10月13日に閉幕した大阪・関西万博。記録的な猛暑が続く中、予約キャンセル待ちの長い列は途切れることがなく、パビリオンスタッフとして全国から参集した日赤職員・ボランティアは一致団結して、より多くの方に感動を届ける運営に尽力しました。日赤本社の万博推進室メンバーの感謝の声を一部ご紹介します。
【LIVE 万博パビリオン】vol.7 感謝で心がふるえた!感動のフィナーレ

来館者数(人)
31万33人
メッセージ投稿数
9万536通
特設サイトの訪問者数
148万1278人
日赤職員から感謝の声

岡山 晃久
(おかやま あきひさ)館長
ご来館くださった31万人のお客さま、支えてくださった関係者の皆さま、そしてパビリオンに携わった全ての日赤職員・ボランティアに、心より感謝をお伝えしたい。
次に日本で国際博覧会(万博)が開かれるのがいつになるのかは分かりません。もしかするともう二度とないかもしれません。
しかし今回の出展を通じて、150年以上前に佐野常民がパリ万博で受けた衝撃と、「苦しんでいる人を救いたい」という志が、未来へと受け継がれていくことを願っております。
184日間という限られた時間ではありましたが、赤十字パビリオン館長という稀有(けう)な役職を全うできたことに安堵するとともに、種々のご支援をいただいた皆さまに心より感謝申し上げます。


山田 一郎 (やまだ いちろう)
日本赤十字社 大阪・関西万博推進室長
「赤十字が万博に出展する意味は?」—— 万博期間中にマスコミの取材時によく聞かれた質問です。一般の来場者も「なぜ赤十字が万博に?」という疑問を持たれた方が多かったのではないでしょうか?万博は明るい未来を語る場所であると同時に、今世界で起こっている現実の課題にも目を向ける必要がある。逆に、それに目を背けて未来を語ることはできない。その役割が赤十字パビリオンにはある、ということを答えてきました。
万博にお祭り気分で楽しさを求めてやって来られる方が多い中、「まさか万博で泣かされるとは・・・」というような来館者の感想にもあるように赤十字パビリオンは意外な場所であったかと思います。それと同時に「命の大切さや生きる意味を考えさせてくれるパビリオン」「今後の生き方や考え方に大きな影響を与えるパビリオン」「生きていく中で一番大切な事を改めて教えてもらったパビリオン」「万博で一番意味のあるパビリオン」など異口同音にお勧めコメントをSNSでもたくさん投稿いただきました。意外な場所である以上に、人にとって大切なことを伝えるパビリオンとして存在できたのではないかと思います。
実際にパビリオンでも、シアターから目を潤ませながら出てくる人、映像の上映後に湧き起こる拍手、メッセージを投稿する多くの人、帰り際に「よかったわー」「すごい感動した」とスタッフに声をかけてくれる人… 日々、このような風景を目にし、我々の伝えたい事は間違いなく届いているということを確信しました。「感動した」ということもよく言われましたが、実のところは、誰しもが心の中にある人道の存在に気づきその扉を開けた結果なのだと思います。
今回の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。「いのち」にかかわる趣向を凝らした演出が各パビリオンで展開されていましたが、そのことをストレートに訴え、またそれを真剣に考えるきっかけが赤十字パビリオンにはあったからこそ、数あるパビリオンの中で多くの人の心を捉えたのではないかと思います。
万博でひろがった人道の輪は、これからもまだまだ広がっていく…そう確信できた184日間でした。

齊藤 彰彦 (さいとう あきひこ)
日本赤十字社 大阪・関西万博推進室
まず最初に、そして一番にお伝えしたいのは、お越しいただいた方々への「感謝」の気持ちです。
一度訪れた方が家族、友人、知人を誘って再訪いただいた例もたくさんありました。 また来場者アンケートも1万4500件以上に達し、たくさんの励みになる言葉、ご自身も何かやってみたいと思えた、などのお言葉をいただきました。準備した側としてこれ以上うれしいことはありません。
今回、パビリオン運営に携わった全国の赤十字スタッフ自身からも赤十字職員・ボランティアとしてのアイデンティティを再確認できた、自身の活動を誇らしく思えた、などのポジティブな言葉が多く寄せられました。日赤の仕事はどれも専門的ですが、普段の自身の専門性をこえ、赤十字の根っこの部分の精神を伝える側に立ったことで、自らの仕事の意義を再認識されたのかもしれない、とうれしく感じました。
一般の来館者、赤十字の関係者、それぞれからお寄せいただいた声をいくつか振り返ると、親御さんや学校教師をされている方々から「ぜひ子供たちに見せたい」といった言葉も非常に多くありました。「人間を救うのは、人間だ。」の精神が次の世代にも伝わってほしいという願いは、赤十字でなくとも時代や国をこえ、人間が誰しも持っている本能的な想いなのだと再確認できました。
他方で、感想の言葉の中には「自分にできることは限られている」、という方もいましたが、ある来場者の方が「まずは自分の家族や身近な人にやさしく接しようと思えました」といわれていたのが印象に残っています。
紛争や災害でなくとも人道の精神は身近な人へのやさしい気持ちからはじまるもの。
「まずは身近な人にやさしく」、そうした気持ちを持ってもらえたのであれば、また、それを子どもの頃から自然に持つことができるなら(大人がそうなら子どももそうなるはず)、赤十字パビリオンの存在意義も間違いなくあったといえるかなと思えました。

