中東事業報告会を開催しました(映像公開中)

9月10日、五十嵐真希・日赤中東地域首席代表によるオンライン報告会を開催致しました。当日は180人以上の方にオンラインで視聴して頂き、中東の新型コロナウイルス感染状況、レバノンの首都ベイルートで発生した大規模爆発災害、そして中東各地の赤十字・赤新月社のボランティアたちの活動について報告しました。

このオンライン報告会の様子は、以下のリンクから視聴することができます(画像をクリック)。

2020年9月10日 【日本赤十字社・中東事業報告会】

「中東・レバノンの危機の中での赤十字」

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https://www.youtube.com/watch?v=DAfrBTqU7c0&feature=youtu.be

五十嵐・日赤中東地域首席代表の報告(要約)

私の赤十字への関わりは、アメリカ赤十字社でのインターンから始まり、東南アジアや東アフリカでの現場での活動を経て、2015年に中東・レバノンで日赤中東地域代表事務所の立上げ、国際赤十字・赤新月社連盟の中東・北アフリカ(MENA)事務所の緊急保健コーディネーターを兼務しながら、現在まで日赤中東地域代表事務所で中東地域の保健・医療支援を行っています。

中東地域は、国や地域によって様々な紛争や自然災害、占領や難民流出、社会不安や経済破綻等の問題に直面してきています。持続可能な開発目標(SDGs)の2019年報告書においても、中東の多くの国々は、飢餓の撲滅や健康・福祉の普及、平和の実現といった多くの項目で未達成の状況となっています。

シリアでは、紛争勃発から10年が経つ中、未だ国内で500万人以上が人道支援を必要としており、子供たちの30%は予防接種が受けられない状況にあります。レバノンでは、95万人のシリア難民が十分な支援を受けられず、厳しい気候の中でテント住まいといった非公認居住区で生活しています。

シリア紛争により人口当たりの難民受け入れ数が世界で最も多いレバノンでは、2019年10月からの反政府抗議デモにより社会不安が高まり、続いて通貨暴落や過度な物価上昇という経済破綻に至り、貧困に陥る人たちが増大しています。

中東地域の新型コロナウイルス感染状況

そのような中東でも、新型コロナウイルス感染症は拡大しています。MENA地域での新型コロナウイルス感染者は世界全体の8%である200万人といわれており、死亡者数は世界全体の6%を占めています。

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©日本赤十字社

中東地域で最初の感染者が発見されたイランでは、現在でも世界で感染者数は第12位に位置し、シリアでは一日の感染者数が100例以下とされていますが、検査や報告の体制に課題を抱えています。イエメンでの致命率は29%と非常に高く、レバノンでは8月4日のベイルートの爆発以降急激な感染拡大で増加率220%となり、これまで感染が抑えられていたパレスチナ・ガザ地区でも突然の感染拡大が起こっています。

中東での感染拡大に対して、各国の赤十字・赤新月社はボランティアが主体となって、感染予防のための啓発活動や、社会的に脆弱な人びとへの食糧支援や一般診療のための家庭訪問の活動を行っています。レバノン赤十字社は、感染者や感染の疑いのある人の病院への搬送サービスを24時間体制で担ってきました。

新型コロナウイルス対応の現場では、防護服の不足や日々変化する情報のアップデート、医療機関のひっ迫などの課題を抱えながら、厳しい対応を迫られています。

ベイルートでの大規模爆発災害

新型コロナウイルス感染症影響下で発生したのが、ベイルートでの大規模爆発でした。壊滅状況は市内広範に及び、爆心地から1.5㎞圏内にあった私の住居も大きな被害を受けました。この爆発により犠牲者は190人、負傷者は6,000人以上、家を失った人びとは30万人に上ります。市内にある6つの病院が半壊または重大な損壊を受け、医療体制にも大きな損失が出ました。

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五十嵐代表の自宅©日本赤十字社

歴史ある美しい街並みは一変し、「街も、家も、人の命も、一瞬にして奪われてしまった」、「長期間の新型コロナ対応で疲弊しきっていた時の惨事だった」といった言葉が友人たちから次々に伝えられました。

爆発後の新型コロナウイルス感染は、救助活動や緊急治療、避難生活といった感染対策が難しい状況下で広がったことも考えられます。それでも救急隊(ボランティア)たちは負傷者の搬送や応急処置を最大限に行ってきました。

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©Nabil Mounzer/EPA

レバノンにあるパレスチナ赤新月社の病院では、2018年から日赤の医療チームが技術支援を行ってきました。パレスチナ赤のスタッフからは、日赤の講習がこの惨事に大きく役に立ったとの声も届けられました。また救助活動以外にレバノン赤は、被害に遭った家々を訪問し、被害状況のアセスメントを行ったり、食糧や物資配付、輸血用血液の確保や移動診療車による一般診療の実施等をおこなっています。救急搬送を担うのはほぼ全てがボランティアであり、レバノン赤のボランティアの結束力が示された出来事でもありました。

コロナ禍の中で、救うことを託された私たちは、「救うことを、つづける」ことが重要になってきます。ボランティアや医療従事者へエールを送り続けること、日赤の特性である医療保健分野の支援を継続していくこと、支援活動の可能性を模索していくこと、現地の人たちの希望と尊厳を失わせないように考え活動し続けること、そのためのつながりを維持していくことをこれからも行っていきます。

日本赤十字社は、ひとを救いたいという皆さんの思いを結集し、人びとのいのちと健康、尊厳を守っていきます。

代表的な質問と回答

・ 新型コロナウイルス感染症が中東で拡大した時の人びとの受け止め方は?

まず人びとの間にウイルスに対する恐怖心が蔓延しました。その中で差別も起こるようなこともありました。その後には、ロックダウン期間が長くなる中で、忍耐を試されるような状況もありました。

・ 現地のボランティアの人たちの心構えや思いとは?

赤十字ボランティアになるということは、専門知識も高く、人びとの信頼を集める活動を担うということであり、ボランティアたちは人びとを救うことに誇りと使命感を強く持っています。

・ 日本にいる私たちが現地の被害に対してできることは?

日赤はこれまで、様々な民間企業との連携もこれまで行ってきましたが、まず現地の情報を正確に把握することが重要です。こちらが与えたいものでなく、現地のニーズに応えることが大切です。赤十字という組織を活用して、皆さんができる可能性を考えるというのもあるのではないでしょうか。モノやお金だけでなく、コロナ禍というこれからの時代は、情報や技術など様々なアイディアを持ち寄ることが重要になってきます。

・ 世界の関心が下火になるシリア難民支援の今後は?

シリア難民が生活するのは、厳しい環境のところばかりです。夏は暑く、冬は寒い、雪が積もるところでも、人びとは毛布やストーブもなく、トタン一枚、ござ一枚の中で身を寄せ合って寝泊まりしている家族もいます。そのような人びとを死なせないための、取り残さないための支援が、現地ではまだまだ必要です。このような支援は、私たち一人ひとりが可能な行動を継続させていくことによって、支えられていることをお伝えしたいです。

日赤中東人道危機救援プログラムの事業の詳細についてはこちら

【中東人道危機救援金】

レバノンなどをはじめとする中東地域での紛争や災害で被害を受けた人びとに対し、日本赤十字社では「中東人道危機救援金」を受け付けています。皆さまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。