一人一人の視覚に合った支援を届ける~専門技術を生かして~

全国の61団の赤十字奉仕団、約2,700人のボランティアが視覚障害者を援助する活動を行っています。(令和2年3月31日現在)視覚障害者援助は、録音図書の作成や点訳、誘導など様々な活動がありますが、今回は2つの奉仕団の活動をご紹介します。

利用者に寄り添った文字を届ける

秦野市拡大写本赤十字奉仕団(神奈川県)は、弱視や老眼などによって小さい文字が見えづらい方に対し、拡大写本を作成しています。拡大写本とは、小説や時刻表などの印刷物を一つ一つの要望にあわせて手書きやパソコンを使い、大きく書き写したものです。

教科書や漢字ドリルなどの副教材を作成

弱視の子どもたちに向けては、教科書や漢字ドリルなどの副教材を作成しています。授業で使用する教科書であるため、一字一句間違いがないか団内でチェックを重ねることを大切にしています。
 また、利用者によって文字の見え方や色の見え方に違いがあるため、作成前に文字の間隔や太さ、色のバランス等について利用者と何度も確認を行います。

奉仕団員は「弱視の子を持つお母さんから、『今まで、自分で読める音楽の楽譜が無かったため、歌を歌うことができなかった息子が、拡大写本の楽譜に出会ってから毎日自宅で歌を歌っています。』と聞いたときは、活動を続けて良かったと感じました。嬉しかったです。」とやりがいを語ります。
 また、拡大写本で勉強をしている山口悠翔くん(当時小学2年生)は「毎日楽しく勉強できていることが嬉しい。教科書を作ってくれたみなさんありがとう。」と、感謝の想いを笑顔で語ってくれました。

利用者に寄り添った文字を届ける

大江委員長は「視覚に障害があっても、点字や拡大文字があれば、文字が読め、歌が歌え、本が読めます。文字が読めたら、障害ではないと思います。障害は、社会が作り出していることが多いのではないでしょうか。」と思いを語りました。
 奉仕団では多くの方に拡大写本の存在や活動を知っていただくため、活動の詳細を市の広報誌に掲載したり、団内で作製したポスターを公民館やスーパーに掲載したり、様々な広報活動を行っています。

触って学べる防災教材作り

防災教材寄贈

災害時に備えて防災教育に関する視覚障害者援助を行う奉仕団もあります。

和歌山県障害者支援赤十字奉仕団 拡大写本 グループあかりは、日本赤十字社が作成した幼稚園・保育所向けの防災教材「ぼうさいまちがいさがし きけんはっけん!」を元に、触って学べる立体教材として、地震被害を再現できる教室模型を作成しました。いくつかの試作の後、完成したものは、県立和歌山盲学校に寄贈。
 榎委員長は「生徒たちが触っても安全なように慎重に素材を選びました。低学年の子たちも遊びながら防災を学んでほしいです。」と思いを語っています。

同団は他にも、拡大写本の作成や、様々な障害をもつ子どもたちが遊びながら手や指の訓練ができる布絵本やおもちゃの作成など、多岐にわたる活動を行っています。

特技を生かした赤十字ボランティア

視覚障害者援助には、ご紹介した拡大写本や防災教材の作成のほかにも様々な活動があります。視覚障害者援助の活動の一つである録音図書の作成は、鉄道弘済会と日本盲人福祉委員会が共同で、作成のボランティアを行った方々に対して感謝の意を表する「朗読録音奉仕者感謝行事」を開催しており、赤十字のボランティアも数多く表彰されています。
 また、視覚障害者援助のほか語学、写真、ハンドケア等の"自分の特技"を生かした活動を行っている「特殊赤十字奉仕団」は全国に634団あり、約32,000人が活動しています。

特技を生かして誰かの力になりたい方、赤十字のボランティアとして活動してみませんか?

※「ぼうさいまちがいさがし きけんはっけん!」等の防災教材の詳しい説明は、以下URLからご確認ください。
 > http://jrc.or.jp/activity/youth/prevention/