『気づく→行動する。』育て、赤十字マインド!

「たすけたい…自分にできることは何だろう?」自ら考えて行動した学生たちの事例を紹介

未来を担う児童・生徒が、赤十字の理念の下、日常生活の中で人々の苦しみや困難に気づき寄り添う精神を育成する青少年赤十字(JRC)。
今回は、JRCの態度目標「気づき」「考え」「実行する」を、自らの力で“カタチ”にした学生たちの活動をご紹介します。

Case01
【神奈川県立新城高等学校】
視覚障害者をサポートするためのワークショップを企画

見えない方は不安なんだ…私にできる、サポートってなんだろう? 仲間と一緒に学び、考えたい!

昨年の夏、新城高等学校の向山夢華さんはJRCの教育プログラムであるリーダーシップ・トレーニング・センター(以下、トレセン)に参加し、視覚障害を持つ方の誘導支援を体験しました。「こういうとき、見えない方は不安を感じているんだ」。
視覚障害者の心情や適切なサポートの仕方を知った向山さんは「学校の仲間にも伝えたい、視覚障害について学ぶ福祉教室を開こう」と考え、実現するために奮闘。約半年の準備期間を経て、今年の3月に開催に至りました。

(左)自身も視覚障害を持つライトセンターの青山さんが、視覚障害者の状況と対応の仕方についてレクチャー
(右上)基本的な誘導の仕方の講習後、校内で実際に誘導体験。最初にライトセンターの講師が手本を見せ、2人1組になって行う
(右下)誘導体験で階段の上り下りを行う生徒たち。最後の段で、「終わりです」と声をかける


取り組みを終えて

向山夢華さん

企画者

新城高等学校 2年生

向山夢華
(むかいやまゆめか)さん

「白杖を持っている方がいるな」。学校の最寄り駅で視覚障害を持つ方を見かけることが度々あり、サポートしたいと思っても、どう声をかけたらいいのか、自分に何ができるのか分からずにいました。
しかしトレセンで、神奈川県ライトセンターの方から、誘導方法などを教わり、目からウロコ。行く先に迷っているときに声をかけられるとうれしい、歩道を渡るとき「信号が赤ですよ」などの一言に安心する、誘導するときは自分の腕を相手に持ってもらって、などを知り、同じ学校の生徒にも伝えたいと思ったのが、この企画の始まりです。

JRCの指導者でもある坂本先生のアドバイスもあり、ライトセンターへ電話をし、学校で福祉教室を開催したい、と相談しました。ライトセンターを訪れて打ち合わせし、自分でチラシを作成、準備を進める中で体調を崩して気持ちが焦り、辛かったときもありましたが、何とか実現しました。
自由参加なので生徒が集まるか不安もありましたが、興味を持ってくれた生徒が次々と来てくれて。ライトセンターの講師・青山しのぶさんから視覚障害者との接し方の話を聞いたり、ペアになって階段を下りる誘導体験をしたり、盛り上がって1時間半があっという間。皆で一緒に学べている実感も持てました。

青山さんから「視覚障害者もいろんなタイプの人がいるし、時によってサポートが必要な場合もそうでない場合もあるから、声をかけて受け入れてもらえなくても気にしないでね」という言葉も印象的で、思いきって声をかける心の準備が整いました
これからも皆に共有できる機会を作りたいですし、ライトセンターで学ぶ機会も作れたらいいなと思っています。

神奈川県ライトセンターとは:
神奈川県内の視覚障害者に対して、点字・録音図書などの情報提供や各種相談・訓練のほか、視覚障害者を支援するボランティア活動を志す人々の育成・支援も行う公共施設

イワホリ

参加者

新城高等学校

イワホリさん

誘導体験で自分が誘導する側のとき、「ケガをさせてしまったらどうしよう」とすごく緊張したのですが、一方で誘導される側になったときには、誘導者の緊張を感じました。視覚障害の方が安心できる誘導をするために、このサポートの経験や知識をもっと深めたいと思いました。

ナベシマさん

参加者

新城高等学校

ナベシマさん

階段の上り下りのとき、目を閉じて誘導してもらっていると、あと何段で終わるのか分からず恐怖を感じましたが、誘導者が下りきる手前で声をかけてくれたことで安心しました。ケガを未然に防ぐだけでなく、生きる力も補ってもらったような感覚があり、支援をありがたい、と感じました。

坂本宏明 先生

JRC指導者

新城高等学校(※取材当時)
副校長

坂本宏明
(さかもとひろあき)先生

私自身も、中学生の頃に初めてトレセンに参加してから、JRCの活動に没頭し、海外でのユースキャンプに参加するなど、さまざまなボランティア経験を積んできました。指導者となった今、学生たちの「気づき」に対して、彼ら自身が一番高いモチベーションで取り組めるように後押しをすることが私の役目です。