菅井 智 (すがい さとし) 【写真中央】
日本赤十字社 大阪・関西万博推進室
6か月間、パビリオンのメッセージウオールに書かれる来館者の言葉をずっと見て来て、どの言葉も全て素晴らしく、改めて人道が何かを考えてもらえたことや、明日から何かをやってみたいと背中を押すことができたことは間違いなくパビリオンの成果だと感じました。
私も40年間、国内外での赤十字活動に関わる中で、仕事上だけではなく、家庭で、また地域の日常生活の中でメッセージウオールに書かれているようなことを考えつつ生きてきました。一方で、そうは思っていても、自分自身の行動を振り返ると、必ずしもそれを実践できていない自分がいるのに気づき落ち込むことがあります。赤十字が求める人道とは個人的には宗教のようなものであると思っていて、仕事上はもちろん、仕事を離れて日常生活の中でも、理想としてそれを目指すのが望ましいと考えて来ました。けれども、社会や世界のありように心が乱されたり疑念や怒りが湧いてきたりということが、つい起こるのです。
第二次世界大戦後に青少年赤十字活動を復興させた大先輩が、赤十字の目指す人道とは、赤十字が新たに作り上げたものではなく、古来の宗教の中にもある「汝の隣人を愛せ」「自他一如」などと通じるものであり、人の心の中にもともとあるものを赤十字が呼び起こさせることが仕事、と話されていました。今回の大阪・関西万博で、某・大人気パビリオンの運営スタッフの方が、僧侶の方々を連れて当館に来館されました。最後にその方々と上述の話をしたときに、「僧侶もあなたと全く同じ思いです。ゆえに日々理想に近づけるように修行しているのです。」との言葉をいただき、個人的に救われた気持ちになりました。
もともと人の中にある人道の種にぽっと火を点け、それがだんだんと燃え上がるようにするのが赤十字の仕事であると改めて気づかされる6か月間でした。
土橋 晶子 (つちはし あきこ) 【写真右】
日本赤十字社 大阪・関西万博推進室
私たちのパビリオンのスタッフは全員、普段から赤十字の活動に携わるボランティアと職員だということが、他パビリオンと差別化する特徴のひとつでした。早番・遅番の2交替制で、毎日30人以上の、職種も年齢も、そして勤務施設(日赤支部、血液センター、病院など)も異なる、さまざまなスタッフが全国各地から参加し、唯一無二のパビリオンが完成しました。
数日毎に交代するスタッフによって半年間毎日パビリオンの営業を続けられたことは、振り返ると奇跡のようにも感じますが、一人一人のスタッフの懸命な取り組みの結果です。皆が来場者に喜ばれるパビリオンにしようと考えて、清掃やセッティングに汗を流したり、来館者への分かりやすい案内に知恵を絞ったり、スタッフ同士が協力しあったりして、次に来るスタッフへつなげていました。急病人の発生や急なスタッフの欠員、落雷警報のある悪天候や夏の過酷な暑さなどの難しい状況も、地元大阪と近畿地区の支部などの力強い協力とスタッフの知恵と努力と献身で乗り切りました。そして、一人一人のスタッフのバックには送り出した職場やご家庭の支えがありました。
来場者アンケートでは、スタッフの対応が親切で感じがよかった、丁寧に質問に答えてくれたなどの好意的なコメントが多くあり、皆の取り組みが来場者に届いていたことがうれしいです。
国際赤十字・赤新月運動館のスローガンは「人間を救うのは、人間だ。The power of humanity」でしたが、パビリオン自体が人の支えによって運営され、身近なところにある人の力を実感できる場所だったと思います。私も万博での勤務中、どれほどスタッフに助けられ、来館者の言葉に励まされたか分かりません。そして、自分には何ができるか、できることをしようと考えました。国際赤十字・赤新月運動館での体験と出会いが、多くの皆さんにとって自分にできることを考えて行動するきっかけになり、さらにその先に広がっていくことを期待しています。
橋本 明乃 (はしもと あきの) 【写真左】
日本赤十字社 大阪・関西万博推進室
来館者の皆さんと一緒に「人間を救うのは、人間だ。」を考えることができた6か月間。
パビリオンで来館者と直接お話しできたことは何よりも素敵な時間で、沢山のエネルギーを頂きました。 真剣な眼差しで「自分にできることは何かありますか」と話してくれた方、「少しでも力になりたいからグッズを買いたい!」と立ち寄ってくださった方、「これを機に献血を始めてみたい」と実際に行動に移す勇気を持ってくれた方、「娘の一番お気に入りのパビリオンで3回目です」と何度も赤十字パビリオンに足を運んでくださった方。
他にも、メッセージウォールに寄せられた言葉やSNS投稿など、日々、来館者からいただくすべてのメッセージをひとつずつ、大切に読みました。一人ひとりの想いのこもった言葉やメッセージにどれほど救われたことかわかりません。
皆さんの想いを力に変えて、私自身も、日々「自分にできること」を考えて、行動に移すことを続けていきたいです。