"命を救う"を伝え続けた 99年目の「救急法」イベント開催

救急法は「一般の人が、命を失いかけている人を救助する」ために誕生しました。それは、戦争で赤十字が誕生したことと志が同じです。日本において救急法が形になったのは、1887年、帝国大学医学生が、隅田川で溺れた学生を救えなかった悔しさから、ドイツ軍医による教本『普通救急新法』を日本語に訳したことが始まりです。

日赤では、1926年に戦争や災害救護で蓄積した救命のノウハウを一般市民に普及することで、一人でも多くの命を救うことを目的に、救急法を含む「衛生講習会」を開始。現在までに2071万人以上(令和7年3月31日現在)が受講しています。来年、救急法普及100周年を迎え、今年が「99(きゅうきゅう)年目」にあたることから、赤十字の救急法指導の変遷を振り返り、改めて一次救命処置の重要性を啓発するイベントが順次開催されます。

9月8日には、救急法にまつわるさまざまな講演を日赤本社で実施。「赤十字救急法の今と昔」の体験会では、救急法のベテラン指導員が現在の人工呼吸「マウス・ツー・マウス法」の手本を示した後、かつて行われていた「シルベスター法」や「ニールセン法」といった人工呼吸についても実演。参加した看護学生が救助役と救助される役に分かれて実践し、救助される役の学生からは「想像していたよりも、呼吸が促されて肺に空気が入る感じがした」といった声が聞かれました。

この他、夏祭りで心肺停止になった男性を救った赤十字ボランティアの手に汗握る救命体験談や、武蔵野赤十字病院の救急医・鈴木秀鷹医師による講演「救える命をつなぐために~救急医が伝える一次救命処置の力~」などを通じて、あらためて人を救う原点に立ち、救急法の大切さを見つめ直す機会となりました。

9月9日の「救急の日」に合わせ、赤十字 WEBミュージアムでは特別企画「99年目の救急法〜赤十字救急法講習のあゆみ〜」を公開。11月4日から、日赤本社1階の赤十字情報プラザで始まる企画展に先駆けて、赤十字救急法が生まれた契機やこれまでを振り返る数々の資料をご覧いただけます。

人工呼吸の今と昔

[現在の赤十字救急法は、胸骨圧迫やAEDの使い方を含む一次救命処置や止血の仕方などの応急手当の基本を広く普及しています。]

現在では、口から肺に空気を送りこむマウス・ツー・マウス法が採用されています

溺れた人がいた場合、胃に水が入っていて吐くことがあるため、すぐにうつぶせにして「ニールセン法」を行っていました

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救助者は、ひじを伸ばしたまま腕が垂直になるまで腰をあげて、体を前にのり出し体重をかけ、肺から息を吐き出すことを促す。腰をさげながらパッと両手をはなし、両脇からすべらせながら両ひじをつかむ

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つかんだ両ひじを持ちあげながら、胸を開くようにひっぱり、肺に空気が入り込むことを促す

「99年目の救急法」
WEB特別企画、公開中!