【WORLD NEWS】[8.19 世界人道デー]「人を守る人」を守ろう

2024年から今夏にかけて、赤十字の人道支援活動中に命を落とした職員およびボランティアは合計50人。国際赤十字と各国赤十字・赤新月社は、人道支援活動が大きな危険にさらされている現状を危惧し、8月19日の世界人道デーに合わせてメッセージを発信しました。今回は、殉職した赤十字の仲間についてお伝えすると共に、その友人の声もお届けします。

ジュネーブ国連本部で追悼式 国際赤十字もメッセージを発信

2003年8月19日にイラク・バグダッドの国連事務所本部が爆撃され、人道支援関係者22人が命を落としたのを機に、国連はこの日を「世界人道デー(World Humanitarian Day)」と定めています。今年、国連は世界人道デーに、ジュネーブ本部で追悼式を開催。職務遂行中に犠牲となった人々を追悼し、人道支援者の貢献を称えました。

国際赤十字もまた、世界人道デーに合わせて公開されたWEBサイトで、赤十字の活動中に命を落とした仲間を悼み、その人物像や友人の声を届けました。
今年6月、紛争が激化するイランで活動していたイラン赤新月社(以下、イラン赤)のキアヌシュ・ファラヒさんは、捜索救助犬の調教師として、救助犬・ジロと一緒にテヘラン西部で救援活動中に、仲間が犠牲となる場に居合わせました。

建物の瓦礫の下に閉じ込められている生存者を捜す、キアヌシュ・ファラヒ氏と救助犬ジロ

「救援活動中にも空爆があり、私たちは強力な衝撃波に揺さぶられました。私は怖がるジロを安全な場所に移動させ、救援活動を続けました。高速道路沿いに仲間の救急車が停車し、仲の良い同僚のモジタバ・マレキともう一人の同僚が車の近くに立っていました。私は彼らに挨拶し、歩み寄ろうとした瞬間に爆風に投げ出されました。その救急車が攻撃を受けたのです。私はやっとの思いで立ち上がり救急車に駆け寄りましたが、モジダバの姿を見つけることはできませんでした。私はただただそこに立ち尽くし、泣くしかありませんでした」

このとき攻撃を受けた赤新月社の救急車は、紛争で死亡した救急隊員を追悼するために、今でもテヘランの中央広場に置かれています。国際人道法では、医療施設、救急車、医療・人道支援要員を攻撃することは重大な違反とされ、保護するべき対象であると示すためにジュネーブ条約で定められた赤十字・赤新月の標章(マーク)を掲げます。攻撃された救急車は車体に赤新月の標章が大きく表示されていました。

テヘラン中心広場に展示されている、攻撃を受けた赤新月社の救急車と、犠牲になった救急隊員のポートレート

人道支援継続の危機 「人を守る人」を守ろう

6月はモジダバ・マレキさんの他にも、立て続けに4人のイラン赤スタッフとボランティアが人道支援中に犠牲になりました。彼らは、武器を持たず、担架や医療キット、そして、人々の希望を運んでいました。また他の地域でも、この1年ほどの間に、次のような方々が犠牲になりました。

オマル・マンスール・
イスリーム
さん

所属:ガザ地区・パレスチナ赤新月社

活動内容

ガザの住民への医療・救急支援

状況

2024年8月、赤新月標章を掲げたパレスチナ赤新月社の建物が夜間攻撃を受け、死亡。

イマン・アッバスさん

所属:スーダン赤新月社

活動内容

避難民の衛生改善支援

状況

2024年2月、市場で清掃ボランティア中に砲撃を受けて死亡。

アト・ホネレグン・
フェンタフン
さん

所属:エチオピア赤十字社

活動内容

救急搬送

状況

2024年8月、救急車で搬送中に武装集団に拉致され、解放後に病院で死亡。

2024年に最も多い18人の犠牲者を出したのは、ガザ地区で避難民の救助活動を行うパレスチナ赤新月社でした。次がスーダン赤新月社で、激しい紛争により8人のボランティアが命を落としました。スーダンでは8700人以上の赤新月ボランティアが紛争下で負傷者の救助や避難支援に従事し、命の危険にさらされながら活動しています。

また、今年になってからは、3月にガザ地区でパレスチナ赤新月社の救急隊員が銃撃されました。保護の標章=赤新月マークを付けた救急車で負傷者を搬送中に実行され、救急隊員8人が死亡しました。このガザでの攻撃に対し、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)と赤十字国際委員会(ICRC)は共同声明を発表し、「人道支援従事者への攻撃は、救いを求めるコミュニティへの攻撃である」と強く非難しました。

国連の報告によると、2025年現在、世界中で人道支援を必要とする人の数は3億500万人にも上ります。人道支援に従事する人々が犠牲になることによって活動が継続できず、支援を必要とする多くの人々が絶望の淵に立たされることがないよう、赤十字はこれからも、人道支援者の安全と保護強く求めるとともに、広く連帯を呼びかけていきます。

避難民支援をするスーダンのボランティアは「傷だらけの人、子を失った親、つらい話ばかりです」と語る