つながりを永遠に ~日本赤十字社が結んだ絆~

2021年3月11日、東日本大震災から10年を迎えました。被災地ではおよそ半数の被災者が復興を実感しておらず、さらに7割の被災者が「震災が風化している」と感じています(*) 。

そこで、日本赤十字社宮城県支部は、被災地にある赤十字として、被災者の想いに寄り添い、「震災は絶対に風化させない」との決意のもと、10年の節目をきっかけに、支部・施設、職員・ボランティアが一体となった復興支援事業(プロジェクト)を実施しています。この「東日本大震災から10年プロジェクト」では、"つながり"、"絆"をテーマに、東日本大震災における救護活動や復興支援事業で関わった方々の近況や思い、被災された方の思いなどをビデオメッセージにまとめて、広く国内外に発信しました。(日赤宮城県支部のYouTubeチャンネルよりご覧いただくことができます。)

さらに、震災後に世界中から寄せられた支援への感謝を伝えるために、海外向けの企画も開催しました。今回はその中から、宮城県のユースが中心となり、海外の姉妹赤十字社のユースメンバーを招待して開催された「オンライン語り部LIVE」についてご紹介します。

(*) NHK「東日本大震災9年被災者アンケート」より

東日本大震災から10年 - ユース世代への経験の継承

今回の企画は、「震災当時に被災された方々が経験した、辛く悲しい思いを、もう誰ひとりとして経験しないですむように、伝承活動を継続し、生き抜く力を育む活動によって次世代へ繋げていきたい」ーそんな思いで活動されている公益社団法人3.11みらいサポート(宮城県石巻市)のご協力を得て実施されました。

日本赤十字社_意見を述べるマレーシアからの参加者

意見を述べるマレーシアからの参加者

東日本大震災から10年の節目を目前に控えた3月6日(土)、アジアの10の国と地域から25人の海外赤十字ユースボランティア(15~29歳の"Red Cross Youth"メンバー、以下海外メンバー)がオンライン参加し、イベントの司会進行やファシリテーターは宮城県青年赤十字奉仕団員(以下、日本メンバー)5人が務めました。

参加者のほとんどが10代から20代で、震災当時はまだ子どもだった世代。まず初めに、当時のことや災害に対するイメージなどを共有しました。

次に、日本メンバーが、東日本大震災の概要や当時の赤十字ボランティアの活動を紹介してから、全員で語り部のお話に耳を傾けました。

お話をしてくれたのは、高橋匡美(たかはし きょうみ)さん。当時の写真を使いながら、震災で両親を亡くしたこと、そしてその第一発見者が自分だったこと、心に傷を負い自宅に引き籠る日々が続いたこと、現在は「今」を生きる大切さを語り部として伝えていることを、約40分間にわたって熱く英語で語り掛けました。

今を生きる大切さを伝え続ける髙橋さん

語り部の高橋さんは、「今」を生きる大切さを伝え続けている

参加者からは、「どのように悲しみを乗り越えてきたのか」、「防災をどのように教育の中で取り入れているのか」など多くの質問があり、「自身の経験を話し、命の大切さを伝えることで乗り越えてきている」などと、一つひとつ丁寧に答えてくれました。参加者の一人は「このお話を聞けて良かった。とても辛い経験を共有してくださった。このことはきっと忘れません。」と感想を述べました。

「忘れない」から"アクション"へ

語り部のお話を聞いた後は2つのグループに分かれ、高橋さんのお話の感想を交えながら、自分の国で災害が起きたときの状況や防災活動について話し合いました。ひとくちに「災害」といっても国ごとにイメージするものは異なり、地震や津波だけに限りません。雪害などの自然災害だけでも幅広く、さらにテロや暴動などに言及した海外メンバーもおり、日本メンバーはとても驚いていました。海外メンバーからは、「東日本大震災のような未曾有の大災害から命を守るために私たちユースができることについてもっと考えていきたい」、「赤十字ボランティアの災害対応や防災・減災での活躍について事例を共有し合いたい」といった声が上がりました。また、世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスに対してのそれぞれの取り組みも紹介され、各社のユースボランティアが共通して取り組んでいるテーマであることが認識されました。

宮城青奉ファシリテーター

ファシリテーターを務めた日本メンバーたち

宮城青奉ファシリテーター2

あっという間の3時間が過ぎ、参加者はお互い名残惜しそうに、「今回を交流のきっかけにしよう」と確認しあい、イベントは終了しました。「語り部さんのお話に対する感想・感情は、私たちも海外メンバーも同じだと感じた。災害に対する意識や取り組みの違いはとても興味深かった。オンラインでの国際交流もファシリテーターも初めてだったので、とても緊張したけれど、交流はとても楽しく、もっと話したかった。今後は別のテーマでも交流したい!」と、日本メンバーは熱い想いを語ってくれました。本イベントから大きな刺激を受け、震災から10年を機に、日本とアジア各国のユースの絆がさらに強くなり、共に災害に備え、立ち向かう気持ちが高まりました。

災害時、私たちを一番守るのは、今の私たちの行動です。ひとりでも多くのいのちを救うために、日本赤十字社は、皆様と共に、災害に備えるための活動「ACTION!防災・減災」を続けていきます。

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