水の事故⁉ こんなとき、あなたならどうする? 意外に知らない?水のレジャーにひそむ危険。緊急時の対処法を紹介!

海や川など、水辺でのレジャーが楽しいこの季節。一方で、水の事故が増える時期でもあります。日赤では、水の事故から大切な 命を守るため、「赤十字水上安全法」の講習を行っています。
今回はその中から、特に気をつけたいチェックポイントをQ&Aでご紹介します。

Q.衣服を着たままで水に落ちた…どうする?

(正しいと思う解答をお選びください)

1 衣服や靴を脱いで体を軽くする
2 水面上に仰向けで浮いた姿勢を保つ
3 体力が失われないうちに岸まで泳ぐ

A.正解は…2


【一番大切なのは「浮き身」】

一番大切なことは「浮き身(=水に浮くこと)」です。突然の出来事に慌てて、バタバタ動いてしまったり、体に力がはいってしまったりしがちですが、それは逆効果。落ち着いてリラックスすることを心がけ、水面上に仰向けで浮いた姿勢を保ちます。衣服や靴を無理に脱ぐことは、体力を消耗してしまうことになるので避けましょう。

Q.川で流されてしまった…どうする?

(正しいと思う解答をお選びください)

1 足を下流に向け、背泳ぎの姿勢をとる
2 頭を下流に向け、背泳ぎの姿勢をとる
3 平泳ぎの体勢をとって、流れに身をまかせる

A.正解は…1


【足は下流に向ける。ライフジャケットも正しく着用を】

川遊びの際はライフジャケットを必ず着用し、水中で脱げないように正しく身につけるようにしましょう。川底に足がつくような水深でも、石や岩に足を取られて転倒すると、動水圧※で脱出困難な状態に陥ることがあります。そんなときは、足は下流に向け、足先を水面にまで持ち上げた背泳ぎの体勢をとりましょう。

※動水圧とは:水が流れている中での水圧

ライフジャケットの正しい着用方法
(日赤埼玉県支部作成の動画より)

河川の危険な場所とは!?

自然と触れ合いながら水遊びができる楽しい場所ですが、想像するより流れが速かったり、地形が複雑だったりと、危険が潜んでいます。ダムの放水で一気に増水することもあるので注意しましょう。

①水面がわきあがっているところ
川底の大きな石などに流れがぶつかってできる。

②川の合流
2つの流れが合わさるため、急に波が大きくなるなど、いろいろな流れが起きる。

③川底が見えない場所、流れの速いところ
立とうとすると足を取られる。また、流れが速いと止まることができなくなる。

④岩
岩の大きさや形、水面の高さによって、いろいろな流れができる。流れの中にある岩に引っかかってしまうと水の重さで動けなくなることも。

⑤堰堤(えんてい)
川の流れを緩やかにするためのもの。堰堤の下流側にはいろいろな流れが起きる。

⑥倒れた木、流れついた木
流されて木に引っかかると、水の重さで動けなくなる。

⑦中州(なかす)
川の中で土や砂などが積もっている所。上流の雨やダムの放水で急に水が増えると岸に戻れなくなる。

⑧橋脚(きょうきゃく)
橋を支える脚の周りでは、いろいろな流れが発生することが多い。引っかかると水圧で動けなくなる。

⑨ぬれた石や、コンクリート
ぬれた岩やコンクリートにはコケがありすべりやすい。

⑩川の近くの高い草
草でまわりがよく見えない場所は、すべって川に落ちることもある。


〈河川の危険ポイント〉
・蛇行部分では、内側よりも外側が流れが速く水深も深い
・まっすぐに流れる部分は、流れの中心部分が速い

Q.溺れている人を見つけた…どうする?

