衝突が続く南スーダンの地で~奮闘する日赤職員~

 武力衝突など不安定な情勢が続く南スーダン。赤十字国際委員会(以下、ICRC)は、紛争や武力衝突の負傷者や多数の難民を支援する活動を実施しています。事業の詳細はこちらをご覧ください。

 日本赤十字社(以下、日赤)は、ICRCを通じて資金援助や人的貢献といった支援活動を長年続けています。現在も、南スーダンの首都ジュバ、ガニエル、アコボに日赤から3名の医師、看護師を派遣しています。日本とは大きく異なる環境の中で、現地の人々の命を救うための活動の様子をお伝えします。

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緑と赤とスカイブルー

 首都ジュバに派遣されている朝倉裕貴看護師(武蔵野赤十字病院)は、今回が3度目の南スーダン派遣。過去には武力衝突に巻き込まれそうになり支援病院からの撤退を余儀なくされ、任務を中断せざる得ない状況も経験してきました。朝倉看護師の過去の記事はこちらをご覧ください。
「今回の派遣では今のところ大きな事件もなく活動を継続できております。前回同様、巡回型外科診療チーム改め、バックアップ外科チームの手術室看護師として、南スーダン国内3ヶ所にあるICRCの支援病院で、地元スタッフの教育と指導、業務改善などを通じ現場をサポートしています。
 それ以外に首都ジュバでは、医療施設がない地方で発生した傷病者を、ICRCのサポートする適切な治療を受けられる病院へ搬送する業務があり、現在、私がその役割の中心を担っています。8-9月の雨季にもかかわらず、週の半分を小型軽飛行機やヘリコプターに乗り込み、アフリカの大地を飛び回っています。

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(写真右)負傷した子供の手術を行う
朝倉看護師 ©ICRC

上空からみた南スーダンは自然豊かで緑がとても美しいのに、実際は血で赤く染まっている。その現実が残念でなりません。武力衝突の根底には食料危機があると考えられます。今回目立ったのは牛や山羊などの家畜を巡る衝突。これらは大切な財産であり、その財産を守るため人々は争うのです。またこれに対する報復が発生するので傷病者は倍増しています。終わりの見えないこの国が、いつか平和になることを願って、今日もまたスカイブルーの空へ飛び出していきます」。

子どもたちの命を守るために

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低体温で入院してきた生後1か月の子供を診ている
津田看護師 ©ICRC

 津田香都看護師(姫路赤十字病院)は、今回が初めての南スーダン派遣となります。
 「私は今、南スーダンの東部アコボでICRCの小児科看護師として働いています。アコボは南スーダンとエチオピアの国境近くにあり、首都のジュバからヘリコプターで約2時間の場所に位置しています。私たちが支援しているアコボ郡病院は、一般病棟、小児科病棟、産科病棟、外来、手術室、救急から構成されており、小児科の病床数は26床です。そのうち13床が重度低栄養を判定され、さらに何らかの疾患を併発しているケース、残りの13床は重度低栄養を判定されていない一般小児科に大きく分けられています。アコボ郡病院の小児科は戦傷外科のケースはほぼありません。多くがマラリアや呼吸器感染症、重度低栄養、皮膚疾患などです。マラリアでは全ての子どもが入院するわけではないのですが、嘔吐を繰り返すため薬を内服できない子どもたち、痙攣や呼吸器疾患を併発する子どもたち、さらには貧血があり輸血が必要な子どもたちが入院してきます。他には下痢、嘔吐による脱水を起こしている子どもたちや、今は雨季のため低体重の新生児は低体温からのショックを起こす小さな赤ちゃんもいます。

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アコボの看護師へ研修を実施 ©ICRC

アコボ郡病院は日本の病院のように薬や医療設備は整っていません。もっと早く来てくれれば症状が悪化しなかったのに、と思っても病院までは徒歩以外の交通手段はなく、また雨が降ると道路状態が悪く傘もレインコートもなく裸足で数時間かけては来られません。さらには雨のためヘリや飛行機が着陸できないため首都のジュバから届くはずの薬が届かない、ということも稀ではありません。また地域住民の医療に対する認識も日本とは大きく異なります。例えば病院で治療を受ければすぐに回復すると思っていたり、輸血をすれば助かる命でも家族の同意が得られなかったり、などといったこともあります。そのような中でもICRCスタッフと地元のスタッフは協力し合いアコボ周辺地域の人びとの健康を守るため日々奮闘しています」。

南スーダンの一地方にて、皆で助け合いながら

 高尾亮医師(熊本赤十字病院)は、今回が2回目の南スーダンになります。9月の下旬から派遣されたばかりです。前回はジュバを拠点に、ガニエルやアコボなどを定期的に巡回していましたが、今回は主にガニエルで勤務する行う予定です。
 現在、イタリア人麻酔科医から引き継ぎを受けている高尾医師は、「以前ここを訪れたのは1年以上前で、その時は短期間の滞在でした。それにもかかわらず私のことを覚えていてくれた地元スタッフも何人かいて、嬉しかったです。テントだった病棟はプレハブの建物に変わり、提供される医療も少しずつ良くなっているようです。小さな子供を含めた患者さんの笑顔にこちらが癒されることも少なくありません。これから雨季が終わり乾季になると、武力衝突が増え、更に多くの人々が犠牲になることが考えられます。前任の麻酔科医が帰国した後、麻酔科医は私一人になりますが、いろいろな国から来ているメンバーや地元スタッフと協力して、負傷した人々の回復に尽力したいと思います」と意気込みを語りました。

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高尾医師の前任のイタリア人医師と ©ICRC

日本から11,000km離れている南スーダン。独立後も衝突が続くこの地で、目の前で苦しんでいる人々の命を救うために奮闘している日赤職員がいます。

来月12月は海外たすけあい月間。ぜひ、遠く離れた南スーダンに、思いを馳せていただければ幸いです。南スーダン事業をはじめとする赤十字事業へのご支援、ご協力、どうぞよろしくお願いいたします。

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