バングラデシュ:共に活動する避難民ボランティアの想い

壊れた診療所の看板をボランティア自らで修復

強い雨風によって壊れた診療所の看板をボランティア自らで修復

日本赤十字社(以下、日赤)は、2017年8月25日にミャンマー・ラカイン州で発生した暴力行為を逃れ、隣国バングラデシュへ避難してきた人々を支援するため、同年9月から緊急支援を開始しました。現在は中期支援へ切り替わり、バングラデシュ赤新月社(以下、バ赤)と共に、診療所の運営等を行っています。その診療所では、バ赤の医療スタッフ10人と避難民ボランティア30人が、お互い協力し合いながら、運営を支えています。
 活動を開始してから約2年が経とうとしていますが、彼らのほとんどは当初から活動を続けています。ボランティア自身も避難民であり、様々な想いを持ちながら日々、活動を続けています。今回は、現地へ派遣中の山本美紗看護師(日本赤十字社医療センター)が、ボランティアに行ったインタビューを通じ、日本の皆さんへそれぞれの想いをお届けします。

※国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、『ロヒンギャ』という表現を使用しないこととしています。

ゴニさん:37歳男性。4人の子供を持つ父。ミャンマーでは学校や人道支援団体で働く。

ゴニさん(右)と山本看護師

サイクロン対策について話し合うゴニさん(右)と山本看護師

診療所での役割は何ですか?
ボランティアのリーダーを務めています。バングラデシュ人と私たちの言葉が異なるので通訳することもあります。医療スタッフ、ボランティア、日赤要員と診療所の運営について話し合います。

普段どういう想いで活動していますか?
患者さんのことを第一に考えています。緊急度の高い患者さんがなるべく早く医師の診察ができるように医療スタッフと協力して対応しています。私たちの診療所を選んでわざわざ遠くから来てくれている患者さんがいるので、とても嬉しいです。私たちがここにいる限りはこの診療所で診療を続けていきたいし、より良い診療所にしていきたいと思います。

約2年が経とうとしていますが、何か変わったことはありますか?
ミャンマーに住んでいるときは牛や土地を持っていましたが、すべてを手放してここへ来ました。当初は仕事もお金も生活物品もなく、何も分からない状況でした。家族を守ることも難しく、とてもつらかったです。この2年でたくさんのことが改善したと思います。この活動を通して、支援を最も必要としている人や家族をサポートすることが出来るようになったことは、とても嬉しいことです。
 緊急支援から中長期支援へと切り替わりましたが、私たちにとってはまだ緊急の状態だと思っています。私たちには選択肢がありません。キャンプの外に出ることが出来ず、十分な医療サービスや教育を受けることが出来ないのです。支援団体の活動が少なくなってしまうと、私たちはとても厳しい状況になります。そのため私たちはできる限り活動を継続していきたいと思います。

タラさん:18歳女性。6人兄妹の長女。夢は看護師。

タラさん

妊産婦フォローアップについてミーティングするタラさん(左)

診療所での役割は何ですか?
通訳をしています。特に、妊産婦、新生児、家族計画相談のときなど女性の患者さんを対応しています。私たちのほとんどがイスラム教徒なので、女性に配慮してサポートをしています。

今の役割についてどう思いますか?
私にとってはこの役割につけたことはとても幸運です。最初は全く医療のことが分かりませんでした。専門知識を持った人たちと一緒に活動することで知識がたくさん身についたと思います。避難民の人々を直接サポートすることが出来て嬉しいです。一緒に活動している仲間ともコミュニケーションをよくとれているので、それは患者さんにとっても良いことだと思います。どうすれば患者さんが少しでも楽に、状態がよくなるようになるかを常に考えながらサポートしています。こちらに来てから、将来は看護師さんになりたいなって思うようになりました。

今困っていることはありますか?
私の家は丘の上にあります。家と言っても、竹とビニールシートで出来た簡易なものです。そのため、強い風や雨を直接受けるので家が壊れることがあります。雨の影響で地面が滑りやすくなり、とても危険です。診療所と家はとても近いのですが、今は雨季なので、足元が悪く通勤するのも一苦労です。

家族はこの活動についてどういう反応をしていますか?
父親はバングラデシュに来てから病気を患い仕事が出来なくなりました。妹と弟が6人いて私は長女なので、家族のためにお金を稼ぐ必要があり、とても責任を感じています。家族はここで活動し始めてから私がたくましくなり、色々な知識を得ているので、誇りに思ってくれています。

アジズさん:24歳男性。6人兄妹の長男。ミャンマーでは家庭教師として働く。

アジズさん

薬の服用方法を患者に説明するアジズさん(中央)

診療所での役割は何ですか?
活動当初は日本人の医師がたくさんいたので、通訳として診療をサポートしていました。今は薬局で薬を患者さんに渡しています。患者さんがきちんと理解をしてくれるようになるべく丁寧に説明するようにしています。今では薬の知識もたくさんつきました。

診療所のことをどう思いますか?
患者さんが良い医療サービスを受けるために、私たちの診療所を信頼して選んで来てくれているので、とても嬉しいです。もし自分が患者だとしてもここに来たいと思いますね。

今まで診療所で活動していて大変な思いをしたことはありますか?
とくに大変だと思ったことはありません。みんなと協力し合いながらコミュニケーションもお互いよくとれているので、良い思い出がたくさんありますね。大変な思いをしたのは、ここまでくる道のりです。5、6日かけて国境を越えてきました。山を越えてボートを使ってきました。銃で撃たれる人たちを直接目にしてとてもショックを受けました。すぐに安全なところに逃げる必要があると感じ、家族と一緒にここへきました。

ここで活動し始めてから何か変化がありましたか?
当初はとても緊張していました。今では自分自身が大きく変わったと思います。たくさんの知識を得ることができ、貴重な経験をたくさんしました。すべて自分自身の自信にもつながっています。新しい才能をここで見つけることもでき、今の活動が大好きです。まだ問題は解決していませんが、今は家族も私自身も大丈夫です。ミャンマーでは自分自身のビジネスを成功させて大きな家を持ちたいと思っていました。その夢を失ってしまったけれど、今では大切な人に適切にアドバイスができるようになりたいと思います。あとは、結婚をして子どもも欲しいです。子どもには不自由なく過ごせるように努力したいなと思っています。

避難民ボランティアたちから日本の皆さんへメッセージ

まず、皆さんに感謝を伝えたいです。たくさんのサポートをしてくれて本当に嬉しいです。ありがとうございます。日赤の皆さんがいち早く医療支援をしてくれて本当に助かりました。これからも継続的に支援をして下さることを願っています。

共に活動している避難民ボランティアたちは、とても優しく温かい人ばかりです。より良い医療サービスを提供するために懸命に活動しています。
皆さまのご支援、どうぞよろしくお願いします。

国際赤十字は第7回アフリカ開発会議に参加します! 公式サイドイベント開催決定!奮ってご参加ください

第7回アフリカ開発会議

(詳しくはこちらをクリック)http://jp.icrc.org/event/ticad7-universal-health-coverage/

本ニュースの印刷用PDF版はこちら(764KB).pdf