2023 年度を振り返って ~総括編 第1号~

 0306-1.png2023年度(令和5年度)は、昨年度末に起きたトルコ・シリア地震の救援対応に続き、スーダンやイスラエル・ガザでの武力衝突、ミャンマー・バングラデシュのサイクロン、ハワイの火災、モロッコやアフガニスタンでの地震、リビア洪水など、世界各地で様々な人道危機に直面してきました。

 日本赤十字社(日赤)は、このように紛争・災害・病気などで危機的な状況にさらされている人びとのいのちと健康、尊厳を守るため、みなさまからのご協力のもと、世界191の国や地域にある赤十字・赤新月社と協力して、365日支援活動を続けています。

 ロシア・ウクライナの国際的武力紛争をはじめ、2022年に世界では紛争や迫害などで避難を余儀なくされた人々が初めて1億人を超えました。本年度は「赤十字は動いている!~今、危機に瀕している1億人の命をつなぐために。~」をスローガンに、「NHK海外たすけあい」などを通して、現在も増え続けてしまっている難民・避難民の現状をお伝えして参りました。

 今月の赤十字国際ニュースでは、1年を振り返りながら改めて本年度の活動について4回(第1号:人道の普及、第2号:開発協力、第3号:国際救援、第4号:派遣・研修・安全管理)にわたり皆様にお伝えしていきます。

0306-2.jpg

0306-3.jpg

(写真)紛争などによって、故郷や住みなれた家から避難を余儀なくされている人びとの現状を知ってもらうため「#ほしいものリスト」を新宿駅・Webで公開しました。
※海外たすけあいキャンペーン

国際人道法等の普及

 ロシア・ウクライナの国際的武力紛争やイスラエル・ガザの武力衝突による事態の深刻化に伴い、民間人の犠牲や核兵器が使われるリスク等について世間の関心が高まる中、全国の各支部・施設にて、昨今の人道危機における赤十字の活動報告と国際人道法の普及に努めました。

 2024年2月15日から16日には、日赤職員を対象に国際人道法普及セミナーを開催しました。国際人道法の普及を担う職員を養成するための本セミナーには、能登半島地震対応の最中ではありましたが、全国から約50人の職員が参加しました。今回のセミナーでは、日本赤十字看護大学/日本赤十字国際人道研究センター、赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表部、外務省総合外交政策局人権人道課、防衛省陸上幕僚監部法務官に加え、新たに外務省軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課をお招きし、日本政府の核兵器廃絶に向けた取り組みについて講義いただきました。2日間のセミナーの最後には参加者がグループに分かれて今後国際人道法をどのように普及するかをまとめ、意見交換をしました。参加者一人ひとりが日赤職員として紛争下での人道支援を下支えする国際人道法の遵守と普及の必要性を実感し、これからの各支部・施設での取り組みに決意を新たにしました。

核兵器廃絶にむけて 

 2023年5月19日から21日にかけて行われた広島でのG7サミットに向けて、ICRC総裁 ミリアナ・スポリアリッチと日赤社長 清家篤の共同声明を発出、核兵器がもたらす悲惨な結末に言及し、もう二度と使用されることにないよう今こそ行動すべきであると訴えかけました。また、スポリアリッチ総裁は6月に日本を訪れ、日本政府、日赤との連携強化を確認しました。

 また、2023年11月7日に日赤と米国赤十字社(米赤)は、ICRC駐日代表部の協力のもと、オンラインイベント「Nuclear Weapons: A Japanese & American Youth Perspective(核兵器:日本と米国のユースの視点から)」を開催しました。日赤代表ユース2名、米赤代表ユース3名、ICRC代表ユース1名が核兵器にまつわるテーマでディスカッションを行いました。レポート及び録画動画はこちらからご確認ください。

