【WORLD NEWS】日本と台湾、深まる絆 台湾地震から1年

2024年4月3日に発生した台湾東部沖地震から1年。行政が中心となり積極的な復興活動が進められる中、台湾赤十字組織も、被災者支援や防災強化など、さまざまな側面から支援活動を行っています。今回はその活動報告と、日本と台湾、双方の「助け合い」により深まる協力関係をリポートします。

大地震に追い打ちをかけた
台風被害によって
多くの被災者が苦境に

台湾東部沖で発生したマグニチュード7.4の地震により、18人が犠牲となり、1100人以上の人々が負傷。花蓮県市街地では、450棟以上の建物が損壊し、1900世帯以上の家屋が全半壊する被害となりました。復興に向けて立ち上がろうとする中、7月から10月にかけて、4 度も台風被害が発生。複数の方が命を落とし、1万人以上が一時避難を余儀なくされ、被災者はさらなる苦境に立たされました。日赤では、地震発災直後から台湾への海外救援金受け付けを開始し、28億9800万円以上の寄付が集まりました。台湾赤十字組織(以下、台湾赤)のさまざまな復興支援活動に、この寄付が生かされています。台湾赤は、地震発生直後から赤十字ボランティアが中心となって、消防の救助隊と協力して負傷者や行方不明者の捜索・救助、避難誘導などを行ってきましたが、現在は早期復興のための支援のフェーズに入っています。深刻な被害を受けた610世帯に3万台湾元*分の家財引換券を支給したほか、中程度の被害を受けた約1000世帯には、1万5000台湾元の修繕補助金を支給。また、12月には、災害によって厳しい経済状況に陥った世帯などに1500個の食料品セットを届ける、緊急救援と栄養支援プログラムを実施しました。また、地震によって学業の継続が困難となったり、厳しい状況となった学生たちに向けては、台湾赤が花蓮県の高校生、専門学校生、小・中学生を対象とした経済支援プログラムを実施。2024年12月現在で、39校900人の生徒が補助金を受け取りました。そして、地震により心理的な傷を受けた子どもたちへは、台湾赤が、貧困や困難な家族環境に置かれた児童への支援活動を行う団体と共に「クリスマス感謝祭」を共催。約150人の子どもたちがクリスマスの料理とプレゼントのおもてなしを受け、会場は笑顔であふれました。

*台湾元=1元は日本円で約4.5円(2025年3月7日時点)

1500個の食料ボックスを配布。困窮世帯に安らぎを届け農家や地域産業に新たな希望をもたらすことを目指す

災害対応力と
防災意識を高める
研修と教育にも注力

台湾赤では 、ボランティアやスタッフの緊急対応スキルを向上させるため、2024年12月から2025年1月にかけて、EMT-1(救急救命)訓練を実施。この訓練の目的は、被災者の生存率を左右すると言われる災害発生後の72時間、いわゆるゴールデンタイムに、迅速かつ効果的に捜索・救助するスキルを習得すること。参加者たちは理論的な知識を学ぶだけでなく、実践を通じてスキルを磨き、複雑な状況下で生存率を向上させ、長期的な障害のリスクを軽減するための能力を高めました。また、台湾赤は今年1月、高校生や大学生を対象に、防災スキルや災害対応の知識を学ぶための「防災リーダー養成キャンプ」も開催し、9校21人の学生が参加。その後、花蓮市玉里小学校で開催された小学生向け防災キャンプでは、前述の養成キャンプを修了した学生たちが講師となり、災害シミュレーションゲームや心肺蘇生・AEDの講習を行い、災害対応力を高めました。こうした将来の防災・減災につながる取り組みにも海外救援金が活用されています。

EMT-1訓練では、外傷の包帯処置や止血方法、乳幼児への応急手当など、実践を通じてスキルを学んだ

3.11における台湾の支援に感謝
岩手県から町長が台湾赤を訪問

東日本大震災では、台湾赤が集めた25億7778万4675台湾元(当時のレート換算で約70億円)の寄付が日本に贈られました。
それらは、東北の被災地の公共住宅、高齢者住宅、保育所、放課後施設、病院、地域福祉センターなど6つの復興支援プロジェクトに充てられ、中でも岩手県山田町においては、2つの保育園と2つの放課後施設の建設に役立てられました。また台湾赤の方々は何度も被災地を訪れ、被災者を励まし、地域住民との交流を深めました。同町の佐藤信逸町長は、この時の深い感謝を胸に今年1月に台湾を訪問。台湾赤の台風被害に対する活動を支援するため、100万円の寄付金を贈呈しました。
台湾赤と日赤の交流は、より一層深まっています。今年2月、日赤が開催したIMPACT*研修に、台湾赤スタッフを招待。この研修は赤十字の国際救援・開発協力の実践的知識・技術を修得する目的で開催され、台湾赤の参加者もさまざまな国の赤十字スタッフと能力を高め合い、赤十字の人道支援について意見交換を行いました。研修後、台湾赤のキャシー・リーさんは、「赤十字活動の全体像をより包括的に理解することができ、実りが大きかった。これまで以上に台湾での赤十字活動に貢献していきたい」と語りました。日赤と台湾赤の支援事業は、この先も続いていきます。

*International Mobilization and Preparation for ACTion:赤十字の国際救援・国際協力要員研修

台湾赤の人道教育センターが台北都市圏の災害対策拠点として重要な役割を担っているとの説明を受ける佐藤町長(写真中央)

台湾ってどんなところ?

国土面積は九州よりやや小さく、人口約2342万人が暮らす台湾。2011年の東日本大震災の際には200億円を超える義援金を送るなど、日本との友好も深い。東部の花蓮県は、昨年4月の大地震により甚大な被害を受け、国内でも有数の景勝地・太魯閣(たろこ)渓谷も、落石や土砂崩れなどの危険からいまだ一部で規制が続いている。