
北海道から南下したところ、オーストラリアの北東に位置する島国、パプアニューギニア(以下、PNG)。日本の国土の約1.25倍の広さを持ち、大小600以上の島々から成る自然豊かな国です。熱帯雨林には、国旗にも描かれている極楽鳥をはじめ、ヒクイドリや木登りカンガルー、羽を広げると30センチを超えるアレクサンドラトリバネアゲハなど、多様な生き物が暮らしています。


一方で、首都ポートモレスビーの生活は決して楽ではありません。道路には穴が多く、渋滞もしばしば。停電も一日に何度も起こります。治安の面でも注意が必要で、私が暮らしていたアパートでは一人で敷地外に出ることが禁じられていました。安全上の理由から、通勤も買い物も送迎車での移動です。それでも、街ですれ違う人々はいつも笑顔で、手を振ってくれる。その明るさに、何度も救われました。
私は、パプアニューギニア赤十字社、そして同じ敷地内にあるIFRC(国際赤十字・赤新月社連盟)パプアニューギニア国事務所で、現地スタッフとともに事業や財務、総務のサポートを担当しました。英語の資料やメールに苦戦しながらも、少しずつ理解が深まり、彼らとの距離が近づいていくのを感じました。
印象に残っているのは、独立記念日にスタッフたちが準備してくれた伝統料理「ムームー」です。前夜から事務所裏で穴を掘り、早朝に石を焼いて、バナナの葉を重ね、カウカウ(甘い芋)やマリネした豚肉を入れて蒸し焼きにします。豚はスタッフの親戚が山で狩ってきた野生のもの。手を脂で光らせながら笑いあい、焼き芋や野菜をほおばる―心から、大地に「ありがとう」と感謝したくなる雄大な味でした。
多様な文化と、時に厳しい現実。その両方がこの国の姿です。派遣を終えた今も、あの笑顔と大地の匂いが、心の中で静かに息づいています。
