ミャンマーで続く赤十字の人道支援活動

今年2月1日に起きた軍部によるクーデターに対し、ヤンゴンをはじめ各地で市民の抗議デモが発生し、警察・国軍が発砲する状況が続いてます。3カ月以上たった今でも事態の収拾にはいたっていません。厳しい状況の中、ミャンマー赤十字社は人道支援活動を続けています。

現地はいま

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現地では、病院や公衆衛生サービスはかろうじて機能していますが、食料やその他の商品が不足し、銀行、輸送業、サプライチェーンなどではいまも大きな混乱に陥っています。そして雇用の損失、生活必需品の価格上昇、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、貧困のレベルが悪化しています。現地人権団体(AAPP)の報告によると、これまでに死者は800人以上(5月26日現在)、新型コロナウイルスのさらなる感染拡大も懸念されています(感染者数:14万3,216人、死者数:3,216人 5月26日現在 WHO報告)。

また少数民族武装勢力の多くが国軍を非難、それに対して南東部カイン州では軍による空爆が連日行われ、約4万人が避難民としてタイ国境地帯に避難(国内避難民)、3,000人以上が国境を越えて隣国のタイに避難している状況です(4月26日現在 UNOCHA報告)

これまでの国際赤十字の対応

赤十字国際委員会(ICRC)と国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)は、3月28日、4月1日にそれぞれ声明を発表し、警察・軍による武力行使ルールの遵守、医療従事者・ボランティア・救急車等の安全の確保、逮捕者・被拘束者に対する人道的扱い、遺体の尊厳の保持等を訴えました。

現地のICRC代表部は、被拘束者の家族のために安否連絡ホットラインを設置し、ミャンマー当局との対話や、医療や安全管理などミャンマー赤十字社の支援を続けています。

また連盟は、3月12日に災害対応緊急基金(DREF)より18万1,395スイスフラン(約2,100万円)を拠出し、ミャンマー赤十字社の活動を支援しました。さらに5月10日には、同社と調整の上、450万スイスフラン(約5億4,500万円)の国際支援要請(緊急救援アピール)を発出しました。日本赤十字社はこのアピールに応え、1,000万円の資金援助を行いました。

幅広いミャンマー赤十字社の活動

ミャンマー赤十字社は、2月1日以降、赤十字ボランティア・救急隊員などを動員し、全国各地で負傷した市民の救護活動を行っています。2,000人以上の赤十字ボランティアが約400の応急処置ポストを運営し、3か月間に約3,000人に救命・救急サービスを提供しました。何百人もの人々を病院に搬送し、銃弾による負傷を含む様々な負傷者の処置にあたってきました。

また応急手当を行うだけでなく、暴力から逃れたり、住宅火災で家や財産を失った避難民の家族に食料、毛布、蚊帳、個人衛生用品を配布したり、こころのケアも行っています。さらに、これからのモンスーン・シーズン(5~10月)にかかる災害への備えなども実施しています。

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©IFRC

危険と隣り合わせの中で活動する赤十字ボランティア

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©IFRC

最前線で活動する赤十字の救急隊員やボランティアはいのちの危険にさらされることはないのでしょうか。残念ながら、ミャンマー赤十字社の救急隊員等が不当に逮捕されたり、負傷したり、赤十字社の救急車が破壊される事態も確認されています。赤十字ボランティア、ハイン・ラット・ナインさんは次のように語ります。

「今は多くの団体が自由に動き回れません。その中でも赤十字は、救急サービスを提供できる数少ない組織の1つです。私は赤十字のメンバーであることを誇りに思っています。危険なことはわかっていますが、一人でも多くの人々を助けたい。」

医療施設や、医療従事者、そして人道支援スタッフは、決して攻撃の対象となってはいけません。厳しい状況であるからこそ、私たち赤十字は、基本原則(特に人道、公平、中立)を守りながら人道支援活動を展開しています。

日本赤十字社は、現地の人々の声に耳を傾けながら、支援を続ける仲間たちの安全確保と人道支援の尊重を強く訴えます。

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