【WORLD NEWS】内戦下の大地震、赤十字のミャンマー支援

ミャンマーにおいては、今回の地震が起こる前から、300万人以上の人々が紛争によって住む場所を失い国内避難民となるなど、大きな人道支援のニーズが存在していました。
地震によってさらなる苦境に立たされた人々に対し、ミャンマー赤は、国際赤十字・赤新月社連盟（IFRC）や赤十字国際委員会（ICRC）、日赤を含む各国赤十字姉妹社と共に、発災直後から被災地に寄り添う支援を行ってきました。

このような生活支援に加えて、医療支援のニーズも高まっています。紛争により十分な医療が提供されない状況が長く続いたうえ、地震が追い打ちをかけ、190ほどあった医療施設の多くが機能不全に陥りました。
従来より人道支援ニーズが高いミャンマーにおいて、ミャンマー赤は地震発生前から巡回診療チームを各地に編成し、活動してきました。また、多くのボランティアも、この診療チームのサポートに参加しています。

巡回診療のため屋外に設置された診療所

今回の地震でも、被災地であるサガインなどにおいて巡回診療を行っていますが、月曜日から土曜日まで診療し、唯一の休日である日曜日も、医師が中心となって、ボランティアに向けて血圧・血糖測定の知識や手順などのトレーニングを行い、休むこともままなりません。
ボランティアも被災者で、中にはテント生活をしながら支援活動をするメンバーもいますが、「自分もつらいけれど、周りはもっとつらい思いをしているから、頑張らないと」と、自らを奮い立たせて活動を続けています。

日赤では、ミャンマー赤およびＩＦＲＣの要請を受けて、4月1日に本社から職員を現地へ派遣したのを皮切りに、4月中に診療所ERU＊（巡回診療型）として医師・看護師・薬剤師など職員5人を派遣、主にサガインで活動する現地ミャンマー赤の巡回診療チームを支援しました。

日赤ERUの医師、小林謙一郎さんは、現地の巡回診療チームについてこう語ります。
「このチームは、日赤でいう救護班です。私たち日赤チームも現地の医師らのサポートをする形で、診療活動を手伝います。地震以前から診療活動を続けていた彼らは経験値が非常に高く、しかし一方で、限られた資機材で活動せねばならない状況ゆえの改善点も見えました。今あるリソースでより良い治療をするために、災害時医療の国際基準も紹介しつつ、共に考え、活動の質を高めるサポートをしています」。

ミャンマー赤の巡回診療のサポートをする小林医師（左）

日赤ERUは、その後ミャンマー最大の都市・ヤンゴンに移り、リモートでサガインの巡回診療チームをサポートしました。看護師・藤原真由さんは「現地の巡回診療チームは、ニーズが途絶えないため、医療者自身の研修やトレーニングの機会が限られています。
今は日々リモートで連絡を取りながら、医療技術や手法を確かめ合い、さらに良い医療を患者さんに提供できるように後方支援をしています」と語ります。

被災地で避難民の赤ちゃんをあやす藤原看護師

今回、日赤のERU資機材を保管場所のシンガポールから被災地に届けるにあたっては、ロジスティクス担当者にも苦労がありました。フライト予定がキャンセルになったり、地震により道路の利用が制限される中、現地の法令で夜間移動も制限されて移動に時間がかかったり…と、大切な資機材を安全に長距離輸送するために数々の障壁がありました。

現在、ミャンマーは10月まで続く長い雨季に入り、被災者の方々は感染症の脅威にもさらされています。日赤では引き続き、地震後の緊急救援期に留まらず、復興に向けて、ミャンマーへの支援を行っていきます。

＊ERU（Emergency Response Unit）：緊急対応ユニット、訓練された専門家と資機材からなる支援チーム