アフガニスタン人道危機~政変下でも続く赤十字活動~

紛争、長引く干ばつと深刻な食料危機、感染症のまん延―あらゆる人道危機に直面するアフガニスタンでは、昨年の政変により国際社会からの援助が滞り、世界最大といわれる危機的状況が生じています。その中でも支援を届け続ける赤十字の活動を、日本人職員の声とともに伝えます。

アフガニスタンを襲う
未曽有の人道危機

 過去30年で最も深刻な干ばつに見舞われ、人口の半数を上回る2200万人以上が食料危機に陥っているアフガニスタン。2021年8月、その影響が猛威を振るう最中に起きた政変は、社会的・経済的混乱をもたらし、人々はますます危機的な状況に陥っています。加えて、暫定政権の動向を慎重に見極めようとする国際社会が支援を見合わせていることにより、国家予算の大部分が外からの支援で成り立っていた同国の公共サービスが停止し、2300以上の公的医療施設が閉鎖の危機に追い込まれました。
 こういった状況下で、昨年だけで新たに70万人もの人々が食料や安全な暮らしを求めて住み慣れた土地を離れることを余儀なくされ、同国の国内避難民は350万人にも上っています。さらに今、地域によってはマイナス20度を下回る厳しい冬が続いており、自然災害と人為災害が複雑に絡み合う未曽有の人道危機に発展しています。
 国連人道問題調整事務所(OCHA)と難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、1年間で約5700億円以上が必要として、国連創設以来、最大規模の支援を呼び掛けています。

国際支援が滞る中、
赤十字が地道に続ける支援

 アフガニスタン赤新月社(同国における赤十字。以下、アフガン赤)は、「中立・公平・独立」の基本原則のもと、長年にわたってタリバンを含むあらゆる組織と対話を重ね、信頼関係を築き活動してきました。全土に活動拠点を持ち、医療従事者を含む2千人のスタッフと3万人のボランティアによって支援が届きにくい地域にも活動を展開する、同国において他に類を見ない人道支援組織です。食料や防寒着の配布を行うほか、移動型診療チームが遠隔地へ赴き、保健・医療サービスの提供や新型コロナウイルス感染症の予防接種を行うなど、人々のいのちと健康を守る活動を絶え間なく続けています。そして赤十字国際委員会(以下、ICRC)や国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)、各国赤十字・赤新月社も一丸となり、アフガン赤を支援しています。
 主に、紛争の犠牲となった人々を支援するICRCの職員として昨年7月からアフガニスタンに赴いている川崎弥智都さんは、現地からこう呼び掛けます。「とにかく資金難で、学校や公共サービス、そして病院の運営が難しい状況です。ICRCはタリバン政権下でも、医療やリハビリ施設、また水・衛生・経済面において支援を続けています。国内の28の病院を、医療資材購入から職員の給料支払いまで多角的に支えています。タリバンや委託業者、他団体を介さず、自分たちで支援を展開するのが赤十字です。日赤を経由して届くご寄付も市民のいのちを守る活動に生かされます」
 日赤は「アフガニスタン人道危機救援金」に寄せられたご寄付を基に、アフガン赤・ICRC・連盟を通じて、今、必要な緊急人道ニーズに応えるとともに、干ばつなどの脅威に負けない地域社会をつくるため、5カ年の開発協力事業にも取り組んでいます。赤十字はこれからも、アフガニスタンでの支援活動を続けていきます。

移動型診療チームの活動はこちらのページでも紹介しています。

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