20240301-2ed3e6172028acff5f909325337cafa683ac89e6.jpg(写真)米赤との共同イベントの様子

 11月27日から12月1日には、ニューヨーク国際連合本部にて核兵器禁止条約第2回締約国会議がメキシコ政府主催のもと開催され、日赤からも3名の職員がオブザーバー参加しました。また会議中は身内に被ばく者のいる日赤職員が国際赤十字・赤新月運動を代表してステートメントを読み上げました。日赤は引き続き国際赤十字・赤新月運動として、唯一の被ばく国として核兵器廃絶を訴えていきます。(会議に参加した職員のレポートはこちら

国際赤十字の動き

 世界191の国や地域にある赤十字社・赤新月社は、各組織の活動経験に基づく知見を今後の行動規範にまとめて、国際赤十字・赤新月運動を一層発展させていくため、各地域や赤十字全体で定期的に会議を開催し、課題の共有や重要な意思決定などを行っています。

 7月 東アジア地域赤十字社幹部会議に出席。

   災害が甚大化している中、東アジアでの連携強化や相互の課題などについて協議を行いました。

 11月 アジア・大洋州地域会議に出席。

 災害発生数、死者数が世界の他の地域に比べて最も多いアジア・大洋州において、各社が災害や危機に対し、どのように備えるべきかについて、赤十字社間の協力関係強化など様々な視点から議論を行いました。

20240301-74b2a9d1037f9041d7c26bb9d2838ee864a4a9fb.jpg(写真)アジア・大洋州地域会議の様子(ベトナム・ハノイ) ©ベトナム赤十字社

 12月 国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)新会長にKate Forbes(ケイト・フォーブス)氏が着任。連盟は191の加盟社からなる赤十字の連合体であり、選挙により会長が選ばれます。今回は、アメリカ赤十字社のフォーブス氏が会長に選任されました。(連盟に掲載されたニュースはこちら

 日本赤十字社は、2022年に連盟アジア・大洋州地域の理事社に選出されました。年2回の連盟理事会に参加して連盟のガバナンスに深くかかわるとともに、2年に一度開催され、赤十字全体の方針を決定する連盟総会でも積極的な役割を果たしています。こうした機会を通じ、アジア・大洋州地域の各国が国内外の活動で得た学びを国際赤十字へ提言していくと共に、国際赤十字の方針や知見を同地域の国内事業に反映し、より良い事業展開を目指しています。

 2024年度は、赤十字・赤新月国際会議(4年ごとに開催)が開催されます。この会議は、ICRC、連盟及び各国赤十字・赤新月社の代表に加え、ジュネーブ諸条約締約国政府の代表が参加する国際赤十字・赤新月運動の最高議決機関です。2023年度の地域会議で話し合われたことが本国際会議にも反映され、国際人道法の遵守に向けた普遍的な文化の醸成等が取り上げられ、世界の赤十字と政府との間で合意された内容が決議として採択される予定です。

女性の活躍推進を通じたダイバーシティ推進(GLOW Red)

画像

 人道危機下において、多様な人々に必要な支援を届けられるよう、赤十字の組織として多様性を尊重する風土の醸成にも取り組んでいます。
 6月にはモンゴル・ウランバートルにて開催されたGLOW Red(グローレッド:Global Network for Women leaders in the Red Cross Red Crescent Movement)の第4次会合に日赤職員が参加しました。GLOW Redは女性のエンパワーメントを推進すること、幹部職における男女の機会平等を強化すること、またダイバーシティ(多様性)の重要性を積極的に提言する赤十字のネットワークです。本会合では、次の5年間の新たな戦略と活動計画を策定しました。

(GLOW Redの詳細及び会合のレポートはこちら

画像

 11月に開催されたアジア・大洋州地域会議中には、GLOW Redのサイドイベントが設けられました。このイベントでは日赤職員がモデレーターとなり、災害対応における女性リーダーが果たすべき役割の重要性について広く参加者同士の意見交換がなされました。また、会議開催期間中は会議場内にGLOW Redのブースを設置、会議参加者から女性リーダーの活躍推進についてのメッセージをその場で紙に書いてもらって展示しました。

本ニュースのPDFはこちら(674KB)