WORLD NEWS「ルワンダ――貧困の連鎖を断ち切るために」 コロナ禍でも不変の支援を

カメラに向かって「赤十字、団結しよう!」と声をそろえる吉田拓(写真中央)とルワンダ赤十字社のボランティア

ルワンダ赤十字社との二国間事業が開始した直後の2020年3月、ルワンダで初めてCOVID-19の感染者が確認されました。
新たに浮き彫りになった課題について、日赤から現地に派遣されている吉田拓がリポートします。

コロナ前からの根深い課題が…

生活のために水汲みをするルワンダの子どもたち/(C)Atsushi Shibuya/jrcs

 ルワンダ共和国のロックダウンに伴い、一時帰国していた日赤の職員、吉田拓が支援地に戻りました。日赤が支援事業を行っているのは、ギザガラ郡というルワンダ南部にある農村地域です。
「現地にいると、村人たちにとってCOVID-19が新たな脅威だと認識するのは難しいことなのだと感じます。なぜなら、これまでも彼らはマラリアなど従来の感染症、気候変動により多発する自然災害、1人当たり1日2ドル以下で暮らす慢性的な貧困など多くの苦しみの中で生きてきました。食うや食わずで今日を生き延びることが日常となっている彼らは、コロナ以前から災害状態が続いていたのです」

 そもそもこの村は「手洗い」という公衆衛生の基本もままならない環境です。
「給水設備のないこの村では、舗装されていない山道を30~40分かけて水くみ場まで行き、ポリタンクにためて生活用水を確保しています。1日何往復もするこの仕事を主に担っているのは子どもたちです」

村人の自立、子どもの環境改善…東京の学生たちも支援に動きだす

ルワンダ赤十字社職員とのオンライン会議をする日本の大学生

 日赤は2019年12月より5カ年の計画で、ルワンダ赤十字社との二国間事業を実施。村人たちが主役となり、災害や貧困などに対して自ら立ち上がる力を高める「モデルビレッジ」事業を展開しています。
「ルワンダ赤十字社には熱心なボランティアがたくさん参加していて、彼らと共に、自分の畑を持たない農民も食料が得られるように家庭菜園の種を配布したり、共同で育てる家畜を提供するなど、複数の支援を同時に進行させています。そして現在、給水設備の設計が始まりました。感染対策に欠かせない衛生環境の改善、そして子どもたちの教育や育成環境が劇的に改善することを期待しています」 

 また、吉田のオンライン講演を聞いた日赤東京都支部の大学生ボランティアが有志で集まり、小学校を長期欠席する子どもたちの状況改善に向けたプロジェクトに協力しています。
「大学生ボランティアたちは子どもの問題に対する意識が高く、オンライン会議で次々と鋭い質問を投げ掛けてきます。彼らは、子どもの貧困の原因は、親も貧困の中で育った『貧困の連鎖』にあると指摘します。実際、長期欠席やドロップアウトしたルワンダの子どもたちにヒアリングを行なったところ、貧しい家庭ほど生活が苦しくなると子どもの教育から諦めるという実態が明らかになりました。大学生たちとの意見交換は、ルワンダの職員も自分たちの活動を再確認する機会になっています。さらに来年度、東京都支部が計画している『ルワンダ子ども支援募金』の事業内容も大学生たちの意見が反映されて策定されました。

 11月には、大学生たちが青少年赤十字(JRC)の中高校生たちに対して、ルワンダ赤十字社との交流によって得た知識や気づきを伝える場が設けられます。彼らへの啓発が今後のJRCの募金活動を左右することになります。ルワンダと東京は距離にして1万数千キロも離れていますが、東京の大学生ボランティアの気持ちはルワンダの子どもたちに寄り添っているなと感じられます」