日本赤十字社・血液事業における事態の経緯と今後の対応について
日本赤十字社血液事業本部
このたび、日本赤十字社の血液事業において続けて発生している事態について、国民の皆さまにお詫びを申し上げますとともに、概要及び再発防止策についてご報告いたします。
血液事業は善意の献血により成り立っており、国内唯一の採血事業者及び輸血用血液製剤の製造販売事業者として今般の事態に対する原因究明及び再発防止策の徹底、厚生労働省をはじめとする関係者への報告・公表のあり方などを見直してまいります。
1 事態の概要・原因と再発防止策
(1)血漿製剤の保管温度逸脱
【概要】
令和7年5月11日、東京都赤十字血液センター辰巳供給出張所において、冷凍庫への電力供給が遮断されたため、一時的に保管温度の逸脱があった。そのため、保管していた輸血用血液製剤の新鮮凍結血漿13,748本は、輸血用血液製剤としては使用できないと判断し、血漿分画製剤用の血漿として転用する予定としている。
本件については、6月10日に厚生労働省へ報告し、7月23日に日本赤十字社本社ホームページで公表した。
【原因】
令和6年5月15日、設備更新時に設備工事事業者が冷凍庫内の温度をコントロールする制御盤内に規格外の端子台を取り付けたことにより、当該端子台基盤が焼損した。その結果、一部制御配線が断線し、電力が遮断されたため冷凍庫の冷凍機能が停止した。
【講じた対策】
〇各血液センターに設置されている血液を保管する設備及び機器に、必要電圧に耐えられない規格の端子台が取り付けられていないか、緊急点検を実施した。また、血液を保管する設備及び機器の設置状況について、電気設備設計図等と照合する点検を実施し、異常がないことを確認した。
〇各血液センターに設置されている温度管理を要する保管機器等の全てについて、異常時における連絡体制及び夜間休日対応がマニュアルに明記されていることを確認するとともに、自己点検用のチェックリストに温度管理を要する保管機器等の異常時における連絡体制及び夜間休日対応の確認項目を追加した。
〇保管機器等の新設・更新等における引渡時の確認業務については、契約書、仕様書・設計書その他関係書類等に基づいて立会検査を行うことを指示した。
(2)献血血液の搬送遅延
【概要】
令和7年8月16日、JR大森駅にて実施された移動採血車による献血において、会場から関東甲信越ブロック血液センター(以下「辰巳製造所」)への献血血液の搬送時に不備があり、長時間にわたり39名様分の血液が適切に管理されない状態となった。
通常、当該献血会場においては、血液引き渡し後1時間から2時間程度で辰巳製造所へ搬送されるが、今回、搬送事業者の搬送作業において不測の事態が生じ、かつ、その事態に対して血液センターの対応にも不備があり、最大7時間程度の遅延が発生した。
当該血液は品質が保証できないと判断したため、輸血を受ける患者様の安全を最優先に考え、すべてを使用しないこととした。
本件については、8月18日に厚生労働省へ報告し、8月28日に東京都赤十字血液センターホームページで公表した。
【原因】
搬送事業者の社員が、献血会場から献血血液及び検査用検体を回収し、駐車場に駐車した搬送車両に戻ろうとしたところ、駐車場所を失念しており、探し出すのに長時間を要した。また、携帯電話は当該搬送車両内に置いたままだったため、搬送が遅延することについて、血液センターに連絡をすることが出来なかった。
加えて、搬送の遅延に対して搬送事業者からの報告がなかった場合の、血液センターから搬送事業者へ連絡する手順が規定されていなかった。
【講じた対策】
献血血液及び検査用検体の搬送体制や不測の事態発生時の連絡体制を含め、各血液センターにおいて現行の手順を確認し、関係職員へ周知徹底した。
(3)血小板振とう機の振とう停止
【概要】
令和7年9月1日、兵庫県赤十字血液センター豊岡出張所において、振とう保管が必要な血小板製剤が約15時間半にわたり振とうされずに保管されていた。
血小板製剤の保管条件を逸脱したため、対象となる5本(献血者5名様分)については、血小板製剤としては使用できないと判断し、血漿分画製剤用の血漿として転用する予定としている。
本件については、9月4日に厚生労働省へ報告し、9月9日に兵庫県赤十字血液センターホームページで公表した。
【原因】
