白血病などの血液疾患で苦しむ人を助けるために「骨髄バンク」があることは、広く知られています。これは、健康な人が骨髄などから血液を造る細胞(造血幹細胞)を提供する仕組みですが、提供者に一定の負担がかかります。一方で、「さい帯血バンク」という仕組みをご存じでしょうか? これは、お母さんと赤ちゃんをつなぐへその緒(さい帯)と胎盤に含まれる血液を使い、治療に役立てるもの。
さい帯血は、出産後に廃棄されるさい帯と胎盤から採取できるため、提供者に負担がかからないのが利点です。さらに、さい帯血移植はドナーと白血球(HLA)型の不一致が骨髄バンクを介した移植よりも許容できるため、ほぼ全ての患者に適合するさい帯血を見つけることができます。全国6カ所のさい帯血バンクのうち、日赤はその内4カ所のさい帯血バンクを運営しています。日赤の血液事業本部、東史啓さんは次のように話します。
「血液疾患は骨髄の中にある造血幹細胞が正常に赤血球、白血球、血小板を造れなくなる病気で、造血幹細胞移植を必要とする場合があります。さい帯血には、この造血幹細胞が多く含まれています。母子の安全が最優先となる出産において、移植用さい帯血の採取は協力産院の技術と、何より『移植を必要とする患者さんを救いたい』という熱意によって支えられています。さい帯血バンクはまだまだ認知度が低く、協力産院でのお声がけで初めて知る妊婦さんが多いことから、日赤では普及啓発に取り組んでいるほか、採取技術の高い施設の先生をお招きして研修会を実施したり、バンク職員による採取施設への訪問回数を増やすなど連携強化に向けて取り組んでいます。さい帯血バンクがより社会に浸透し、少子高齢化社会にあっても安定的に採取・供給することができれば、将来にわたって多くの命を救うことにつながる、と考えています」