今回向山さんは、部活動や試験勉強との並行で大変な中でも、モチベーションを保ち続け、参加者を募るためのチラシ作成やネット申し込みの受け付けなど、工夫しながらたった一人でやり遂げました。福祉教室が実現できたのは彼女自身の信念の力。大きな成長につながったと思いますし、参加者にとっても、これが何かの気づき、行動のきっかけになることを願います。

講座を聴きながら、熱心に書き込む生徒も…

Case02
【栃木県立栃木女子高等学校】
高齢者施設で防災イベント実施

地域のお年寄りを守りたい 災害のときに助け合える地域づくり

栃木女子高等学校JRC部の江幡愛音さんは、昨年7月にモンゴル赤十字社が主催した東アジアユースキャンプに参加。5日間、気候変動の影響などさまざまな現地の課題を学びました。
実際、滞在中に大雨に見舞われ、洪水で参加メンバーが宿泊するいくつかのゲルが浸水するなど、水害を経験。「日本でも、災害から地域を守る活動をしたい。特にお年寄りの防災が重要だ」と考えた江幡さんは、帰国してからJRC部の仲間と協力して、文化祭で段ボールベッドの展示など防災啓発の企画展を行った他、今年3月には、県内の高齢者施設で防災イベントを開催しました。

モンゴルでの洪水被害体験を報告する江幡さん
(左)文化祭でも披露した段ボールベッドを参加者と共に組み立て。寝心地を確かめる参加者も
(右上)災害時に活用できる新聞紙スリッパ作りを参加者にレクチャーするJRC部員
(右下)耐熱性ポリ袋を使って炊き出し体験。学校での練習のかいあって、おいしいご飯が炊けました

取り組みを終えて

江幡愛音さん

企画者

栃木女子高等学校 3年生

江幡愛音
(えばたあのん)さん

私の地元は高齢者が多い地域。いざ災害が起こったとき、足が不自由な方や1人暮らしのお年寄りが逃げ遅れてしまう可能性があります。モンゴルで「自分の住む地域の課題解決」を考えるワークショップに参加して、まず考えたのは「お年寄りを守る防災」です。

帰国後、高齢者施設に掛け合い、お年寄り中心の防災イベントを計画しました。イベントは、防災士の講話の後、スタンプラリー形式で3つのブースを巡る構成にし、段ボールベッド&新聞紙スリッパ作りや防災クイズ、炊き出し体験など、アクティブに学ぶ工夫をしました。
参加者の方からは、「高校生と一緒に防災を学べてよかった」などうれしい感想が。こうした交流で横のつながりも生まれ、災害時に助け合える地域になることを願って、後輩たちに気づきを伝えていきたいです。

Case03
【八王子学園八王子高等学校(東京都)
ゴミ処理時間を2時間短縮したアクション

8000人分の文化祭ゴミ 用務員さんと仲間の負担を減らしたい

八王子高等学校の坂庭かの子さんは、1年生から生徒会の活動に参加し、文化祭で模擬店の運営サポートを担当しました。その中で直面したのが、ゴミ問題。初めての文化祭は、一般客の人数制限をしていたにもかかわらず、ゴミの分別と処理に多くの時間を要し、夜20時過ぎにやっと用務員さんに引き渡す状況でした。

坂庭さんは、昨年参加したトレセンで、ゴミを捨てる側の視点を突き詰めた分別システムのアイデアを発案。人数制限なしで来客数が増大した同年の文化祭では、模擬店出店者にも協力を仰ぎ、生徒会が総出でシフトを組んで分別管理をし、片付け時間を約2時間短縮しました。

ゴミの仕分けをする坂庭さん。「焼き鳥の串といった、文化祭ならではのゴミの仕分けが課題でした」と振り返る
(左)ゴミ収集スポットには、生徒会メンバーがスタンバイ。持ち込まれるゴミをその場で仕分けしていき、終了後の分別の手間を省いた
(右上・下)イラストを入れ、分かりやすさを重視したゴミ箱表示。「食品トレーなど、実物をゴミ箱に取り付けたほうがよい。まだまだ改善点があります」と坂庭さん

取り組みを終えて

坂庭かの子さん

企画者

八王子学園
八王子高等学校 3年生

坂庭かの子
(さかにわかのこ)さん

「ゴミ待ちの用務員さんにも申し訳ない」。文化祭中、ゴミの分別処理に追われ続ける仲間もかわいそうですし、多くの人に負担をかけている問題を何とかしたいと思いました。ゴミ箱には分別の表示があるのに、ルールを守ってもらえないのはなぜか?トレセンのワークショップで他校の先生や生徒と意見を交換し、もっと捨てる側の視点に立たなければ、と気づきました。

具体的なゴミのイラストで分別を示し、食べ残しを入れるゴミ袋を用意、また各模擬店にも、イートインスペースでのゴミ分別が改善されるようにアイデアを共有、要請に応えて分かりやすいゴミ箱を手作りしてくれた模擬店もありました。
加えて、シフト制のゴミ収集スポットの管理も、シフトごとの人数・時間を増やし、ゴミ箱の整備を強化。前年より一般客の出すゴミが大量に増えたにもかかわらず、片付けは約2時間短縮できました。