血液製剤の保管機器の月次点検において、保管機器内にある振とう装置に手が接触するのを避けるため、本来電源を切るべきではない振とう装置の電源を切り、点検後に電源を入れることを失念し15時間半にわたり振とう装置が作動していなかった。
【講じた対策】
各血液センターにおいて、標準作業手順書等に基づき、保管管理及び点検の手順を確認し、併せて関係する職員に周知徹底した。
(4)使用済針のついた採血バッグの誤使用
【概要】
令和7年9月2日、北海道赤十字血液センター管内の移動献血会場において、直前の献血者様の採血を開始したところ、血液の流出が確認できなかったため採血を中止した。その後、その際使用した採血針がついた採血バッグを誤ってそのまま次の献血者様に使用し、穿刺してしまった。
献血者様の健康への影響を直ちに確認するため、事故直後、使用済み採血針のついた採血バッグの針を穿刺した献血者様の同意を得て血液検査を実施し、今回の検査では異常は認められなかった。引き続き、健康被害の有無を把握するため、今後6ヵ月間の定期的な検査と経過観察を実施する。
本件については、9月3日に厚生労働省へ報告し、9月5日に北海道赤十字血液センターホームページで公表した。
【原因】
使用した採血針がついた採血バッグは、本来であれば採血を中止した時点ですぐに廃棄すべきであったが廃棄したものと思い込み、そのまま次の献血者様に使用してしまった。
【講じた対策】
各血液センターにおいて、使用済み採血針(採血バッグ)の取り扱いにかかる手順について関係職員に周知徹底した。
(5)赤血球製剤搬送時の保管温度逸脱
【概要】
令和7年9月5日、九州ブロック血液センター(製造所)において、福岡県赤十字血液センター(供給施設)に血液製剤を搬送するために輸送容器に収納した際に、規定数量の保冷材を同梱せず搬送した。
適切な保管温度で搬送されていないと判断し、容器に収納されていた赤血球製剤(2単位33本(献血者33名様分))は、輸血用血液製剤として使用しないこととした。
本件については、9月8日に厚生労働省へ報告し、9月19日に九州ブロック血液センターホームページで公表した。
【原因】
規定された数量の保冷剤が収納されていることの、最終確認を怠ってしまった。
【講じた対策】
各血液センターにおいて、血液製剤を取り扱う全職員への教育を徹底するとともに、血液製剤の梱包に関する手順を再徹底した。
2 今般の事態を受けた血液事業全般の点検と再発防止策の徹底
(1)職員の意識改革
・今回発生した事態を職員一人ひとりが自分事として捉え、血液事業が献血者の皆さまの善意により成り立っていること、国内唯一の採血事業者及び輸血用血液製剤の製造販売事業者であることの自覚をもって日々の業務に従事するよう、改めて血液事業に従事する全職員に対し、あらゆる機会を捉えて徹底いたします。
(2)再発防止策の策定・徹底
・今回発生した一連の事態に対し再発防止策を策定し、各血液センターに徹底してまいります。続けて、再発防止策の実施を含め業務手順通りに業務が遂行されているか、各血液センターの一斉点検を実施し、手順遵守を徹底してまいります。併せて、手順書、各種基準等の整備を進めるとともに、それらの遵守の徹底を図ってまいります。
・今般の事態に係る委託事業者から再発防止策を提出させ、再発防止を徹底させます。併せて、献血血液を取り扱う心得・取り扱い等の教育を徹底します。
・委託事業者の選定基準、契約内容及び委託事業者への教育訓練などの状況を全国統一的に点検し、手順書、各種基準等の整備を進めるとともに、それらの遵守の徹底を図ってまいります。
・これらの再発防止策について、実施状況を適時適切に点検し、その結果を踏まえて必要に応じて改善・強化を図ってまいります。
(3)ガバナンスの強化
・血液事業に関する事故や不適切な事態が生じた場合の報告、公表、対応措置の実施等に対する手順等の点検及び整備を進め、迅速な意思決定及び対応が図られるよう体制を確立します。
・血液事業の安全管理体制を確固たるものとするため、その統括を目的とした血液事業本部の組織強化を行い、血液事業の遂行にかかる事故や不適切な事態の未然防止・再発防止及び血液事業安全の意識醸成を徹底します。
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