ハイチ大地震の緊急救援、日赤職員が現地からリポート 国際赤十字と連携する災害救護

赤井看護師(左端)が担当した少女ロセちゃん(3歳)と母親。ロセちゃんは地震で倒れた壁の下敷きになり右腕を失った

ハイチ大地震から3カ月。地震以前から、貧困の拡大や大統領の暗殺、ギャングによる暴力行為などが問題になっていたハイチで、地震で住む家を失い、ますます苦しい状況に置かれている人々がいます。国際赤十字の野外病院で活動する日赤職員に話を聞きました。

被災地に野外病院を設置 赤十字が連携してハイチをサポート

野外に設置された病院ERUのテントでは手術も行われる(c)AdrianoValentini_IFRC

8月14日に発生したM7.2の大地震により、85万人もの被災者を出したハイチ。ハイチ赤十字社、国際赤十字も救援物資や水・衛生などの支援を続けていますが、病院の倒壊や深刻な燃料不足の影響もあり、医療体制は逼迫(ひっぱく)した状況にありました。
 国際赤十字は被害の大きかった南西部のレカイに入院・手術機能を持つ臨時の野外病院(病院ERU)を展開。フィンランド赤十字社を中心に、地元の人々との対話を重視した医療支援を行っています。日赤から派遣された看護師や薬剤師も文化や言葉の壁にぶつかりながらも昼夜を徹し活動を続けています。
 10月に手術室看護師として派遣された日赤医療センターの赤井智子看護師に聞きました。「地震で負傷し右腕を切断することになった3歳の女の子が、皮膚の移植手術を受けました。お母さんは『ありがとう』とわざわざ感謝の言葉を伝えに来てくれました。その子はケガの影響か、人に体を触れられることにトラウマがあるようでした。私が手術前に女の子を迎えに行き、あやしながら手術台まで案内し、触らせてもらえるようになったのですが、そんな様子を見てお母さんも安心したようです。現地の病院はお金がかかりますが、病院ERUの治療は無料です。皮膚移植で見た目を整えるような繊細な手術も行っており、被災後の身体の回復はもちろんのこと、心のケアにも大きく役立っていると思います」

貧困、燃料不足、治安の悪化… 悪条件だらけでも、救う活動を

同じく福岡赤十字病院の川口真由美看護師は現地の状況をこう述べます。「地震の前からハイチはかなりの貧困国です。この国でもCOVID-19の流行は避けられませんでしたが、マスクを買えない人が多く、教育も不十分なので、感染に対して無防備な人があまりに多いのが実情です。また、燃料不足も深刻で、入手が困難なため病院を運営していても、ぎりぎりの燃料で発電機を動かしています。日本では考えられないことですがレントゲンと滅菌装置のどちらの電気を優先するかなど、綱渡りです」。手術室看護師は24時間体制、真夜中でも宿舎から病院に駆けつけます。治安が悪く夜の移動はリスクもありますが、それでも赤十字がそこにいなければ助からなかった人たちを救うために働いています。
 医薬品・医療物資の管理をする大阪赤十字病院の仲里泰太郎薬剤師は、病院の外に食べ物を求める子どもがいる光景に衝撃を受けました。「貧富の格差があまりに大きい。医療サービスが脆弱(ぜいじゃく)な中で出産も多いなど、COVID-19以外にも懸念があります。日本での報道は減っていますが、日本の人にハイチの現状を知ってほしいです」
 11年前のハイチ大地震では、被災地にコレラが蔓延(まんえん)。このとき日赤は支援地域に感染症予防のための手洗いを普及させるなど大きな成果を上げました。被災した人々が最も必要とする支援を届けるため、日赤職員の世界各地での奮闘はこれからも続きます。