【献血まるわかり辞典】vol.8「放射線照射」 「なるほど!」と思わずヒザを打つ“献血にまつわる豆知識”を紹介。 第8回は、輸血用血液に「放射線照射」をする深〜いワケについて!

輸血用血液に放射線を照射!?死に至る副作用から患者を守る!

 今から24年前、輸血用の血液に放射線を照射することで血中のリンパ球(白血球の一種)を不活化させた血液製剤の供給が開始されました。輸血用の血液製剤には、(1)赤血球製剤、(2)血小板製剤、(3)全血製剤、(4)血漿製剤、があります。このうち(1)~(3)には放射線を照射し、(4)の血漿は、製造工程において凍結する際にリンパ球が壊れてしまうため、照射しません。

 このように放射線を当てることになった背景には、ごくごくまれに、「輸血後GVHD」という重篤な副作用が発生していたためです。輸血を伴う手術日から10日ほどで高熱、紅斑、肝障害、下痢などの症状が起き、血液の成分が全て減少。免疫力が落ちた患者は感染症にかかりやすくなり、腎不全なども重なり、多臓器障害に。そして多くの場合、死に至ります。 「輸血後GVHD」は当初、患者側の免疫不全が原因と考えられていました。しかし研究の結果、「A型・B型・O型」などの血液型が一致していても、白血球の型がほんのわずかに合わないことが原因と判明し、どの患者にも起こり得ることが明らかになりました。供血者のリンパ球が、輸血後に患者の体内で増殖し、自分と型が異なる患者のリンパ球を攻撃、患者の体の細胞、さまざまな臓器が、損傷を受けてしまうのです。

graft versus host disease:移植片対宿主病

供血者のリンパ球(a/a)が、もともと体内にある自己リンパ球(a/b)を攻撃してしまいます 献血血液は、どうなるの?

 日赤では、輸血を受ける患者をGVHDから守るために研究を重ね、供血者のリンパ球を不活化するために微量の放射線を照射すれば解決できることを突き止めました。

1998年、日赤による「放射線照射輸血用血液」の製造を国が承認。この輸血用血液の供給開始後、日本では輸血後GVHDの確定症例の報告はありません。また、現在まで放射線照射が原因となって受血患者の健康被害が生じた、との報告もありません。

献血血液は、どうなるの? →「輸血用血液製剤が届けられるまで」