輸血なるほどヒストリー vol.5「白血球の型の発見」 輸血の歴史やトリビアが満載!

輸血にまつわるさまざまなエピソードを紹介する連載コーナー。
今回は、「白血球型の発見」について紹介していきます。

白血球にも型があった!
新しい血液「型」の発見

 第二次世界大戦後、ルセラン式、ルイス式、ケル式など新しい赤血球型の発見が相次ぎ、現在では45種類の型が認定されています。一方で、白血球にも赤血球と同様に複雑な型があることが次第に解明されていきました。1952年にフランスで、血清(採取した血液を静置、もしくは遠心分離器にかけると、上澄みにできる淡黄色の液体)中に他人の白血球を凝集させる抗体(抗白血球抗体)があることから人の白血球には「型」があることが発見されました。

 白血球の型は総称としてHLA型(Human Leukocyte Antigen)と呼ばれています。日本では1985年ごろから、このHLA型の違いから輸血後9~13日後に起こる発熱、肝障害、下痢、さらには血球減少による死亡という合併症「GVHD(輸血後移植片対宿主病)」が発生しました。

 この合併症は、輸血を受けた患者の体内で、白血球が別の型の白血球を異物(敵)とみて攻撃することから起こると言われています。日赤は、GVHDを予防するために輸血用の血液に放射線を照射し、血中のリンパ球(白血球の一種)を不活化させた血液製剤の供給を1998年から開始しました。こうして輸血用の血液製剤は安全性が高まり、献血でみなさまからいただいた血液は、さまざまな治療に役立てられています。


【監修】
日本輸血・細胞治療学会名誉会員
髙本 滋 先生