感染症から 誰も取り残さない NHK海外たすけあい キャンペーン期間:12月1日(水)〜25日(土)

世界中で新型コロナウイルス感染症が拡大し、先進国や経済的に豊かな人々が防疫やワクチン確保に躍起になっていたとき、インフラさえも十分に整わない途上国や紛争・災害の被害を受けた人々は、感染症の脅威の矢面に立たされていました。人類史に残るパンデミックから、最も影響を受ける人々を守るーーー赤十字はその使命を果たすべく、世界各地で活動しています。このような世界の赤十字活動は「海外たすけあい」キャンペーンのご寄付に支えられています。

ルワンダの貧困地域で 命を守る「水」支援

学校トイレの前の簡易手洗いセットに生徒と一緒に水をためる吉田代表

東アフリカにあるルワンダの貧困地域・ギザガラ郡で、日赤はルワンダ赤十字社と共に開発協力事業に取り組んでいます。電気や水道といったインフラも整備されず、ワクチンも届かない村で、人々をウイルスから守るにはどうしたらいいか―― まずは手洗いやマスクといった基本の感染防止策が不可欠と考え、手洗いの習慣がなかった現地の人々に手洗い指導をし、マスク、ソーシャルディスタンスなどの感染防止の啓発を行いました。さらに、手洗い場のなかった小学校に「簡易手洗いセット」を複数設置。しかし、水道が引かれていないため、手洗いセットを活用するには生徒たちで水くみを行う必要があります。この水の問題は、村全体の課題でもありました。水道のない村では、各家庭の子どもや女性が毎日数時間を水くみに費やし、水くみのために学校に行けない子どもも少なくありません。苦労して得た水は手洗いや洗濯・清掃のために使用するのに十分な量はなく、村人の健康を守るために「安全な水の確保」は急務でした。現地に派遣された日赤の職員・吉田拓はこの問題に正面から取り組むために、ルワンダ赤十字社の職員、ボランティアらと協力し、水源や水質の現地調査を行い、給水設備の設計を進めています。「水源の特定は慎重な検討が必要です。1つの村が潤うことで他の村が困窮するようなことが起こらないようにすること、また、気候変動の影響もあり豪雨や洪水にも見舞われるルワンダでは、設備の強固さや設置する場所の安全性なども重要です。日赤の支援が終わった後も現地の人々がそれを維持し、生活を向上させていける、ルワンダの人々の明るい未来につながる支援が『海外たすけあい募金』のご寄付で実現しています」(吉田拓/日赤ルワンダ首席代表)

(左)小学生への指導を通して家庭にも手洗い習慣が伝わる (右)長く使える給水設備設置のために現地調査を実施

バングラデシュ南部で 避難民を守り、支える

(写真上)避難民キャンプの中のコロナ隔離病棟はバングラデシュ赤新月社が建設した。各国の赤十字社が連携し、避難民の支援を続けている。(左下)2017年8月当時、70万人もの人々が着の身着のまま、ほとんど飢餓状態で国境を越えた(右下)今年9月、竹とビニールでつくられた簡素な小屋が密集する避難民キャンプ

 2017年8月にミャンマーで発生した大規模な暴力から逃れ、隣国のバングラデシュで避難民として生きる人々は86万人*にのぼります。バングラデシュ政府はコックスバザールにある国立公園の森林を切り開いて避難民を収容するキャンプとし、フェンスで囲んで避難民のキャンプ外への移動を制限しています。昨年、バングラデシュ国内で新型コロナウイルスの感染流行がはじまったとき、この移動制限が功を奏しました。衛生状態も劣悪で人口が密集する避難民キャンプでありながら、感染が抑制され、2021年8月のデータではコックスバザールの避難民の感染者は0.3%の2577人。同時期のバングラデシュ国内の感染者が0.8%であるのに対し、大幅に抑えられました。
 その理由を、日赤の看護師であり、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)の現地保健要員を務める菅原直子(日赤愛知医療センター 名古屋第二病院)さんはこう考えます。
「第一に入域制限がされていたこと。そして、赤十字がトレーニングしたボランティアが地道な活動を継続したこと。彼らは、一軒一軒、避難民の住居を戸別訪問して発熱や呼吸器の症状がある“疑わしい人”を発見したら保健医療センターに紹介する、キャンプ内の隔離施設に連れていく、という活動を続けました」
 バングラデシュ赤新月社職員のラティーフさんも「私たちが(ボランティアと共に)キャンプ内で啓発をしっかりと行ったので、感染が抑えられたのです」と胸を張ります。2020年はバングラデシュでもロックダウンがあり、避難民キャンプで活動していた日赤職員も帰国を余儀なくされました。しかし、日赤が2017年の支援開始以来、手塩にかけて育成したボランティアたちは、感染拡大の危機に際し、草の根の活動で感染防止に貢献したのです。
 避難民キャンプには日赤の医師・看護師が指導したバングラデシュの若い医療従事者が診療するクリニックがあります。そこは「ジャパンクリニック」と呼ばれ、病気やケガの診察の他、産前検診を行う母子保健室も備えられており、避難民の健康を守るよりどころとなっています。また、キャンプ内で日赤がデンマーク赤十字社と共に支援する施設では避難民の心の傷を癒やして健康な社会生活を取り戻すための「心理社会的支援」も行っています。この施設では家族を殺されたり、ひどい暴力を受けるなどして、絶望の中にいる人々が生きる力を取り戻すお手伝いをしています。
 避難民キャンプにおけるこれらの赤十字の活動は、「海外たすけあい募金」によって支えられています。ご寄付によって、国を追われ希望も奪われた避難民に寄り添う心が届けられます。

避難民への手洗い指導を行う苫米地看護師長(写真:©Atsushi Shibuya / JRCS)

「ジャパンクリニック」と呼ばれ避難民に愛される日赤支援の診療所(写真:©Atsushi Shibuya / JRCS)

避難民キャンプのIFRC保健要員として現地で活躍する菅原看護師長(写真:©Atsushi Shibuya / JRCS)