国際支援の人材と資機材を活用した能登半島地震対応 ~断水が続く被災地で生活用水の提供~

 日本赤十字社は、令和6年能登半島地震の影響により断水が続いている石川県七尾市内の避難所において、1月22日から給水衛生支援を行っています。

画像 「いままで当たり前と思っていたことですが、蛇口から水が出る」と喜んでくださった方

画像 「洗濯やお風呂は車で家族や親戚、友人のところまで行ってて1日がかりだったので、 ここで済ませられるようになるのは助かります」とお話してくださった方たち

 日本赤十字社は、海外での災害等を支援するための人材と資機材を有しており、そのノウハウを生かして、これまで、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨災害などの国内災害においても、断水で困っている避難所等において少しでも環境を整備しようと、生活用水の供給、温水シャワー、洗濯機の設置を行った実績がありました。

 七尾市からの支援要請を受けた日本赤十字社石川県支部は、日赤本社に給水衛生支援班の出動を要請。1月15日に、本社と熊本赤十字病院から国内外での支援経験を有する計3人の調査班が石川県に派遣され、避難所となっている七尾市立山王小学校と和倉小学校において、生活用水を確保し、手洗い場、シャワー、洗濯機をそれぞれ設置して、被災者の皆様にお使い頂けるよう現地の関係者と調整しました。

 調査班の確認を経て、資機材の搬入が始まりました。熊本赤十字病院、大阪赤十字病院、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院から追加の3人が加わり(設置班)、お湯の出る手洗い場、温水シャワー(2基)、洗濯機(2台)をそれぞれの小学校に設置しました。校内アナウンスをかけてもらい、避難されている方たち自らも設置場所の掃除に協力してくださったり、地域の共助として避難所となっている学校にボランティアに来ている方にも協力していただき、無事に設置することができました。

画像 資機材の設置の様子

 設置をしている時、小学校に避難されている男性が、「最初の地震で親戚に安否確認していたら、自分の方に大きい地震が来ました。妻と子供と親、家族みんな無事で当日に避難してきました。ここの小学校には最初観光で宿泊しに来ていた人たちを含めてすごい数の人が避難していました。旅館が潰れてしまったので仕事がなくなってしまいました。家族みんなとこれからどうしていったらいいか分からないのですが、命さえあればなんとかなると思ってがんばろうと思います。今回、輪島の話を聞いていると、あっちはもっと酷いらしいですが、“頑張る”と言ってる人たちがいます。私にもそんな気持ちの強さがあればいいなと思います。断水の中でこのような支援はとてもありがたいし、応援されている気持ちになります。」と話をしてくださいました。

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 設置後は、気温が氷点下まで下がる寒冷地での給水ということもあり、初期トラブルの対応や、できるだけ不自由なく使っていただけるよう職員が一週間のフォローアップを続けました。限られた配慮にはなりますが、できるだけ導線上に段差をなくして寒くないようにし、シャンプーの銘柄を複数にし、洗剤や柔軟剤は香りの特徴がないものを選んでお届けしました。避難されていた大工さんが仮設の小屋を作ってシャワー室を作ってくれたのですが、人の生きる力、助け合う力を実感しました。




寒さ除けのために大工さんが作ってくれたシャワー室の囲い

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 避難されていた方たちからは、「これまで当たり前だったこと一つ一つが奇跡のように感じられる。」とか「手洗いしていましたが、フリースなどは水分を多く吸い込むのでペットボトルの水が何本も必要になり洗うのが難しかった。洗濯機だと簡単に洗えるのでとてもありがたい。」といったお声をいただきました。




「井戸水で手洗いしていたけど脱水が難しかったので助かります」と語ってくださった方

 また、「発災直後に避難してきた時、土足で母校に踏み入らなくてはならなかったことが本当に辛く心が痛みました。若い自分が塞ぎ込んでいると周りも暗くなるので、積極的に避難所の運営のお手伝いをしています。130人ほど(日赤職員がお話を伺った1月中旬時点)の避難者の方の顔は全てわかるので、無関係な方が入ってくるとすぐにわかります。セキュリティー面からもそのようなときは声がけするようにしています。」と語る青年や、「何事も行政任せにしちゃダメ。自分たちでできそうなことは自分たちでやらなきゃ。」という町会長にもお会いでき、地域で暮らしていく術を教えていただきました。

七尾市内の小学校は1月31日に再開して、徐々に避難されている人たちも減ってきているそうですが、この給水衛生支援が本格的な送水再開まで、少しでもお役に立てれば幸いです。

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