第38回NHK海外たすけあい募金キャンペーン実施報告

日本赤十字社が毎年12月にNHKと協働して実施するNHK海外たすけあい募金キャンペーン。1983年から始まり第38回目を迎えた今年度は全国から7億5,038万8,183円のご寄付をいただきました。みなさまからのあたたかいご支援に感謝申し上げます。

2020年度の支援概要 ~コロナ禍の人道支援のために~

誰もが予想していなかった未曾有の人道危機「新型コロナウイルス感染症」の蔓延は、脆弱な環境下で暮らす人々の生活をさらに厳しいものとしています。こうした状況下でも台風、サイクロン、干ばつ、洪水といった自然災害は容赦なく私たちに襲い掛かります。感染対策に引き続き注意を払いつつも、こうした様々な災害に効果的に対応したり、備えたりする必要があります。紛争で医療体制が崩れた地域では、感染者の発見や管理、経過観察に手が回らず、感染のリスクが高まっています。さらに、新型コロナウイルス感染症のために、少なくとも68カ国で小児期の定期的な予防接種サービスが深刻な打撃を受けており、その結果、少なくとも8,000万人の1歳未満の子どもたちが、はしか、ジフテリア、ポリオなどの本来予防可能な疾病に罹患する危険にさらされています。

紛争に伴う避難民への対応

子どもたちに手洗いを教えるレバノン赤十字社のボランティアとスタッフ

子どもたちに手洗いを教えるレバノン赤十字社のボランティアとスタッフ©日本赤十字社

気候変動による深刻な干ばつや洪水は、農業生産と所得を低下させ、社会不安を高め、国内外の対立を悪化させる等、紛争や人口移動といった難民の発生リスクを高めます。シリアでの人道危機勃発から10年目を経た中東地域にとって、新型コロナウイルス感染症によるさまざまな影響が広がった2020年は特に厳しい年でした。レバノンでは、激しい社会的混乱と経済破綻の状況の中で新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、加えて8月に首都ベイルートでの大規模爆発によって多くの人びとが被災し、三重、四重の危機に見舞われました。赤十字では、新型コロナウイルスの感染対策を講じながら、各国のニーズに応じて、医療支援、救援物資や医薬品の配布、こころのケア、給水支援、生計支援、離散家族の安否調査などを継続しています。

頻発・長期化する災害への対応

救援物資のセットを受け取る被災者

救援物資のセットを受け取る被災者©フィリピン赤十字社

フィリピンでは10月から相次いで台風が島々に上陸し、断続的な豪雨や突風による家屋損壊、地滑りや洪水など、各地で大規模な被害が発生しました。今年世界各地に上陸した台風等の中でも最も強い風を伴ったと見られる超大型台風19号(コーニー)、次いで上陸した台風22号(ヴァムコー)の影響は大きく、およそ600万人が被災、36万7,000棟もの家屋が損壊しました。また11月には、ニカラグア、ホンジュラス、グアテマラなど中米の国々に、ハリケーン「エタ」と「イオタ」が連続して襲来。大雨は地滑りや洪水、道路の冠水や家屋損壊をもたらしました。中米全体で700万人もの人びとが被災しています。

災害時に最初の対応者となるのが、地域の特性やニーズを熟知する現地コミュニティーの人びとです。赤十字では、新型コロナウイルス感染症対策を講じながら、災害時における医療支援、救援物資の配布や給水支援、生計支援の実施に加え、さらには平時から予測不能な災害時においても自ら対応し、立ち上がる力、すなわち「レジリエンス(回復力)」を高めるための防災教育や救急法の普及、緊急時のための体制整備(地域のボランティアの育成や緊急用資機材の整備)なども支援しています。

感染症等の疾病リスクへの対応

新型コロナウイルスの啓発活動をする宣伝カー

新型コロナウイルスの啓発活動をする宣伝カー(ルワンダ)©日本赤十字社

新型コロナウイルス感染症の蔓延は、脆弱な環境下で暮らす人々の生活をさらに厳しいものにしています。世界では、全人口の少なくとも半数の人々が基本的な保健サービス(衛生的な上下水道の利用や感染症予防教育、母子産前産後健康診断等)を受けることができていないといわれています 。また年間250万人が亡くなるともいわれるエイズ、マラリア、結核の三大感染症のほか、気候変動による災害や大規模な人口移動は、厳しい環境下の人々の疾病リスクをさらに高めています。人びとの命を守るには、「自らの命と健康は自分で守る」という意識を一人ひとりが持つことが何より大切です。赤十字は、現地住民(ボランティア)とともに、地域の生活習慣や文化をよく理解したうえでまずは耳を傾けてもらえるよう、村々を回って講習会や手作りのモバイルシネマ(屋外映画会)、宣伝カーなど趣向を凝らした取り組みを通じ、病気やけがの「予防」啓発活動を展開しています。

世界からのありがとう

支援を受けた工場で家具作りに励む住民

支援を受けた工場で家具作りに励む住民©日本赤十字社

私は大工職人で、震災前は20 年以上にわたり、近所の家を訪ね歩き、注文を取っては家具を作って日銭を稼ぐ暮らしを続けていました。震災で何もかも失い、一大決心をして自分の家具工場を作ろうと借金をしました。その後、赤十字の収入向上支援を受けられることが決まり、支給された支援金(約4 万円)で早速、工場を完成させて家具を作り始めました。ありがたいことに、多くの家の住宅再建にあわせて家具の注文が舞い込み、私の収入も安定してきました。おかげで借金も返すことができましたし、家族も養うことができるようになりました。一番助けが必要だったときに赤十字が私を支えてくれたのです。

本ニュースのPDFはこちら