【速報21】ウクライナ危機:日本赤十字社よりポーランドに国際救援心理社会的支援事業コーディネーターを派遣

日本赤十字社は、ウクライナ人道危機に対応するため、6月3日から職員1名を、ウクライナから最も多くの避難民が流入している隣接国であるポーランド共和国に派遣しています。

諏訪赤十字病院所属の 森光 玲雄 臨床心理士は国内外の災害・紛争現場における緊急時のこころのケア(心理社会的支援)活動の豊富な経験を持ち、ウクライナには2014年の紛争以降、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟) の避難民支援事業で複数回派遣された経験があります。今回のウクライナ人道危機対応ではウクライナからの避難民に対する心理社会的支援活動を支援するため、連盟の緊急救援要員として、ポーランドに派遣されました。

画像 連盟・ポーランド赤十字社のスタッフと森光臨床心理士(左から2番目)

ポーランドではポーランド赤十字社が中心となって、サービスセンター(現金給付の登録など、赤十字が提供できる支援の登録の場)の一角での子どもの遊び場の開設や、ウクライナ語での相談ダイヤルの開設、避難民母子向けのサマーキャンプの実施など様々な心理社会的支援活動を実施していますが、その活動の担い手である職員・ボランティアを支援することは不可欠です。森光心理士は、こうした最前線で活動するポーランド赤十字社スタッフに対してPFA(サイコロジカルファーストエイド)や子どもの支援のあり方についてのワークショップの実施や、今後中長期に向けてポーランド赤十字社が実施可能な心理社会的支援活動の活動計画の作成を担っています。

IMG_8476.JPG

ワークショップでリラクゼーション方法を伝達

IMG_8415 (1).JPG

ワークショップで折り紙を例に子ども向けの活動の展開方法を伝達

「避難民流入から5か月近くが経過し、スタッフに疲弊の色が見え始めています。ですからワークショップでは、必ずチームビルディングや互いが互いを支えあうピアサポートの要素も入れるようにしています。避難民に対する対応能力強化も必要ですが、彼ら自身も同じ人間としてケアを必要としているのです。避難民の方と直接対応する業務にあたっていると、衝撃的な体験を聞くことも多く心理的に影響を受けます。スタッフの中には、隣国ウクライナにルーツがあり家族の安否を案じている人もいます。危機的状況下で様々なストレスが蓄積されていくと、『燃え尽き症候群』を招いてしまう危険性もあります。避難民の方に寄り添うためには、対応スキルを育むとともに、担い手であるスタッフの心理社会的なレジリエンスを高めていくことが必要不可欠なのです」と森光心理士。

これまで4回のスタッフ向けワークショップを実施し、それ以外の時間でも、スタッフに対するヨガセッションを毎週企画したり、ポーランド国内の事業地のアセスメント訪問および、関係者との今後の事業づくりのすり合わせなど、コミュニケーションの時間を多く持ってきました。信頼関係を築いた仲間たちと、電話相談窓口の強化および避難民へのコミュニティセンター開設に向けた準備など中長期を見据えた支援も計画しています。

Look Listen Link 1.JPG

PFAの活動原則「みる、きく、つなぐ」を紹介する森光心理士(写真左)

P7120003.JPG

ウッジ支部に訪問し今後の事業について協議

「避難民の方々にお話をうかがうと、将来に対する見通しの持てなさや、多くの方が子連れで避難しているため、就学前のお子さんの日中のデイケアなしに職探しをすることが難しい、といった切実な声をよく耳にします。国内に残した家族の安否を絶えず心配しながら、不慣れな土地で孤立してしまうと精神的にまいってくることもあるようです。聞き取り調査によってこうした現実的なニーズを確認しながら、日々ポーランド赤十字社や連盟チームスタッフと中長期を見据えた支援活動のデザインを検討しています。また、私自身、ウクライナ時代の避難民支援から教わった学びのバトンを渡すことも意識しながら、少しでも避難民の方々の心の健康の保護・回復に貢献できるような活動の基盤づくりに尽力していきたいと考えています。」

画像 ワークショップでペアワークをする参加者と森光心理士(写真中央左)

今までの速報でも国際赤十字全体として、様々な場所で心理社会的支援の活動を進めていることを報告させていただきました。緊急時だけではなく、今後中長期に向けて、このような避難民の方に寄り添った活動は、継続して実施すべき大切な活動の一つです。

今後とも、皆さまからのご支援・ご協力のほどどうぞよろしくお願いいたします。

本ニュースのPDFはこちら(615KB)

「ウクライナ人道危機救援金」

受付期間: 2022年3月2日(水)~2022年9月30日(金)

使途  : 国際赤十字・赤新月社連盟、赤十字国際委員会、および各国赤十字・赤新月社が実施する、ウクライナでの人道危機対応及びウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するために使われます。