1 長い棒、タオルの端などを差し出してつかませる
2 勇気を出して、すぐに飛び込んで助ける
3 大きな声で周囲に知らせる


A.正解は…1・3


【周りに協力を求め、入水せずに距離をとって救助する】

自ら入水して助けに行く行為は、溺者に抱きつかれて共倒れになるという、最悪のケースにつながります。抱きつかれない距離で救助するのが原則です。長い棒や衣服、タオルなど、溺者がつかまりやすい長いものを差し出しましょう。救助者は、二次事故防止の観点から、周囲の人の協力を得て体をつかまえてもらい、可能な限り重心を低くして足場を確保し、安全に留意して救助することが必要です。溺者を引き寄せることが難しい場合は、ペットボトルやバッグなど、浮き具の代わりになるものを渡して救助を待ちます。

Q.溺れた人を救出した…どうする?

1 うつ伏せで寝かせる
2 声をかけ、反応を確認する
3 保温する(必要に応じて加温する)


A.正解は…2・3


【まずは反応を確認し、楽な姿勢に寝かせて保温を】

まずは話しかけて反応を確認し、本人が楽な体勢(仰向けor横向き)で寝かせましょう。低体温症にならないよう、体を温めてあげることが大切です。毛布やバスタオル、なければ衣服などで全身を包んで、できるだけ風に当たらない状態を作ります。容態が急変することもあり得るので、様子が落ち着いていても、顔色が確認できる状況で経過観察することが必要です。もし呼吸がない、呼びかけに応えないなどの状態になっていたら至急119番通報をします。

海の危険な場所とは!?

海は地球上で最も広く、天候によってさまざまに変化します。波の流れなど、人の力ではどうすることもできない力を持っているので、十分な注意を忘れないようにしましょう。

①波消しブロック
波の力をやわらげるためのコンクリートのブロック。ブロック間のすきまに落ちないように注意する。

②防波堤(ぼうはてい)・桟橋(さんばし)
防波堤は外海からの波を防ぐためのコンクリートの壁。桟橋は船をつないだりする場所で海底も深くなっている。

③海岸のごみ・流れ着いたもの
ガラスのかけらや釣り針など、けがをしやすいごみに気をつける。

④潮流(ちょうりゅう)
潮(しお)の満ち引きで水の高さや流れも変わる。

⑤離岸流(りがんりゅう)(リップカレント)
岸から沖に向かう流れ。地形や波、風の向きや強さによってさまざまな形に変わり、つかまると沖に流される。

⑥まき波(まきなみ/ダンパー)
海底が急な斜面だと波が一気に大きく崩れる。急に巻きこまれると海底にたたきつけられる。

⑦波
波は潮の流れや風などによってできる。波の大きさは海底の違いによっていろいろと変化する。波の高いときの水遊びや水泳はやめる。

⑧河口(かこう)
川が海に合流するところ。流れが強く複雑になっている。

⑨磯(いそ)・岩場(いわば)
ゴロゴロした動きやすい石の多い海岸。波をかぶるのですべりやすい。

楽しく安全に水辺で遊ぶために、
正しい知識を身につけましょう

日本赤十字社
救護・福祉部 健康安全課
武藤 裕美さん

977_muto2.jpg 水辺で遊ぶ際に忘れてはならないのは、「自然環境で遊んでいる」という意識。天候の変化で水温や流れ、水の色や水の底まで変わるので注意が必要です。監視員のいる安全な水泳場を選ぶことは大前提ですが、自身でも事前に、そして遊んでいる最中にも天候の変化に意識を向けるようにしましょう。「一人では遊ばない」、「体調の良くないときは無理をしない」、「ライフジャケットを身につける」というのも原則です。

 日赤は「赤十字水上安全法」を通じて水の事故防止の普及に取り組んでいます。この講習では、水を活用して健康の増進を図り、水の事故から命を守るための知識と技術を学びます。海や川だけでなく、田んぼの水路やため池など、生活圏内にも危険は潜んでいます。事故が起こりやすいスポットや、水の特性と危険性などの知識を身につけましょう。なお、日赤は、要望に応じて小中学校に指導者の派遣もしています。また、講習のメニューの1つとして、「着衣泳」もありますので、詳細につきましては、お近くの日赤支部へお問い合わせください。

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赤十字水上安全法の講習「着衣泳」の様子