【速報7】イスラエル・ガザ人道危機:度重なるアルクッズ病院への爆撃予告、病院は攻撃対象になってはならない

 イスラエル・ガザ人道危機は日に日に深刻さを増し、ガザ北部の病院はその機能の多くを失いつつあります。病院ならきっと安全だろう、攻撃を受けないだろうと、一縷の望みをかけて多くの人々が押し寄せていますが、病院へ直接、もしくは数十メートルといったかなり近いところへの攻撃が起きています。

この週末には、パレスチナ赤新月社の運営するアルクッズ病院への5度目避難命令が出され、その直後に50メートル離れた場所に着弾、強力な爆風で病院の窓ガラスが吹き飛びました。数百人の入院患者と14,000人が退避している中での着弾でした。

戦時のルールである国際人道法において、医療施設や医療従事者を攻撃することは明確に禁じられています。

パレスチナ赤新月社から国際社会に向けたSOS

 日本赤十字社は201910月よりパレスチナ赤新月社が運営するアルクッズ病院の医療技術支援を行っています。同病院はガザ地区の北部に位置し、現在も切迫した状況下で負傷者・患者のケアを継続しています。この週末にはパレスチナ赤新月社から関係者に宛てて、次のような緊急メッセージが届きました。

「我々が運営するアルクッズ病院に対して、当局より直ちに避難するよう警告の電話がありました。国際社会のみなさんに心からお願いがあります。国際人道法で医療機関は保護の対象となっていることを、みなさんからも訴えて下さい。病院では数百人にのぼる患者や、1万4,000人を超える避難者があり(病院内様子)、彼らを見捨てることは出来ません」

国際人道法は、全ての紛争当事者が、病院や医療従事者だけでなく、民間人や民用物が軍事行動から生じる危険に巻き込まれないよう努力することを定めています。事前の避難命令は出されましたが、アルクッズ病院の多くの負傷者・患者や、長距離の移動が困難な大勢の地域住民にとって、今いるところからの避難は現実的ではありません。こうした避難できない施設や人々から、軍事目標を遠ざける努力も同じく必要です。

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 アルクッズ病院に避難した人々©PRCS 及び近隣の爆撃で窓ガラスが割れてしまった病院の様子 ©PRCS

アルクッズ病院で今起きていること、スタッフからのメッセージ

アルクッズ病院にいたスタッフは次のように話しています。

「病院の周囲はかなり激しい攻撃を受け、その影響で窓ガラスが割れ天井が崩れ落ちている場所もあります。周囲で攻撃があるたびに負傷者が運び込まれ、病院スタッフは先の見えない状況に、すでに疲労困憊しています。それでも働き続ける現場のスタッフの強さ、勇気を支えられるよう、毎日連絡を取り合っています。

それでも状況は悪化の一途をたどっています。同僚の医師が勤務中に爆撃で負傷した子どもの対応をしましたが、その時に運ばれてきた負傷者が自分の子どもであることを知りました。一人はすでに亡くなっていて、もう一人は重体で集中治療室に入っています。こんなに辛いことがありますか?今ガザではこの瞬間にも同様の悲劇が起こっています

病院には歩く隙間もないくらいたくさんの人が避難しています。水も電気も制限され、衛生環境は悪く、感染症のアウトブレイク(流行)も起こっています。病院も攻撃対象とされ、避難命令が出されましたが、こんな状況で避難する場所なんてありません。

爆撃は昼夜問わず続き、煙が上がっています。ガザに安全な場所なんてありません。大切な人を亡くし、次は自分が爆撃を受けるのではないかと不安でたまらない毎日を送っています。この瞬間もどこかで爆撃があり、人の命が奪われています。そのほとんどは平穏な日々を望む一般市民です。

一人でも多くの人の命を守る、それだけのために、一人一人が、国際社会が、最善を尽くすことを心から願います

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(写真)いずれも負傷者を搬送するパレスチナ赤新月社のスタッフ。「私たちは単なる医療従事者ではなく、あなたの隣人であり、友人であり、家族です。私たちはガザに留まり、命を救うために全力を尽くしています。私たちは、すべての当事者が国際人道法を遵守し、医療従事者の安全を守ることを求めています(パレスチナ赤新月社Facebookより)」

 日本赤十字社は引き続き国際赤十字と連携して紛争当事者へ国際人道法の履行を強く訴えるとともに、現地の赤新月社を通じて苦しい状況に置かれた人びとへ支援を届けて参ります。

「イスラエル・ガザ人道危機救援金」

受付期間: 2023年10月17日(火)~2024年1月31日(水)

使途  : 赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟、イスラエル・ダビデの赤盾社、パレスチナ赤新月社、日本赤十字社が行う救援・復興支援活動等に使用されます。*周辺国等に人道危機が波及した場合には、その対応を含む。

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