「苦しんでいる人を救いたい」その思いをカタチに     ~世界に191ある赤十字のネットワークを生かして~  

「インドの貧困層支援のために寄付をしたい」と、鶴岡様ご夫妻が日本赤十字社(以下、日赤)を訪ねてくださったのは2016年10月のことです。ご主人は、商社マンとして22年間インドに駐在していた方。駐在中に貧困層の子どもたちが苦しむ姿を目の当たりにし、彼らのために何かできないか、と帰国後もずっと考えていたそうです。

住民への聞き取り調査をするインド赤職員

住民への聞き取り調査をするインド赤職員
(右から3、5番目)

そこで、日赤が国際赤十字・赤新月社連盟を通じてインド赤十字社(以下、インド赤)に確認したところ、現地のニーズと、鶴岡様の「苦しんでいる人を救いたい」という思いが一致しました。そのため、2017年4月から2019年6月までの27カ月間、インド赤が実施する事業にご寄付を活用させていただくことになりました。今回は、現地のニーズと寄付者の思いをつないだ一例をご紹介します。

結核患者数、世界一

ハリヤナ州で結核対策事業に熱心に取り組むインド赤職員とボランティア

ハリヤナ州で結核対策事業に熱心に取り組むインド赤職員(左から1、2番目)とボランティア

インドには約220万人の結核患者がいます。これは、世界の結核患者数の約25%にあたり、インドは世界で最も結核患者の多い国です。そのような中、インド赤は、スラムで暮らす社会的弱者を対象にした結核対策事業を実施しています。結核は、今や治療可能な病気。しかし、インド赤担当者によれば、結核は治療に時間がかかるため、特に貧困地域では完治させるのが難しいそうです。また、貧困層の結核患者が職を求めて他地域に移り住む結果、患者がどこへ移動したのか行政側が把握できなくなってしまいます。患者が完治するまでその居所を把握することが重要であり、インド赤は行政の補助機関として、患者の追跡調査の役割も担っています。さらに、結核患者への偏見や差別をなくすための啓発活動や、活動を支えるボランティアの育成等を実施しており、こうした活動のために鶴岡様のご寄付が活かされました。2017年にはグジャラート州、ウッタル・プラデーシュ州、カルナータカ州、ハリヤナ州の4州で280人の結核患者を支援し、28人のボランティアと8人の職員を育成することができました。

6億人が屋外排泄

研修会で自身の経験を共有するボランティア

研修会で自身の経験を共有するボランティア

一方、インドの人口は約13億人。インドで屋外排泄をする人は約6億人。その数は、世界全体で屋外排泄をする人の約6割を占めます。インドのモディ首相は、2019年までに「屋外排泄ゼロ」を目指し、トイレの設置を促進しています。 しかし、屋外排泄が当たり前と考えている人々にトイレで用を足すことを習慣化してもらうためには、トイレの設置だけでは不十分です。そのため、トイレの設置だけでなく、水・衛生に関する知識や技能を根気良く普及するボランティアの育成にも鶴岡様のご寄付が役立ちました。今後共、インド国内の15州で、人口の1%を目処に草の根のボランティアを育成していく予定です。

人へ、未来へ、思いをつなぐ

人材育成に思いを託す鶴岡様

人材育成に思いを託す鶴岡様

支援開始から8カ月経過した2018年1月、現地での視察を終えた日赤職員が鶴岡様へ活動状況の中間報告をしに、お宅にお邪魔しました。報告を受けた鶴岡様は、「お金には限りがあり、使えば無くなってしまいます。ですから、寄付をきっかけとして得られた成果を、持続させる体制が大切だと思っています。その意味で、ボランティア等の人材育成に希望を感じます」と、仰いました。ご寄付をもとに育成された人材が、地域に根ざして知識や技能の普及を続ける未来へ。日赤は、世界に191ある赤十字のネットワークを生かし、今後も「苦しんでいる人を救いたい」という思いをつなげていきます。

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