5月8日は世界赤十字デー ~何があっても立ち止まらない~

 「困っている人に手を差し伸べたいけれど、一人では手に負えないのではないか、、、」という悩みは、きっと誰しも抱いたことがあるのではないでしょうか。19世紀中頃のヨーロッパでは、誰しもが戦争に巻き込まれ、自分自身や家族、友人が戦争によって傷つき、命を失う可能性がありました。戦争で怪我をした兵士を見て、彼らを愛する家族が故郷で心配していることを想い、心を痛める人々がいましたが、インターネットなどのない時代、そんな想いを持っているのは自分だけではないか、と声をあげることを諦め沈黙する人が多かったのです。歴史は、勇気ある声をきっかけに、人々の“救いたい”という気持ちが結集することを待っていました。

 1859年、農業開拓事業を手がけていたスイスの若きビジネスマンが、イタリアのソルフェリーノの戦場で、4万人にのぼる死傷者を目の当たりにした時、「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である。人間同士としてその尊い生命は救われなければならない」との信念を抱きました。そして、地元の住民達ともに負傷した兵士を懸命に救助しました。スイスに戻った彼は、戦争の悲惨さと無償で救助する思いの尊さを訴えるために、著書『ソルフェリーノの思い出』を出版。戦場の負傷者と病人は敵味方の差別なく救護すること、そのための救護団体を平時から各国に組織すること、この目的のために国際的な条約を締結しておくことの必要性を説き、その実現のために奔走しました。そうして設立された組織が、150年以上経った今も世界中で活動を展開している赤十字で、このビジネスマンが創立者のアンリー・デュナンです。5月8日はアンリー・デュナンの誕生日にちなんで、誰かを救うために行動を呼びかける「世界赤十字デー」としています。

 アンリー・デュナンは、お金ではなく、人の命を救うことにやり甲斐を見出すことができる人々こそ世界を救う、と考えました。危機の時には、どこにでもいる私たちのような人々が、困っている人々に手を差し伸べ、政治的立場、人種、経済力の区別なく支え合うことが大事だということはどの時代にも通じるものです。今年、国際赤十字は、世界赤十字デーのテーマを「何があっても立ち止まらない(unstoppable)」としました。新型コロナウイルス感染症の蔓延、人種差別、政治的立場の違いによる争いなど、人類には大きな困難が立ちはだかっていますが、“支援を必要とする人びとを救うために私たちは決して屈しない、立ち止まることはない”、という強い決意がこめられています。

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2021年世界赤十字デー動画:ビデオはこちら

“どこでも、いつでも、だれにでも”

 世界各地で日々、人びとに寄り添うために奮闘する、「何があっても立ち止まらない」世界各国の赤十字の仲間たちの動画をご紹介します。

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バングラデシュでは、ミャンマーからの避難民キャンプで発生した火災の復旧作業を進めています。ビデオはこちら

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ボスニア・ヘルツェゴビナでは、中東・アフリカ地域からの避難民およそ5万人に対して、食料、マスク、消毒アルコールなどの支援物資を配給しています。ビデオはこちら

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エルサルバドルでは、コロナ禍で人道支援を続けることは、私たち人類にとっての成長のチャンスと言っています。ビデオはこちら

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コンゴ民主共和国では、学生ボランティアが手洗いの大切さや新型コロナウイルス感染症の予防方法の普及を行っています。ビデオはこちら

 日本では、約122万人の赤十字ボランティアが全国で活躍しています。赤十字ボランティアの一人ひとりが、世界の赤十字の仲間達と同じ志で繋がっています。2021年も引き続き、試練の年になるかもしれませんが、私たちは決して立ち止まりません。日本赤十字社は、皆さんの“救いたい”、という思いを形にして、世界の赤十字の仲間たちと共に、本当に支援を必要としている人々にお届けします。
 引き続き、日本赤十字社へのご支援をよろしくお願い致します。

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