石を焼いて、バナナの葉を重ね、カウカウ(甘い芋)やマリネした豚肉を入れて蒸し焼きにします。豚はスタッフの親戚が山で狩ってきた野生のもの。手を脂で光らせながら笑いあい、焼き芋や野菜をほおばる―心から、大地に「ありがとう」と感謝したくなる雄大な味でした。

多様な文化と、時に厳しい現実。その両方がこの国の姿です。派遣を終えた今も、あの笑顔と大地の匂いが、心の中で静かに息づいています。

独立50周年記念日を祝う 部族の民族衣装をまとって独立50周年記念日を祝う。羽根飾りを被っているのが北原さん
ムームーの準備 伝統料理「ムームー」の準備をするスタッフたち