南アジア洪水災害に見る「ウィズコロナ」の支援

 2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、世界中が未曾有の危機に直面しています。その中でも、洪水や干ばつ、地震や台風といった自然災害は待ったなしで発生し、各国の赤十字・赤新月社は災害救護団体として被災した人々の救援活動を行っています。

 毎年5月頃から9月頃にかけてモンスーン(季節風)が発生し、バングラデシュ、インド、ネパールなど南アジアや東アジアの国々に雨をもたらしますが、近年のモンスーンは気候変動の影響も含め、しばしば記録的な大雨や暴風を伴い、洪水や土砂崩れなどの災害につながっています。現在、南アジアでは、COVID-19感染者数が220万人を超え、その中でモンスーンの大雨による大規模な洪水が発生しました。現地では、現在も救援活動が展開されています。

1,750万人もの被災者を生んだ2020年の南アジア洪水災害

 2020年6月からの洪水により、南アジアのインド、ネパール、バングラデシュでは東京都の総人口を超える約1,750万人が被災し、630人以上が亡くなりました。バングラデシュでは全国の半分の地域がこの洪水で浸水被害を受けており、インド北部のアッサム・ビハール地方だけでも1,200万人が被災するという、ここ数年で最大規模の洪水でした。

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アッサム地方、道路が浸水している中で救援物資を受け取る地元住民©インド赤十字社

 モンスーンの時期は、洪水に加え、マラリアやデング熱、コレラなどの蚊や水を媒介とする感染症が流行する傾向があります。昨年はバングラデシュでコレラが流行し、10万人以上が罹患しました。例年、これらの疾病の予防のため、赤十字はコミュニティにおいて蚊の繁殖しやすい水たまりをつくる原因となる古タイヤやくぼみなどを除去したり、マラリアやコレラについての知識を人々に直接伝えたりする活動を行ってきましたが、今年はCOVID-19の影響で満足に実施できていません。

 現在、南アジア各国の医療施設の病床の多くがCOVID-19対応で使用されていることもあり、新たな感染症の発生は医療のひっ迫にもつながります。赤十字は、洪水被災者への衛生物資や食料の配付などの救援活動に加え、蚊帳の配付やマラリアやコレラ等についてのリスクを伝達する活動を行い、COVID-19に加え蚊や水を媒介とする病気の予防のために奮闘しています。

その時バングラデシュでは?日赤が支援した給水キットが活躍

 今回の洪水で特に被害の大きかったバングラデシュでも、水や蚊を媒介とする感染症の流行を想定に入れながら救援活動が続けられています。

 その中には、日本赤十字社(以下、日赤)の支援事業「給水・衛生災害対応キット整備事業」による活動も含まれます。この事業では、災害時すぐに被災地に安全な水を供給したり、衛生的な環境を整えたりするための資機材の整備と、その資機材を実際に運用するための現地スタッフやボランティアの人材育成が並行して展開されています。

 今回、この事業で研修を受けたバングラデシュ赤新月社のボランティアが、6地域で給水キットを組み立て、被災した12,000世帯に12万リットル以上もの安全な水を提供しました。COVID-19の影響で外部からの支援が難しい中、地元の赤新月ボランティアたちによって即座に現地に必要な支援を展開することができたのです。(写真左:給水キットを組み立てるボランティア 写真右:浄水された水を各家庭に配付するボランティア いずれも©バングラデシュ赤新月社)

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「現地の人が即座に対応できる」ための支援

 COVID-19の影響を受けて、世界全体で人道支援の形が見直されています。人の移動を介した支援や、外部からの支援は国際的にも厳しいというのが現状です。これまでも、災害における「自助」「共助」の必要性は問われてきたところでありますが、このような国際的にも国内的にも人の移動が制限される中で、個人やコミュニティがどのように自分自身の身を守ることができるかは、ますます重要になってきます。

 日赤は2010年度から、アジア大洋州地域の各国赤十字・赤新月社を対象に上記の「給水・衛生災害対応キット整備事業」を支援していますが、この事業の特徴は予め各国に資機材が整備されており、運用方法に明るい赤十字スタッフやボランティアがいることで、災害が起こった時には即座に資機材を活用し、被災者に必要不可欠な安全な飲み水や生活用水の確保と清潔な簡易トイレの設置など衛生環境の整備を行えるところにあります。今回のバングラデシュだけではなく、これまでにもラオスやカンボジアなどで、災害時に同キットを使った支援活動が展開された実績もあります。

 COVID-19だけはなく、自然災害への対応、そして災害がもたらす新たな感染症の予防のために赤十字は活動しますが、そのような活動は、遠くから助けに来るのをただ待つのではなく、即座に現場で展開できるように地元に備えておくことが以前にもまして重要となってきました。緊急時に「自助」「共助」の力を発揮できるための支援も、「ウィズコロナ」の時代に適した、人道援助のあるべき形の一つではないでしょうか。

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中東・レバノンの危機の中での赤十字

紛争、デモ、新型コロナ感染、爆発事故、日赤中東代表による現地報告~

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