製剤への放射線照射
-移植片対宿主病(Graft Versus Host Disease;GVHD)の予防のために-

輸血後の致死的な副作用であるGVHD(移植片対宿主病)を予防する安全対策として、新鮮凍結血漿を除く輸血用血液製剤に15以上50Gyを越えない範囲の放射線を照射した製剤を製造し供給しています。

輸血後GVHDと放射線照射

輸血用血液製剤中のリンパ球が輸血を受けた患者を非自己と認識し、患者の体内で増殖して患者内を攻撃することがあり、これに伴って生じる病態をPT‐GVHD(Post‐transfusion graft versus host disease)といいます。

日本では、平成8年4月を初めに2回、厚生省(現在の厚生労働省)より「輸血後GVHDに対する緊急安全性情報」が出され、日本赤十字社の血液センターからも医療機関にむけ注意喚起のため情報を提供しています。

輸血を受ける患者をGVHDから守るための安全対策として、日本赤十字社ではリンパ球を不活化するための血液照射装置の整備をすすめ「放射線照射輸血用血液」の製造承認を取得しました。
平成10年6月19日から放射線照射済みの輸血用血液製剤が医療機関に供給され、現在日本ではGVHDの確定症例の報告はありません。

輸血用血液製剤への放射線照射

放射線照射装置

血液センターにおける放射線照射の方法は、血液製剤専用のエックス線照射装置を用いて、15Gy以上50Gyを超えない範囲で放射線を照射しています。
照射対象製剤は、全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤です。新鮮凍結血漿は、製造工程において凍結する際に、リンパ球が壊れてしまうため、照射していません。


放射線を照射していない輸血用血液製剤(新鮮凍結血漿を除く)は、輸血後GVHD防止のために、医療機関で輸血前に予め15以上50Gyを越えない範囲の放射線照射を実施してください。